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転生先は北の辺境でしたが精霊のおかげでけっこう快適です ~楽園目指して狩猟、開拓ときどきサウナ♨~  作者: ふーろう/風楼
第二章

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鱗の塊


 ユーラ達が吊るし縄……俗に言うくくり罠でロープを脚に引っ掛け、それを引っ張ってひっくり返すための罠を仕掛け、ジュド爺が投網と投げ縄などなどを用意し……鱗を攻撃しても無駄と見て、それ以外の部分を攻撃する準備が整った。


 最悪、それらが上手くいかなかったとしても崖に落とす手があるし……今回は多くの助っ人もいる。


 それは恵獣達だ。


 魔獣に驚かされてパニックになって逃げ回っていた恵獣達、俺達に出会わなければそのまま崖に落ちていた可能性もあり……その恩を返したいと考えているようで、更にあの鱗魔獣のことを許せないとも思っているらしい。


 という訳で投網や投げ縄が成功したなら恵獣達がその縄を咥えるなり、角に引っ掛けるなりして引っ張っての手伝いをしてくれることになった。


「ぐーぐぅ~」


 魔獣の下へと向かう道中、グラディスがそう声を上げると恵獣達が力強い声で応える。


「グー! グー!」


「グッグー!!」


「グゥーー!」


 オスだからなのか、その声はグラディスの声とはまた違った、重く響くものとなっている。


「グラディス様が恵獣様を率いてくださるのはとてもありがたい……が、恵獣様を守るのもまたシャミ・ノーマ族の務め、防具のない恵獣様がお怪我をしないよう、十分な配慮をするように。

 特にユーラ! サープ! 恵獣様に認められたいってんなら、気合い入れて活躍してみせろ!」


 そんな中、ジュド爺がそう声を上げて活を入れて……ユーラとサープはやる気十分、槍やロープを手に肩を怒らせズンズンと歩いていく。


 俺と魔獣が出会った方角へと進み、更にグラディス達に鼻での索敵をしてもらい……そうして先程とほぼ変わらない場所へと到着すると、牛歩……というかそれ以下のスピードで前進していたらしい鱗の塊が視界に入り込む。


「なんとまぁ……まさに鱗の塊、あの見た目では魔獣かどうか以前に生物であるかも怪しいが、確かに動いているし気配は魔獣そのものだな……」


 と、ジュド爺。


「お、おお……確かに鱗だな、あの鱗がそんなに硬ぇのか」


「あれで装備を……そんなに硬いなら加工が大変そうッスけど、貼り付けるだけでも効果はありそうッスね」


 ユーラとサープがそう続き……そして縄を構え始め、まずは投げ縄での捕獲が試みられる。


 ユーラ、サープ、ジュド爺の三人が順番に投げ……ジュド爺が成功。


 鱗の球体の根本にしっかりとロープの輪がかかり、ジュド爺がロープを引いた瞬間締め上がる。


 ユーラとサープは再度投げ……三度四度と投げ、ようやく輪がかかり締め上げられ……まずは人力でということで三人がかけたロープを引いてどうにか魔獣をひっくり返そうとする。


『ギァァァァァァァァァァ!!』


 すると魔獣がそんな声を上げて悶え始め、ユーラ達と体を引っ張り合っての抵抗を見せる。


 そんな様子を受けて俺はグラディスの背に乗ったまま投網を持って構える。


『ひっくり返したら手足に網を引っ掛けて動きを阻害、攻撃はそれからだねー』


 すると俺の頭の上に張り付いていたシェフィがそう言って作戦の再確認をしてくれて……俺はこくりと頷いてその時を待つ。


「ぐ……む……重いな……!」


「な、なんだこりゃぁまるで地面に張り付いてるみたいだぞ!?」


「地面っても雪の上のはずッス! 雪に張り付くなんてそんな真似出来るはずないから、ただ重いだけのはず……。

 って、鱗に擦れてロープがほつれてきてるッスよ!?」


 ジュド爺、ユーラ、サープの順にそんな声が上がり、視線をやってみるとその言葉の通り、鱗の塊に巻き付いたロープが硬い鱗と擦れて少しずつほつれ始めている。


 そうなることを予想していなかった訳ではないが、まさかこんなにも早くほつれるとは……と、俺が驚く中、ジュド爺は人力での攻防を諦め、短期決戦だと恵獣達にロープを預ける。


 何頭かはロープを咥え、何頭かは角に絡ませ、四本の足でしっかりと地面を踏みしめて踏ん張り……そうして恵獣達が一気に力を込めると、


『ギアァァァァァァァァ!!』


 との声と共に魔獣が持ち上がり始め……それを見て俺はグラディスに近付くように指示をだし、投網を構える。


 そうしてゆっくりと魔獣の体が持ち上がっていって……体が傾いたことで雪の中に埋もれていた恵獣の足が……って、うん!?


「足が多い!?」


 俺は視界に入り込んだ光景を、思わずそんな悲鳴にする。


 足が多い、あの鱗の球体の下には、トカゲのような体があって四足歩行をしていると勝手に思い込んでいたのだが……四本どころかその倍、いや、3倍はあろうかという数の足が蠢いていて、その足は獣と言うよりもカニとかエビを思わせるものとなっていた。


 あの数の足で踏ん張ったことでユーラ達の力に勝っていたのか……あの足の先は変に尖っているし、あれを地面に突き刺して耐えていた、とかも有り得そうだなぁ。


 鱗の球体から無数の足が生えているあの姿、どこかで見たことあるような……いや、今は足が多いとか、こいつの正体が何者かなんてことはどうでも良い、まずは投網でもって拘束しなければ……!


 そう考えを切り替えて投網を投げ……網は問題なく魔獣の体を覆い、足が多い上に良く動いていることから、足があっさりと網に絡んで魔獣の動きを阻害する。


 上手くいったことが確認出来たなら駆け寄ってきたユーラとサープに投網に繋がるロープを預けて、それからシェフィに預けていた銃を受け取り、弾丸の装填をしていく。


 装填をしながらグラディスには距離を取ってもらい……装填が終わったならしっかりと構えて狙いをつけて……魔獣のどこを狙うべきかと改めて観察をする。


 鱗の球体はひっくり返ったまま、その球体に穴があいていて、そこから無数の足だけが球体の外に飛び出している。

 

 その様子は、どこかで見たことあるもので……ああ、うん、分かった、ヤドカリだ、ヤドカリに似ているんだ、あの魔獣。


 ただ鱗の球体には生命感があるというか、球体それ自体もロープから抜け出そうと蠢いていて、貝殻とは全く印象が違ったものとなっている。


 あの球体も間違いなく魔獣の一部であり、そこからあんな風に足が生えている……というのは、思い当たる生物がいないというか、聞いたこともない特徴だ。


 とりあえず銃で狙うならあの穴だなと狙いを定める……あんな露骨な弱点、狙わない訳がないだろうと狙いを定め、そして一発、すぐに二発銃弾を叩き込む。


 一発目が穴の中にぶち当たり、それを受けてか魔獣は足を穴へと引っ込め……引っ込めた足でもって壁のようなものを作り出し穴を塞ごうとする……が、そんな足の壁を二発目の銃弾があっさりと砕く。


 周囲に足の殻と肉片が飛び散り、攻撃に驚いてか魔獣の足がガタガタと激しく蠢き……そうして球体の中からにゅうっと、驚く程の長さとなって伸びてきた足は、その尖った先を地面へと深く突き刺し、何をするつもりなのかぐぐっと力を込め始め、体に絡みつく網ごと立ち上がろうとし始めるのだった。


お読みいただきありがとうございました。


次回はこの続き、VS鱗です


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