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転生先は北の辺境でしたが精霊のおかげでけっこう快適です ~楽園目指して狩猟、開拓ときどきサウナ♨~  作者: ふーろう/風楼
第五章

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黒い精霊


 

 黒い大きな精霊モドキにシェフィの精霊弾が突き刺さる。


 瞬間、黒い精霊がまとっていた瘴気が乱れる……けどもすぐに元に戻って黒い精霊をより黒く染め上げる。


 ダメージが入っているのかいないのか、なんとも言えないけども攻撃の手を休める訳にはいかないと銃撃を繰り返す。


 その間、周囲の皆もそれぞれ武器を投げつけて、武器が当たる度に瘴気が乱れる……が、ダメージが入っているような様子はない。


『……攻撃する度、瘴気が薄れているけどすぐに瘴気が補給されているように見えるかな。

 さてはアイツ、各地が封印されているからって慌てて瘴気をかき集めているな。

 ……だけどもう手遅れだよ、各地で封印は進んでいるし、もうほとんどが終わってるんだ。

 あの時みたいな真似はもうさせないからね』


 と、シェフィが声を上げ、三精霊が同時に動き出す。


 そして黒い精霊を囲うような位置に浮かび……結界とでも言ったら良いのか、光の壁を作り出し始める。


 三方向から作り、それで相手を包み込むような動きで……その間も次々に攻撃が放たれる。


 黒い精霊は何もせずに動かず黙ってその状況を受け入れている、不気味だが抵抗も攻撃もしてこない。


 恐らくそれはシェフィの言う瘴気の補給のためなんだろう、補給をしている間は動けないか、動かないことで効率的な補給が出来るのか……どちらかは分からないが、今のうちに攻撃した方が良いのは確かなようだ。


 動かない相手であればと猟銃に持ち替えて普通の弾を撃ち込んでみたり、散弾を撃ち込んでみたり……そうやって攻撃を繰り返していると、瘴気がだんだん薄まっていって、シェフィ達が作り出している結界も大きくなっていく。


 三つの結界が大きくなって繋がって一つとなって黒い影を包み込み始め……そこに更に多くの、見たこともないような精霊達が駆けつけることで結界がより大きくなっていく。


 恐らくは封印が終わった土地の精霊なのだろう、仮面の精霊もいるし、どういうつもりなのか三角巾を頭につけた和風チックな精霊もいるし、なんと表現したら良いか分からないようなデザインの精霊もいる。


 多くの精霊が参加したことで結界が大きく強固になって……その邪魔をしてはいけないと、攻撃の手が止まる。


 攻撃の手を止めて息を整え新たな武器を用意し……俺も黒い精霊から目を離さないようにしながら銃の簡単な手入れをしていく。


 結界に包まれた黒い精霊はどんどん瘴気を奪われているようで小さくなっていく……が、そこでシェフィ達に異変が襲いかかる。


 どこからか黒い塊……瘴気が現れてどんどん襲いかかる。


 それを受けてシェフィ達の顔が歪む、慌てて何人かの男衆がシェフィ達の足元に駆け寄って手を振るうなりして黒い塊を払おうとするが触れることは出来ないらしい。


「瘴気だよな、あれ……一体どこから!?」


 俺がそう声を上げると、声を返してきたのは意外なことにロレンスだった。


「……決まってる、街の連中だ、魔法を使っていやがるんだ。

 ……事情を知った上で、こっちの説明をしっかり聞いた上で魔法を失いたくないからと、魔法を使いまくってコイツの応援をしてやがるんだ。

 ……一定数そういう邪教がいるのは知っていたが……それに市民が味方してるに違いない」


「……それはまた、なんとも残念な話だなぁ。

 この辺りの土地の封印はまだだから、経路みたいなのが残っていて瘴気が届いている、と。

 ……ユーラ、サープ、魔王ごとではないけど、この周辺の封印、出来ないかな?

 半端でも良いから封印だけしたなら経路を塞げるかも」


「……おう、やってみるか」

「このまま何もしないで見ているよりはマシっすね」


 俺の言葉に二人がそう応えてくれて……封印用にとシェフィ達が用意してくれた特別な槍をそれぞれ手にとって構える。


 他の男衆達もそれに続く、ロレンス達もここにいても出来ることはないと判断したのか、ユーラ達に合流する形でばらける。


 そして一斉に駆け出して……瘴気が走ってきている、ように見える方へと進んでいく。


 あの黒い精霊が干渉出来ない程度に距離を取ってから封印作業を行うつもりなのだろう。


 そうして黒い精霊を中心に、それを囲うシェフィを始めとした精霊達、そんなシェフィ達に襲いかかる瘴気、それを見守る俺とグラディスという、不思議な状況が出来上がる。


 いつでも銃撃できるよう構え、グラディスもいつでも突撃できるように構える。


 そうこうしていると黒い精霊が大きく膨れ上がり始める。


 精霊モドキな姿のままどんどん大きく膨れ上がって、結界を内側から押し破ろうとしているようだ。


 ……ならばとライフルを構える、いつでも撃てるようにする。


 シェフィ達は黒い瘴気に襲われながらもぐっと堪えて結界を維持し続け……黒い精霊はそんな状況を見て、こちらを睨んでくる。


 そのつぶらな目で、シェフィそっくりの目で、憎しみをこめてこちらをじっと。


 そうして何かを決断したような顔となった黒い精霊は結界に体当たりを初めて、結界を打ち破ろうとする。


 それを防ごうと一段と気合を入れる精霊達、しかし黒い精霊は決して諦めようとはせずに体当たりを続けて……一瞬、ほんの一瞬結界がヒビに入るとそこから一気にシェフィ達を攻撃していた黒い瘴気を取り込む。


 そして更に巨大化、そこからはあっという間に結界が砕けて黒い精霊が解き放たれる。


 結界を破ったというよりかは、シェフィ達が結界を放棄したという方が正しいだろう。


 これ以上結界を維持するよりも一旦離れて仕切り直し、次の動きに備えようとしたように見える。


 そして結界がなくなったのならばとすぐさま炎の精霊弾を撃ち込む。


 現状可能な最強の一撃、大した動きを見せない相手になら何の躊躇もなく撃ち込むことが出来て、すぐさま黒い精霊は炎上し、炎に焼かれながら身にまとう瘴気を減らしていく。


 しかしまた経路から瘴気が補給されて膨れ上がり……と、繰り返す中、補給経路の一つが突然動きを止める。


 どうやらユーラ達による封印が始まったらしい。


 この戦場を囲うような形で各地で封印を行っているのだろう……次々経路が塞がれていって、黒い精霊がふるふると震え始める。


 燃えながら震えて、より大きくなろうとするが出来なくて……そうして意を決したらしい黒い精霊はこちらへとその目を向けて……尚も燃え上がりながら突撃をしてくるのだった。


お読みいただきありがとうございました

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