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転生先は北の辺境でしたが精霊のおかげでけっこう快適です ~楽園目指して狩猟、開拓ときどきサウナ♨~  作者: ふーろう/風楼
第二章

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魔獣狩り


 俺は銃を用意しシェフィを頭に乗せて、ユーラとサープは槍を用意し背負鞄をしっかりと背負い……そうやって準備を整えたなら、ここから離れるべく一塊となって駆け出す。


 先程も話題に上がっていたけども村の周囲やこの辺りには鳴子などがあり、魔獣や獣が近くにいるのならそれらが反応しているはずだ。


 だけども朝からそういった反応は一切なく……魔獣を狩りたいのなら、場所を変える必要がある。


 村から遠く離れた一帯へ、鳴子などが仕掛けられていない未開拓地へ……東西南はトラブルの可能性があるので北へ北へ、これから開拓する予定の一帯へと駆けていく。


 ジュド爺は今日中に狩れなかったら罰を与えるなんてことを言っていて……安全性を考慮すると日が沈んだ後に狩りをする訳にはいかず、日暮れまでがタイムリミットとなる。


 ラーボの支度や先程の授業で、既にそれなりの時間が経ってしまっていて……日本とは比べ物にならない程に日が短いこの辺りの日暮れは早く……残された時間は一時間か二時間くらいのものだろう。


「二手に分かれるッス! 自分が単独で! ユーラとヴィトーがコンビで!」


 その途中サープがそう声を上げてきて、ユーラと俺はすぐさま頷き、それを受けて頷き返したサープは速度を上げ雪を蹴り上げ、森の中へと消えていく。


 隠密能力があり奇襲が得意なサープなら一人でも問題なく魔獣を狩れるはず……索敵にも機動力にも優れているから単独の方がより効果的なはずで……その上、二度のレベルアップを経ているものだから、安心して任せることが出来る。


 一度目はドラーとの出会いで、二度目は魔王戦の後で。


 俺とアーリヒがサウナに入った後にユーラとサープもしっかりサウナに入っていて……その際にドラーが出てきてきっちりとレベルを上げてくれたそうだ。


 俺に関しても裏でこっそり加護を与えてくれていたとかで、そんな二度のレベルアップを経て俺達の身体能力はかなり上がっているようで……感覚的には前世の世界で言うところのトップアスリートレベルになっている……気がする。


 速度も力もスタミナも、全てのステータスがトップアスリート並で……短距離走選手の速度でもって長距離走選手のようなスタミナを発揮出来るのだから、端から見たらとんでもないというか、化け物のように見えることだろう。


 そこに経験とスキルが追加されていて……うん、普通の魔獣であれば余裕で勝てる強さになっていると思う。


「だっはっはー! 精霊様の加護はすげぇなぁ! 全然息が切れねぇ!!」


 なんてことを考えながら駆け続けているとユーラがそんな声を上げ……両手両足を元気に振り回しながらズンズンと速度を上げていく。


「き、気持ちは分かるけど、狩りの前にバテてしまわないようにね!」


 ユーラと違って少しだけ息が切れ始めた俺がそう返すと、ユーラはそれもそうだと速度を緩めてくれて……駆けながら鼻を突き出しスンスンと鳴らし、魔獣の臭いがしてこないかと、風変わりな索敵をし始める。


 そんなことをしていてもユーラの息が切れることはなく……何もしていないのに俺の息はどんどんと荒くなり……同じだけのレベルアップをしていてこれだけの差が出ているのは、元々の体力の影響なのだろうか? なんてことを考え始める。


 元々のユーラの体力が200とするなら、俺は100くらいで……二度のレベルアップを経てユーラは400になって、俺は200になっている……みたいな。


 レベルアップ……火の精霊ドラーの加護による身体能力強化は、本来の身体能力に加算ではなく乗算されるものらしく……これだけ明確な差が出ているとなると、勘違いとかではないようだ。


 そうなると元々の力と体力に優れているユーラが一番恩恵を受けそうだけども……ドラーは職人や家事をしている女性達にも加護を与えると言っていたはずで、そういった人が受けられる恩恵もあるはずだ。


 まだ見えてきていない何か……内面的なものとか、何かこう俺に思いつけないようなこととか、その辺りで何かあるのかもしれないな。


 なんてことを考えていると鼻を突き出したユーラが声を上げる。


「んお!? ヴィトー! なんかくせぇぞ!

 多分近くに魔獣がいる! なんとなくだが臭いが強いから結構数がいるかもしれねぇな!」


「分かった! そちらに向かおう!」


 俺がそう返すと、頷いたユーラは進路を変えて駆けていく。


 ……ユーラの鼻が臭いを嗅ぎつけたというくらいだから、すぐ側にいるのかと思ったが、速度は早いまま結構な距離を駆けることになり……うん、もしかしたら嗅覚も強化されているのかもしれないな。


 嗅覚が変に鋭敏になると生活で困りそうだけども……なんてことを考えていると、ユーラが駆けるのを止めて槍を構え、両足を広げてどっしりとした構えを取る。


 木々はないが雪に覆われた大岩がゴロゴロと転がっているこの一帯のどこかに魔獣が隠れているらしく……俺はユーラの後方で銃を構えて周囲への警戒を強める。


 ユーラの鼻が正しいなら数は複数……大岩に隠れているとしても、そこまでの数が隠れていられるような場所はないと思うけど……。


「岩じゃねぇ! 下だ!!」


 そう言ってユーラが駆け出す。


 下? 下とは? と、そんな疑問を抱いた瞬間ユーラが槍を雪へと突き立て、悲鳴のような声が上がる。


『ゴァァァァァァァァァ!?』


 直後雪が爆発したかのように吹き上がり、槍を背中に突き立てられた黒く大きな魔獣が姿を見せる。


 今まで狩ってきた熊型よりは小さいが、それでも人よりは大きく、なんとなくクズリ……ヒグマさえも襲うという獰猛な獣によく似ている。


 クマにも似ているが体が小さく足が長く、尻尾も大きく長く……クズリは確かイタチの系統だったか。


 イタチを大きくして凶暴化させたという感じでもあり、毛が針のように逆立ち、不自然なくらいに真っ黒で……爪が無意味に長く鋭い辺りからも、魔獣であることが分かる。


「ほ、ほとんど刺さってねぇじゃねぇか!?」


 なんてユーラの声の通りユーラの突き立てた槍は、針の毛に妨げられたのか穂先の先端しか刺さっておらず、どうやらこの魔獣の毛皮はかなりの強度があるようだ。


 そんな魔獣は槍を気にした様子もなく立ち上がり、両腕を大きく広げての威嚇をこちらに見せてきて、


「ユーラ! 飛び退いて!」


 ならばとそう声を上げた俺が銃口を魔獣へと向けると、ユーラが凄まじい……漫画のようなジャンプ力で飛び退き、クズリ魔獣までの射線が通る。

 

 冷静に静かに、しっかりと狙いを定めて引き金を引く、油断せず二連射。


 聞き慣れた破裂音がしてクズリ魔獣の頭と腹に着弾し、立ち上がっていたクズリ魔獣がその衝撃で仰向けに倒れるが、血は吹き上がらない。

 

 背中だけでなく腹の毛皮まで分厚いのかと舌打ちをした俺は、すぐさま銃を中折状態にし、薬莢を取り出しての再装填を試みるのだった。


お読みいただきありがとうございました。


次回はVSクズリ魔獣です



そしてお知らせです


書籍版のレーベルや発売日が公開になりました。


まずタイトルが


『転生先は北の辺境でしたが精霊のおかげでけっこう快適です ~楽園目指して狩猟開拓ときどきサウナ~』


に微妙に改題(発売前辺りにWEB版もこちらに修正します)


レーベルはSQEXノベル、発売日は1月6日


イラストレーターはLardさんとなります!


既に作業も進んでいまして……近々イラストなど追加情報も公開出来るかと思いますので、ご期待いただければと思います!


各通販サイトなどで予約も始まっていますので、チェックしていただければ幸いです!

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書籍版紹介ページ

書籍、コミカライズ発売・予約中! 画像クリックで通販ページに飛びます。
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