表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三位一体!? ~複垢プレイヤーの異世界召喚無双記~  作者: Sin Guilty
第五章 堕神降臨編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/117

第48話 大海嘯

 暁闇をついて「天空城」(ユビエ・ウィスピール)を北方ザナルガリア方面へ移動を開始させる。


 同時に北方ザナルガリアと接するフィルリア連邦、バストニア共和国に展開させていた「浮島:壱」と「浮島:参」も、それぞれの国の正規軍全軍を搭載して国境へ移動開始。

 国境線までに存在する大中規模城塞都市に一定数ずつ配置し、最前線がもらした魔物(モンスター)が街を襲うことに対応してもらう。

 大中規模城塞都市近辺の村落の住民は、最寄りの城塞都市へ収容する。

 「浮島」へ収容できれば一番安全だが、残念ながら全住民の収容は不可能だ。

 正規軍に踏ん張ってもらうしかない。


 最前線となる北方ザナルガリアとはフィルリア連邦、バストニア共和国が間に挟まり、直接接することのないアレスディア宋国と商業都市サグィンに展開していた「浮島:弐」「浮島:四」は、各国領内に存在する魔物(モンスター)の領域からも侵攻される可能性に備えて、待機。

 その「浮島」二島にウィンダリア皇国、アレスディア宋国、商業都市サグィンの正規軍が集結し、事あればそこへ急行できる態勢を維持。


 北方ザナルガリアに現れた、地面を埋め尽くす魔物(モンスター)の大軍には「天空城」(ユビエ・ウィスピール)以下、「浮島:壱」「参」「伍」で対応することになる。

 

 数は物凄い。


 なまじ「天空城」(ユビエ・ウィスピール)の索敵機能による、広範囲にわたる鮮明な映像があるせいで、この情報に触れ得る立場の者の方が絶望感は深いかもしれない。

 だがこれは、「天空城」の拡張された攻撃システムでなんとでもなる。

 おそらくこの後、第二波として出現する大型魔物(モンスター)クラスも、俺と(ヨル)、クレアがいれば対応可能だ。


 問題は前線から取りこぼした魔物(モンスター)と、ザナルガリアからの侵攻に連動して各国の魔物(モンスター)領域も、各国へ侵攻を開始するであろう魔物(モンスター)への対処だ。


 前者は現在前線へ向けて移動している「浮島」から要所城塞都市に展開したフィルリア連邦、バストニア共和国両国の正規軍に任せるしかない。

 後者は残してきた「浮島」二つと、ヨーコさん、「天を喰らう鳳」であるフィオナ、現時点では他国の正規軍からは突出した戦闘力をもつウィンダリア皇国騎士団と、新生「冒険者ギルド」、アレスディア宋国の神聖騎士団と商業都市サグィンの戦力で対応してもらう。


 双方とも負けることはあり得ないが、犠牲がなしというわけにもいかないだろう。


 ないとは思うが、各地にある迷宮の(ボス)(クラス)魔物(モンスター)が同時侵攻に連動すれば、対応できる戦力は俺達以外いない。

 ヨーコさんやフィオナでは、負けることはないものの勝ちきることも難しいだろう。

 なによりそのクラスが出てくると、いかに急速強化したとはいえ軍や冒険者ギルドに発生する被害が桁違いなものになるのは確実だ。


 人類側の最強戦力である俺、夜、クレアの三人が如何にフリーで動けるかによって、味方の被害は全く変わってくるはずだ。

 

「つまり鎧袖一触で敵を殲滅する方向ですね?」


「出し惜しみなしで全力全開。望むところですわ」


 まあそういうことだ。


 「天空城」(ユビエ・ウィスピール)を空中要塞として使用するために、必要な最低限の運用スタッフを「世界会議」から提供してもらっている。

 主に索敵情報の把握と、それを俺たちに伝えるためにある程度の頭数は必要なのだ。

 情報を取得するための「情報窓」はそれこそ無数に表示できるが、三人だけでは処理しきれない。

 不公平が出ないように各国の出身者――各々相当優秀な人材のはずだ――が混在している。


 彼らの目には絶望までは届かないものの、明らかに怯えの色がある。

 自分たちは「天空城」に居て無事かもしれないが、家族や知り合いは地上に居るのだ。

 それが無数の魔物(モンスター)に蹂躙される事を思えば、平常ではいられまい。 


 無理もないと思う、俺だって戦う力を持たない身でこんな映像見せられたら心が折れる。

 大海嘯の如く押し寄せる魔物(モンスター)の大軍は、この「天空城」(ユビエ・ウィスピール)の索敵機能をもってしても正確な数を把握しきれないほどなのだ。


 それでもまだ諦観に至らないのは、声の聞こえる距離にいる俺達と、この状況を打開するために空中を移動する「天空城」(ユビエ・ウィスピール)の威容があるからこそだろう。

  

「そろそろ射程内に捉えられそう?」


「この「天空城」はもうすぐですね。ただ各城塞都市に兵達を降ろしながら進んでいる「浮島:壱」「浮島:参」はまだもうちょっとかかります。「浮島:伍」の射程内にはすでに入っていますけど……」


 まあそんなところか。


「揃ってから一斉殲滅しようと思ってたけど、引っ張りすぎると情報知ってる人たちの不安が強くなりそうだし、とりあえず「浮島:伍」から攻撃開始しようか」


「はい」


 夜が答えると同時に、「浮島:伍」からの映像が大きく表示されている主映像窓に表示される。

 ちょうど真下を過ぎて、こちら側へ雪崩れ込んできている状況だな。

 飛行系の魔物(モンスター)が居ないせいか、「浮島」の存在は無視しているようだ。

 まああのレベルの魔物(モンスター)が群がったところで、この十日でかなり強化された「天空城」及び「浮島」を落とすことは不可能だろうが。

 

 取りこぼした魔物(モンスター)から城塞都市を守る兵たちの士気にも関わるし、ここらで反撃開始しておいたほうが良い。

 「浮島:伍」の魔力が空になるまで攻撃して、その撃ち洩らしは「天空城」と「浮島:壱」「浮島:参」の射程に入り次第撃ち払う。

 「天空城」および「浮島」三つ分の攻撃系魔力が全部ぶっこんでも、少し残るかなあの数だと。

 まあそこは俺、夜、クレアで始末すればいい。


 最終手段となれば「浮島」そのものを敵魔物(モンスター)集団のど真ん中に落として自爆させるという荒業もある。


 できれば使いたくはないが、どうも浮島の数は現状では5つが上限らしい。

 再湧出(リポップ)した巨大魔獣「クリム」を五回くらい倒して、うち三回「制御ユニット:群島5(未設定)」をドロップしている。


 ははは、「天空城」の浮島は20まであるぞ!


 冗談はさておき、それもあって現在の浮島は、未設定だったものをすべて「攻撃型」にしたものだ。

 最悪使い切っても「クリム」はまた再湧出(リポップ)するし、また狩ればいい。

 しかし有事のたびにコロニー落とししていては「浮島」に重要施設をつくれないし、今回だって魔力充填用の魔石が無駄になる。

 それでもまあ、魔物(モンスター)を大量に逃して兵や民衆に被害が出るのであれば実行することに躊躇いはない。

 地形変わる許可は「世界会議」からもらっているしな。


 だがまずは正攻法で行ってみよう。


「「浮島:伍」の攻撃可能範囲内にいる全魔物(モンスター)に対して攻撃開始。攻撃系の魔力が枯渇するまで斉射続行」


「射程内の全魔物(モンスター)に対して、魔力枯渇までの攻撃を開始します」


 夜が復唱すると同時に、「天空城」が捉えている「浮島:伍」の映像に光が宿る。

 映像窓に映る「浮島:伍」が見えなくなるくらいまで強くなった光が、次の瞬間、主映像窓に映し出されている無数の魔物(モンスター)の群れを薙ぎ払う。


 一拍遅れて光線が薙いだ部分を中心に爆発が連鎖する。


 おお、まさに〇神兵。

 特に腐ってはいない。


 その証拠に今の光線が連続する。

 繰り返される爆発、その度に無数の魔物(モンスター)の大軍がごっそりと削り取られる。

 思ったよりも広範囲を削るな。

 

「……すごい」


「これなら何とかなるかも……」


 情報観測のスタッフたちも希望を持ってくれたみたいだ。

 今の映像はこの作戦に参加している全員に「映像窓」で提供されている。

 これで士気を保ってくれるだろう。

 

 どれだけ派手に見えても、これだけの数が居れば相当数は撃ち漏らす。

 それに対応可能なのは、この十日で強化された各国の正規軍と「冒険者ギルド」の「冒険者」達だけだ。

 士気を維持してもらわなければ、俺達が後顧の憂いなく闘うことができない。


「でもこれ、もし「天空城」無かったらどうなってたんだよ……」


「……俺らの国、これに勝てるつもりで喧嘩売ったんだぜ。何で無事に済んでんだ」


「シン様の機嫌損ねたら、国なんて消し飛ぶんじゃないか……」


 あ、やばい方向に感想が向かってる気がする。

 いややばくはないのか。

 こういう認識も持ってもらっておく必要もあるのかもしれない。


 俺がそうやって、畏怖の対象にもなるとするならば……


「無用な心配をしている場合じゃないですよ。大丈夫、シン君は私たちの味方です」


我が主(マイ・マスター)は「仲間」を裏切りませんわ。私が保証します」


 ですよね、安心と保障、信頼を得るのは美女の方がいいですよね、解ります。

 割と単純にみんな一様にほっとした表情をしている。

 あと鼻の下伸ばすな、一応戦時状況下だぞ今。

 ……人の事は言えないか。


 まあ嘘は言ってない。


 俺は()()()の味方ですよ、夜さん。

 でもその()()()って、彼らが思っているそれとちょっと違うよね。


 俺は「仲間」は裏切らないですよ、クレアさん。

 でも「仲間」じゃなかったら君らの方が酷いよね、どっちかといえば。


 まあいい、これも役割分担だ。

 ヨーコさんあたりは「茶番ですね。見るに堪えません」とか言ってそうだが。


 自身の射程に捉えた魔物(モンスター)を悉く薙ぎ払った「浮島:伍」の魔力が尽きたようだ。

 俺が想定した以上の敵を削り、あれだけの大軍の中央はほとんどぽっかりと空いてしまっている。

 これなら、「天空城」と残り二つの「浮島」でほとんど削りきれそうだな。


「夜、俺の映像を全体配信」


「わかりました」


 夜の操作で、今まで魔物(モンスター)を焼き払い続ける「浮島:伍」が映っていた主映像窓に、俺の姿が大写しになる。


 黒をベースとした「有爵者大礼服」に身を包んだ俺は、結構様になっているんじゃないだろうか。

 元帥杖とか持ちたくなる。

 ただしアップは勘弁してください。

 

 ……勘弁してくださいって言ってるだろう(ヨル)


『大丈夫、かっこいいです』


『同意しますわ』


 そう言ってくれるのはうれしいけどね。

 いやそうじゃなくて。


 バカやってる場合じゃない、士気高揚は重要な仕事だ。


 正直俺がなんかしゃべるより、夜やクレアが「お願い頑張って!」とでもいう方が効果あるような気がしないでもないが。


「今作戦に参加してくれているみんな。今見た通り、魔物(モンスター)は数だけだ。この後「天空城」及び「浮島:壱」「浮島:参」の射程範囲に入り次第、同様の攻撃を敵魔物(モンスター)の群れに仕掛ける。ほぼすべてを殲滅できる見込みだが、間違いなく多少の撃ち洩らしは発生する。それらからみんなの国の人々を守るのは、みんなに任せるしかない」


 俺の言葉に、複数の副映像窓に映し出された各拠点の兵士たちが呼応して歓声を上げるのが映っている。

 みんな頑張ってくれ、ほんとに君らが最終防衛ラインだ。

 その代わりこれから俺らは最前線で敵を削れるだけ削る。

 

 後ろは任せた。


「「天空城」及び「浮島」の攻撃が終了と同時に、俺は夜、クレアとともに残敵掃討に入る。何かあれば「天空城」へ連絡を。後方の「浮島」は領内の魔物(モンスター)領域からの侵攻を引き続き警戒。もし発生した場合は任意で対処してくれ。その際は間違いなく「天空城」へ連絡を忘れずに。こっちが片付き次第、駆けつける。皆の勇戦を期待する。じゃあ行ってくる」


 ことさら気楽に言い放ち、全体配信を停止する。


 第二波がなければこれでほぼほぼ決着だが、そんなこともないだろう。


 「天空城」と「浮島」の攻撃用魔力が尽きれば、俺達最前線へ出て残敵掃討、二波が無いようなら「天空城」で待機して様子見、第二波もしくは後方での侵攻があればそちらへ転移して当たる。

 犠牲をゼロにはできまいが、できるだけ減らせるよう立ち回ろう。

 後方にはヨーコさんとフィオナもいてくれるしな。


「敵前線、「天空城」及び「浮島:壱」「浮島:参」の射程に入りました。魔力枯渇まで攻撃を開始します」


 夜の報告とともに、自分たちがいる「天空城」からも、地平線が揺れるように見える魔物(モンスター)の大軍に向かって光線の射撃が開始される。

 「天空城」だけが持つ攻撃手段も多々あり、それらも一斉に攻撃を開始する。

 おお、ホーミングレーザー!

 

 しかしこれ、映像窓の記録だけで十分「F.D.O」フィリウス・ディ・オンラインのオープニング映像越えてるなあ。

 こんなんでCMされたら、絶対プレイするわ俺。


 不謹慎なこと考えてる場合じゃなかった。

 

(ヨル)、クレア。こっちの攻撃終わったら出るぞ」


「はい」


「承知ですわ」

 

 さてやっとほぼほぼゲーム時代の状態に戻れた俺、夜、クレアだ。

 カンスト最古参組の実力を見せてやる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ