封印のために
ロレンス達沼地の勢力が協力してくれるとなって、封印の話は一気に進んでいった。
何しろ抵抗すると思われる勢力が味方になったのだから、一番の障害がなくなったようなもの……後はどこで封印をすべきかの調査なのだけど、それもロレンス達がやってくれることになった。
重要な調査をロレンス達に任せることには不安の声も上がったけども、ドラーが同行して見張ってくれるというので問題はないだろう。
もし仮にロレンス達が裏切ったとしても、火の精霊であるドラーを害することは出来ないそうだし、下手に俺達が同行するよりは安全だろう。
調査結果を待つ間、俺達は周囲を探索したり遠出をしたりしての修行を行っていって……同時に封印に向かうメンバーの選定を行っていた。
俺、ユーラ、サープは確定、他に誰かを連れていくかという話になって……まとめ役と言うか指揮役としてジュド爺。
ジュド爺は沼地周辺を探索した経験があって相応の知識があるのでそれに頼らせてもらうことにした。
更に誰かを連れていくか行かないかはまぁまぁ揉めて、ビスカやベアーテも参加したがったけども、ユーラとサープが集中出来ないだろうということで却下。
鎧熊という戦力はありがたいのだけど……今回は村の警備に回ってもらうことになった。
後は村の男衆なのだけども、言ってしまうとユーラ達ほどレベルが上がっておらず、武器も作れていないので参戦を不安視する声もあったのだけども、ロレンス達が来る関係上、ある程度の人数を揃えておかないと変な主導権争いが発生してしまうということもあって、10人の若者が参戦することになった。
……ただそのまま連れていくのには不安が残るということで、その全員を鍛え直すことになり、ポイントで装備も作ってやることになり……精霊の槍といつかに作った盾も持たせることになった。
体を鍛えて壊れないだろう槍と盾があれば、それなりの戦力になる上、いざロレンス達とトラブった時にも対応してくれることだろう。
そんな彼らの修行にも付き合うことになり……一週間。
たくさん魔獣を狩ってポイントを集めて、精霊弾を量産してと、自分なりの準備も進めていった。
途中シェフィからもっとすごい武器作る? なんて提案もあったけど……流石に扱いきれないと思ったので遠慮しておいた。
ガトリングガンやらマシンガンやら……普通に扱い辛い上に、弾一発一発にポイントがかかる現状、とてもじゃないが常用出来るものではなかった。
……と、言うかシェフィも分かっていて、そんな提案をしてきた節がある、もうこれ以上は無理だから今の武器を使いなさいと、遠回しに知らせてきたのだろう。
そして……そうこうしているうちにロレンス達から封印すべきだろう場所を見つけたとの連絡が入った。
そこは沼地の国の王族が管理していたはずの平地林だった。
広く高低差はほとんどなく、まばらに木が生えていて、その木は大事な材木……だったのだが、いつの頃からか汚染のせいで木がひん曲がって材木としての価値がなくなり、それ以来ほぼほぼ放置状態だったそうだ。
材木という財産がそんなになってしまったのに、よく放置出来たなと思うが……まぁ、そこら辺の損失すら魔法というとんでもない力がなんとかしてしまっていたのだろうなぁ。
そこには魔王級の姿もあり、ロレンス達が見つけた魔王級はまさかのライオン型。
正確には翼が生えていて短時間なら空が飛べて、尻尾が剣のように鋭いそうなので、全然ライオンではないのだが、顔と体の形はライオンによく似ていたらしい。
ゲームだとキマイラとかそんな名前で呼ばれていそうなその魔王を倒し、封印をしたなら沼地の一帯の浄化も可能なはずで……俺達はすぐさま遠征の準備を始めた。
ロレンスによると調査隊は魔王の姿を確かめるために半壊してしまったそうだ。
挑んだりはせずただ姿を見るだけで撤退すると決めていたのだが、それでも半壊。
相当厄介な相手だと分かる。
そしてそんな被害にあってもロレンス達は心折れていないようで……しっかりと討伐にも参加してくれるらしい。
「……流石にちょっとは見直したんじゃない?」
討伐遠征のための準備を自分のコタで進める中、上空を飛び回っているシェフィにそう声をかけると、シェフィは尚も飛び回りながら言葉を返してくる。
『そうだねぇー……まぁ、頑張っているのは確かだね。
自業自得って見方も出来るけど、でも命を張って頑張っていることは評価してあげないとね。
ヴィトー達みたいに加護も何もない訳だからねぇ。
それにドラーによるとロレンス達は魔法を使わないで頑張っているみたいだからね、精霊達からも良い評価をされているよ』
「……ま、魔法無しで魔王級の化物から逃げ切ったんだ。
なんかそれだけだいぶ凄いような……。
……俺がやれと言われても出来るか分からないなぁ、それは。
……なら俺達も気合い入れ直して頑張らないとだね、ロレンス達だけに頑張らせるなんて、精霊の愛し子の名前が泣くし」
『うんうん……ヴィトーに来てもらって本当に良かったよ。
長いこれまでの歴史を思うと、本当にあっという間にここまで来られたからねぇ。
もちろん他の皆も頑張った結果なんだけどね、確かなきっかけであったことは事実だよね。
……ヴィトーはどう? こっちに来て良かった?』
「それはもちろん、毎日が楽しいし……本当の意味での人生のやりがいを見つけられた気もするし。
シェフィを始めとした皆にも会えたからね。
あのまま終わっているより何十倍何百倍も良かったよ。
……ちゃんと封印を終えられたなら、もっともっと良い気分になれるはずさ」
『そうだね、あとちょっと……皆で頑張っていこうか。
今回はボクもウィニアも同行して、ドラーも合流しての全員参加。
精霊パワーもマックスで行くからねぇ、多分最後の戦いになるから、皆全力で頑張ろう!』
と、そう言ってシェフィはくるくると回り飛び……目でも回したのかふらふらと俺の頭の上に降りてくる。
それを頭で受け止めた俺は、
「うん、がんばろう」
と、返し……しっかりと遠征の準備を進めていくのだった。
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