表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先は北の辺境でしたが精霊のおかげでけっこう快適です ~楽園目指して狩猟、開拓ときどきサウナ♨~  作者: ふーろう/風楼
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

193/195

精霊モドキ


 

 装甲を体のあちこちに張り付け、複数の精霊の結界に押し込まれ、炎と風に巻かれて尚も諦めようとしない黒精霊。


 そして周囲にちらばる瘴気をかき集め始める。


 周囲に立ち込めていた黒い霧が一気になくなって一箇所に集中し、そしてそれが新たな装甲を作り上げる。


 すかさず銃撃を放つ、装甲が全身を覆うと手の打ちようがなくなる、そうなる前に剥がす必要があるとまず1発。


 残り5発しかないうちの1発だが悠長なことはしてられない。

 

 そう判断しての一撃は見事に再構築されていた装甲を引き剥がしたが、しかし今度は炎も風も発生しない、一切黒精霊は動じない、それどころかずっと燃えていた炎さえ消え去ってしまう。


 装甲が通じないとなって別の防御法に切り替えたのか、あるいはようやく本気になったのか、それから目を見開いてシェフィのものに似た可愛らしい両腕を広げてこちらに猛然と襲いかかってくる。


 口はヘの字に閉じてしかし目は見開いて、瞳は暗く沈んで輝きがなくまんまるでそれがなんとも怖い。


「グラディス!」


 そう声を上げて瞬間グラディスが駆け出して、黒精霊から距離を取る。


 しかし黒精霊の速度も凄まじく、完全に距離を離すのは不可能で、むしろ相手の方が速度は上、じわじわと距離が詰められていく。


 ならばと体をひねる。


 猟銃ならまだしもライフルでこれをやるのはかなり厳しいが、精霊の加護によって鍛えられた体ならどうにか耐えることが出来て、雑な狙いなままではあるが引き金を引く。


 こちらに迫って来ている相手でもあるので簡単に命中、光に包まれ炎と風に包まれるが、すぐにどれもが消えてしまう。


 やっぱり無効化されている、新たな防御方法を獲得したらしい。


 ……こうなるとどうするべきなのか、弾丸は残り3発、全て打ち切って格闘戦に移行するという手もあるだろうけど、この勢いで迫ってくる相手に俺の近距離戦が通用するとは思えない。


 ならば……と、もう一度体をひねってライフルを構える。


 今度は適当には狙わない、しっかりと狙いをつける、そしてタイミングもしっかり図る。


 狙いは……、


「そこっ!!」


 と、声を上げて引き金を引いて、しっかりと狙い通りに弾丸を叩き込む。


 そこは黒精霊の目だった、大きくて丸い目、シェフィのようにずんぐりむっくりな体で、顔も大きい、顔も大きいから目を大きい、とても狙いやすい。


 目玉なら弱点に違いないと考えての銃撃だったが、一応は弱点だったようで弾丸が目玉の中にめり込む。


 ただし予想していた結果とはだいぶ違っていた、光と炎と風が着弾点の周囲で蠢くが大したダメージはなく、すぐに再生してしまう。


 目が潰れたとか大ダメージがあったとかではない、ただし確かに体内にめり込んでいて……他の部分に当てるよりはマシな結果になってくれた。


 これで残り2発……2発共目玉に撃ち込むか、それとも……。


 と、そこでどうにか黒精霊の口を開けられないものかと考え始める。


 口の中なら、体内に打ち込めたならきっともっと効果があるはず。


 しかし黒精霊はまともに口を開けたことがない、声を上げていた時も開けていたどうかが分からず……どうしたものだろうか。


「シェフィ、黒精霊の口を開かせたいんだけど、何かない!?」


 銃撃を受けて多少勢いを失いながらも迫ってくる黒精霊から、逃げるグラディスの背の上でそんな声を上げる。


『何か!? 突然凄いこと聞くね!?』


 俺の頭に必死に張り付きながらシェフィ。


『えっとえっと……声を上げさせる? 話しかける?

 いや、話が通じる相手な訳がないし……あくび? くしゃみ? なんだろ、くすぐって笑わせる??』


 ……どれもこれも無理そうだなぁ。


 口の中を狙うってアイデアは悪くないと思うんだけど、どうしたら良いかが全く思いつけない。


 何か無いかと逃げ回る中で考え続ける。


 グラディスの体力は後どれだけ残っているのか……早く思いつかなければ。


「そもそもなんでアイツは精霊の姿してんの!?」


『多分こっちから学ぼうとしてる、真似してる、あるいは精霊そのものになろうとしてる。

 自分が負けそうな相手から学ぶってのは悪くない作戦だからね、だんだん精霊弾が効かなくなったのもそのせいかも!

 アイツ段々と精霊になってるんだよ!!』


 なんだそりゃぁ!? と思ってしまうが、世界に魔法なんてシステムを作ってしまう存在だ、そのくらいは出来てしまうのだろう。


 精霊になろうとしている、精霊になっている……シェフィ達の仲間入りしようとしている?


 ……だからどうしろと言うんだ、精霊の弱点なんて知らないしなぁ。


 ……あるとしたらアレか? アレならまだストックがあるけども……いや、試してみるしかないか。


 と、俺はそれを手に握り込んでから振り返ってライフルを構える。


 そして……片手でライフルを支えながら、片手をポケットの突っ込み、そこにあったストックを引っ掴んで黒精霊に向けて投げる。


「ほら、黒糖だ! 舐めると甘いぞ!!」


 精霊=食いしん坊。


 いや、俺の勝手な思い込みなんだけど、なんだかそう思ってしまってグラディス用の黒糖のストックを放り投げる。


『ンァァァァァー』


 すると黒精霊は反応を示す、そんな無機質な声を上げながら口を大きく開き、瞬間ライフル弾を撃ち込む。


 一発、二発の二連射。


 両方とも口の中に命中、それを受けて黒精霊は口を閉じるが、中から光と炎と風が溢れてきて……大ダメージを受けたのだろう、こちらに迫ってくるのを止めて悶え苦しみ始める。


 それを見て足を止めるグラディス、息を荒く吐き出しながら様子を伺っていて……頭の上のシェフィが声を上げる。


『……精霊に近付いたからこそ、ボク達に近い存在になったからこそ、普通にやられる存在になっちゃったのかな。

 馬鹿だなぁ、元々の邪悪な存在のままの方が厄介だったのに』


 と、そう言ってシェフィが俺の頭から離れて黒精霊を封印すべく結界を展開し始める。


 それに続いて俺達を追いかけてきた精霊達が現れて、シェフィを手伝い始める。


 ドラー、ウィニア、仮面精霊、もじゃもじゃ精霊、岩精霊、氷精霊などなどなどなど。


 様々な精霊が現れて結界を張り始めて……そうして全ての元凶は精霊達の手によって、完全に封印されるのだった。




お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

書籍版紹介ページ

書籍、コミカライズ発売・予約中! 画像クリックで通販ページに飛びます。
mnijqs95k05fkifczb7j2ixim1p_k0i_15z_1nn_13kk2.jpg mnijqs95k05fkifczb7j2ixim1p_k0i_15z_1nn_13kk2.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ