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転生先は北の辺境でしたが精霊のおかげでけっこう快適です ~楽園目指して狩猟、開拓ときどきサウナ♨~  作者: ふーろう/風楼
第五章

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実戦で


 俺が精霊弾に関する試行錯誤をしているうちに、ユーラとサープもまた自分の武器を強化していたらしい。


 同じように精霊の力を借りて武器に込めてもらうという改良で……ユーラはハンマーの直撃と同時に精霊の力を炸裂させ、攻撃による衝撃が相手に体の奥深くまで浸透するようにしてもらい、サープは突き立てたマトックの先端から精霊の力を流し込むという形にしてもらったようだ。


 どちらもサイ魔獣の甲殻を意識しての改良で……その分だけ武器が重くなるなど、弊害もあったようだけども、そこは加護でのパワーアップでなんとかするようだ。


 ……そしてその加護について。


 シェフィが言うには、そろそろ加護の上限が近付いているらしい。


 人間としての臨界点、これ以上強化したなら人間ではなくなってしまうという、そのレベルにまでなっているようで、これ以上の身体能力の強化は出来ないそうだ。

 

 まぁ、あまりの怪力となって日常生活も送れないじゃ困ったものだし、限界というものはあって当然なのだろう。


 以降は歳を重ねても身体能力が落ちにくいとか、健康が維持しやすいとか、そういった方向の強化になるようで……それも近いうちに頭打ちになるんだとか。


 今後は限られた戦力で、どう戦っていくかを考えていく必要がありそうで……そのためにはまずは実戦ということで、再びゲートを通っての狩りに出かけることになった。


 ゲートに入り、検疫措置、それから向こうに出て……以前よりいくらか空気が澄んだ感じのする平原に出る。


 あれから数日、この地方の戦士達も頑張っているようで、かなり浄化が進んでいるようだ。


 ……だけども出発前に確認した地球儀を見るに汚染はまだまだ残っているようで……シェフィにそちらへと、瘴気の濃い方へと案内してもらう。


 今回は全員恵獣無しの徒歩だ、鍛錬が目的なのと改良した武器をしっかり使いたいということで、自分の体と武器のみで戦いたいと考えてのことだ。


 その分だけ危険はあるけども……多少の危険は仕方ないというか、いつものこと……その分だけ気合を入れて踏ん張るしかない。


 そうやって歩いていると……どういう訳か、瘴気が濃くなっている地帯が見つかる。


 落ち物パズルゲームのような不自然な形の岩に、螺旋状になった低木、マグマのようにゆっくりと蠢く土と、噂に聞いていた以上の光景が広がっていて、俺達を案内するために数歩前を飛んでいたシェフィも、警戒心を顕にして動きを止める。


「……誰かが魔法を使った、のかな。

 こんな風になるまでとなると、相当な魔法を使わないと厳しそうだけど……」


 これは異常事態だと、通常弾ではなくスマート弾をライフルに込めながら俺がそう声を上げると、ユーラとサープは無言で武器を構える。


『……いや、その形跡はないかな。

 新たに瘴気が発生したんじゃなくて、残っていた瘴気をここに集約したんだと思う。

 ……集約して戦力を強化、戦線を広げて大きく侵略するのではなく、一点を防衛する方針にしたのかな。

 ……瘴気を広めるのを諦めたとも取れるけど、その分だけ必死になって防衛してくるんだろうし、油断はしないでね』


 と、シェフィがそう言った時だった、まるで狙っていたかのようなタイミングで砂埃が上がる。


 すぐさまライフルを構える、スマート弾は装填済み、砂埃しか見えない状況ではあるけども、後のことはシェフィ達が調整してくれるだろうと、砂埃に狙いをつけて引き金を引く。


 直後響く発砲音と『ヒャッホーーー!』というシェフィの声。


 それを聞いて思わず銃口を下げてしまう、まさか弾丸と一緒に飛んでいったの!? とか、精霊がコントロールするってそういうこと!? とか、色々と言いたいことが出てくるけども、シェフィはもうここにはおらず、声も届くはずがない。


 色々と混乱してしまうけども、今するべきはあれこれと考えることではないと、改めて銃を構え直して砂埃の様子を確認する。


 もうとっくに着弾はしているはず、問題はどこに着弾したのか、効果はあったのかで……砂埃がまだ舞っているのと、距離が離れているためにハッキリとした確認は出来ない。


 とりあえず砂埃がこちらに向かって来ている様子はなく……足止めは出来ているみたいだ。


 そしてだんだんと砂埃が落ち着いていって……メガホンでも使っているのか、その辺りから、


『こっちおいでー』


 と、シェフィの声が聞こえてくる。


 それを受けて俺達は……汚染地域だからと警戒しながら足を進めて……砂埃が立ち上がっていた地点へと足を向ける。


 するとそこにはサイ魔獣の死体があり……出血箇所を見るに弾丸は目に命中したらしい。


『目から入って、中で暴れた感じかな』


 ……思っていた以上にエグいことやっていた。


 着弾後もコントロールが出来るようで、頭の中でライフル弾を暴れさせたようだ……。


「……そ、そんなことできちゃったらもう無敵なんじゃないの? 超遠距離からの内臓破壊って……」


 思わず震えながらそんな声を上げるとシェフィは、やれやれと肩をすくめてから言葉を返してくる。


『こいつはザコだからいけたってだけで、普通に回避されたり防御されたり、着弾後にコントロールを奪われる可能性だってあるから、そう簡単にはいかないよ。

 ……ただこのザコレベルなら、なんとかはなるかな。

 ただボクが不在になるとか、色々無防備になる面もあるから、そこを忘れずにね』


 な、なるほど……。


 確かにシェフィとの距離が離れてしまうし、射撃先でシェフィが攻撃されてしまうという可能性もある訳か……。


 そうなると今みたいな使い方は出来なくなる訳で……もうちょっと慎重に使っていく必要があるだろうな。


 と、腕を組みながらそんなことを考えていると、衝撃音が二つ。


 太く力強い音と、鋭く高い音。


 それを受けて音のする方へと視線をやると、ユーラとサープがそれぞれ武器を振るっていて、それぞれの前にはサイ魔獣が一体ずつ。


 音を聞きつけたか、俺達に反応したか、いつの間にか魔獣が集まって来ているらしい。


 それを受けて俺がすぐさま風冷弾を装填して2人を援護する構えを取り、二人はそのまま格闘戦へと移行し……そうして何度目かになる魔獣狩りが開始となるのだった。


 


お読みいただきありがとうございました。


次回はボス戦開始? です




そして全く別件ですが、新作の連載を始めています。



『概ね善良でそれなりに有能な反逆貴族の日記より』

https://book1.adouzi.eu.org/n6648ld/


概ねタイトル通りの内容となっていますので、気になった方はチェックしてみてください!¥

よろしくお願いいたします!

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