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転生先は北の辺境でしたが精霊のおかげでけっこう快適です ~楽園目指して狩猟、開拓ときどきサウナ♨~  作者: ふーろう/風楼
第五章

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ロレンスの決断



 俺がどう言葉をかけようかと悩んでいると、それより早くロレンスが声を上げる。


「生存戦争をしろか……恐らくこっちには無理ですよ。

 生活が厳しくなるっても争いを嫌がるやつらがいる、そうなると一致団結なんてのは無理です。

 そちらが生存戦争の権利を認める程に譲歩してくれるなんて知ったら尚更で……自業自得と責め立てる者が現れるでしょうし、ここぞとばかりに騒ぎを起こすやつもいる。

 更に他の大陸からの援護まで来るとなったら……いくら魔法があっても勝てるものではないでしょう。

 ……情報を頂けたことは感謝します、議会に知らせることもしましょう。

 ……ですが、混乱は確実、まとまった動きは出来ないと思ってください。

 貴方達の妨害をする者もいれば、戦いを挑む者もいるでしょうけど、それを統率することは出来ません。

 そちらに迷惑をおかけすることにもなると思いますが……その責任を負うことも難しくなるでしょうから、ご理解をいただければと思います」


 あー……まぁ、そうだろうなぁ。


 ここぞとばかりに騒ぐ反主流派はいるだろうし、国レベルに人口が多いなら少数派だろうけども反魔法派もいたはず。


 魔法に問題があるという情報自体は昔から向こうに伝わっていた訳で、それを信じていた人が全くの0ということはないだろう。


 そこにただ騒ぎたいだけの人が加わってほれみたことかと騒ぎを起こせば、もう戦いどころではないのだろうなぁ。


 こちらがあちらから奪うとか滅ぼすのが目的なら生きるために団結をするかもしれないが、そんなことをする気は一切なく……あくまで目的は世界を救うこと。


 そうなると一致団結も難しくなるだろう。


 ……恐らくは街とは違った暮らしをしている田舎と言ったら良いのか、古い暮らしを今も続けている地方もあるはず。

 

 そういった場所は魔法がなくてもなんとか生活を立て直せるのだろうし、賛同を得るのは難しそうで……うん、逆の立場だったら何が出来るのか、どうしたら良いのか、全く分からないくらいに厄介な問題だ。


「厳しい状況なのは理解していますし、封印後の立て直しも大変なのだと思います。

 ですが、それを仕組んだ相手がいるということを忘れないでください。

 放置していれば、その悪意ある存在はこれまで以上の何かを仕掛けてくる可能性があります。

 そうなる前に打てる手を打って、本当の意味での立て直しをしましょう。

 そちらも古代にそういった戦いがあったということはご存知なのでしょうし、もしでれば封印やその後の戦いに協力していただければ、精霊達の助力もあるかもしれませんよ」


 現時点でも助力はすると伝えてあるのだけど、更なる助力があれば立て直しがだいぶ楽になるはず。


 そう考えての俺の言葉にロレンスは、わずかな希望を抱いたようで、目を輝かせる。


「……精霊様、今のお話は本当ですか?」


 そしてロレンスはそう問いを投げかけて、ウィニアはこくりと頷いて言葉を返す。


『それはもちろん……世界を守るために頑張ったならちゃんと評価はしますよ……。

 シャミ・ノーマの子達はずっと世界のために尽くしてきた訳で、同列には扱えないけど、無碍にはしません……。

 どこの人間達も世界の住民であることは確かだから……』


 精霊からの確約を得てロレンスは完全に生気を取り戻す。


 そして覚悟を決めたのだろう、しっかりと胸を張って声を上げる。


「封印が避けられないのであればこのロレンス、封印のための戦いに参戦いたします。

 可能な限り仲間を集め、傭兵達も揃えましょう。

 出来ましたら先陣をお任せください、必ずや役に立ってみせます。

 我らも我らなりに魔獣と戦ってきましたから、戦い方は心得ていますし、武器も揃えてあります、足手まといにはならないでしょう」


 これはまた予想外なことになったと俺達が驚く中、ウィニアはこくこくと頷いて満足そうだ。


 自分がこの話をまとめたとどこか自慢げで……まぁ、確かに温厚なウィニアだからあっさり決まったと言えばその通りだろう。

 

 シェフィはあれでなんだかんだと厳しいからなぁ……ドラーは絶対に怒るだろうし、こうはならなかっただろう。


「分かりました、族長にそう伝えておきます。

 他の精霊達にも伝えて……封印の日取りなども恐らく、精霊達がそちらに伝えてくれると思いますので、準備をしておいてください。

 ……それとロレンスさん達が協力してくれたとしても邪魔をする人達はいるでしょうが、そういう人達とロレンスさん達は別と考えるようにも伝えておきます。

 ですので、ロレンスさん達はそちらに対処はせずに魔獣と封印にだけ意識を向けてください」


 と、俺が返すとロレンスは胸に手を当てての礼をし「ありがとうございます」と感謝の言葉を口にする。


 流石に同胞同士で殺し合うのはごめんだろうし、このくらいの譲歩はすべきだろう。


 それから俺達は今後のことや戦場で出会った際のルール……約定などもしっかり話し合う。

 

 それで全て決定とはいかないが、アーリヒに伝える前にある程度話を固めておく必要はあるだろう。


 話し合いをし、ある程度固めたらウィニアに確認をし、問題がなければロレンスが持ってきた筆記道具で書面にし、両者それを持って……解散。


 それから皆と無事に終わって良かったと、そんなことを言いながら村に戻り……アーリヒ達に報告をする。


「よくやってくれました! これで封印も問題なく行えそうですね!」


 と、この結果には相当喜んでもらえた。


 まぁ、大事な封印の前に余計な衝突を避けられたのだから当然か、シェフィとドラーも結果としては良かったと喜んでくれて……これを契機に村全体の封印への想いが強まっていくことになった。


 夢物語ではなくなってきた、本当に世界を救える時がやってきた、それに自分達が参加出来る。


 ついにその時がやってきたのだと大盛りあがり、その日の夕食はさながら宴会のようで……誰もが笑顔で、腹一杯に食べて飲んでの大騒ぎだった。


 ……そして翌日からは皆覚悟を決めての準備が進み……そうして他の地でも決戦が始まったということで俺達も、封印のために動き出すのだった。




お読み頂きありがとうございました。

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