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ツイバミ  作者: CRUX
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能力とは②

「それではいくつかの問題、と言うよりも、現在の椎葉さんの疑問を解消していきましょうか」

 石渡は事務的な口調で、持って来たファイルを広げる。

「まずあなたが関龍会へ入会し、御子子として活動していただく限り、我々はあなたに対し手取りで月に一三〇万円の活動費をお渡しすることを約束します。

 また、執筆活動に関わる取材や代筆などの一切を引き受ける秘書を一名、そして日々の生活をサポートするヘルパー一名を、常にあなたにお付けしますが、もちろん彼らの費用も関龍会で持ちますのでご安心ください。

 この二人は非常に優秀ですし、立場上、椎葉さんの部下ということになりますが、どのように扱っていただいて構いません。

 秘書にはあなたが関龍会に対するネガティブな記事を書くことは事前に了承させますし、ヘルパーは幸せ組の実態も理解しております」


 ああ、もう何もかもが“ごくろうさん”な気持ちになるご提案だ。


「異存がなければ、超能力といったものを、どのようにして得られるのかについて説明したいと思うのですが?」

「そうだな。その辺はぜひ知りたいところだ」

「それでは……」


 うなずいて、石渡は説明を始める。


「まずは、ロボトミー手術ををご存知ですか?」

「ああ聞いたことがある。一九三〇年代にポルトガルのエガス・モニス教授が発明した、悪名高い手術法だ。鬱や神経症の治療法として選択されていて、確か前頭葉白質切断と呼ばれていた。当時はCTなんてものが無いから、医者の経験でテキトーに手探りで脳を切断していたらしいな。

 だからこの手術を受けた者は、性格ががらっと変化したり、無表情・無感情になったりして、結局、人道的な見地から七〇年代以降はされなくなったはずだ」


 以前に医療関係の取材で覚えたことを思い出しながら話すと、石渡は驚いた顔をしている。

 この手の頭の良さそうな奴は、見た目オレ程度のやつが知っているはずが無いなんて、勝手に見下している場合がある。この表情からして間違いなくそう思っていたんだ。


「よくご存知で。それなら話が早い。ですが、この手術は悪いことばかりではありませんでした。

 前頭葉を完全に切り落とす術式と、もう一つ、部分切開はしても前頭葉は残したままにしておく低侵襲性のロボトミーがあったのです。

 もちろん、どちらの術式にも予想外の副作用はありましたが、この後者の術式では“苦痛を取り除く”と言う点において驚くべき効果があったのです。

 ですが、ただ苦痛を取り除くのではなく、低確率ではありますが、術後に特殊な……いわゆる超能力と呼ばれるような能力を現す人たちがいたのです。

 しかしそれはごく稀な症例として、ほとんど無視できる程度の確率でした。ところが一九三四年から始まった第二次世界大戦が、六年後の一九四五年に集結した直後に、アメリカとソ連を中心にした東西冷戦の幕が上がります。

 真正面から砲弾を撃ち合うことができない当時、この超能力に目をつけた人物が東西双方にいたのです。

 そのような人々の手によって超能力実験のためのロボトミーは、七〇年代以降完全に学会の裏側でしか行なわれなくなりました」


 妙に嬉しそうな顔で説明する石渡の話は突拍子もないが、オレ自身が得た能力のことを考えると、リアリティがあるように思える。


「冷戦時代が終りを告げたあと、各国の資金援助は大幅に減額されたものの、数少ない学者たちに多くの資料が引き継がれましたが、当然、現在の正当な学会において超能力が存在するなどという主張や論文は認められません。ですが、事実は事実として存在します。

 医療機器が発達した現在、MRIを使いリアルタイムで脳の画像を確認しながら、脳の前頭葉のどの部分を切除すればいいかを“勘と経験”に頼らずに済むようになったのです。

 あとは研究費用が出るかどうかの問題ですが、組織的に出すところがあった場合、その研究は飛躍的に成長する可能性があると思いませんか?」



 あるね。間違いなく。どこからどんな風にその情報と資料、そして学者を見つけてきたのか分からないが、唸るほど金を出せるならその研究は急成長だ。

 しかもその人知を越えた能力で金を集めようと思えば、研究にかける投資費用なんて雀の涙ほどしか感じられないだろう。

 それが、関龍がこれほどまで急激に社会に浸透した秘密か。


「それでもサルースの儀式と称して手術を施してさえ、実際に能力を目覚めさせる確率は三〇%に満たないのです。

 だからこそ、“開いた”方には特権階級を差し上げているのです」


「いくつか質問したいんだが、まずは教えて欲しい。オレの能力の強さは、今“開いている”奴らと比較してどのくらいだ?」


 最初の質問が、まるで能力を得たことを喜び、しかもそれが他人と比べて強いか弱いかを気にしているかのような、まるっきり中二病を悪化させたものだったため、石渡は隠そうともせず小刻みにクククッと嘲笑して口を開く。


「あなたは……まん中くらいですか?」


 よし。こいつは嘘をついている。


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