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転生先は北の辺境でしたが精霊のおかげでけっこう快適です ~楽園目指して狩猟、開拓ときどきサウナ♨~  作者: ふーろう/風楼
第五章

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検疫


 紙芝居が始まった。


 シェフィ達による力の入った語りが始まり……絵による今回の騒動が解説されていく。


 シェフィ達はゲートを開くとなってまずは検疫対策から始めたようだ。


 俺のアイデアは、両側のゲートに税関、または検疫所のようなものを作ったらというものだったけど、シェフィ達はもっと賢く……ゲートに繋がる通路そのものを検疫所にしようと考えたようだ。


 ゲートとゲートの間にある通路……そこを通っているうちに色々な検査や滅菌処理などが済まされるというもので、その方が安全かつ効率的だと考えたらしい。


 ゲートに検疫所を作っても破壊されるなどの可能性があるし、別のゲートを勝手に作っての検疫所回避なんてこともあるかもしれないので、通路全体を検疫所にすることで、そこを通るだけで全ての対策が完了となる仕組みを構築しようとしたらしい。


 そのためにもまずは通路を作る必要があり、それから通路を検疫所に改造し、改造が終わって検疫システムが稼働したのを確認してからゲートを設置、各地への移動を可能にするつもりだったようだ。


『こうしておけばここを通る生き物も持ち物も、空気も水も何もかもが検疫済みになる訳で、それでいて検疫所で変に待たされることもないという、凄く良いシステムになるはずだったんだよ。

 ところが連中ったら、それに気付いたみたいでね、検疫所のシステムが出来上がる前に勝手に通路を使っちゃったんだよ』


 と、シェフィ。


 続く説明によると、ひび割れを作って移動のための空間……異次元みたいなところに入り込み、シェフィ達が作った未完成通路を通ってこちらまでやってきて、またひび割れを作ってこちらに侵入してきた……と、そういうことらしい。

 

 シェフィ達もまさか魔獣がそんなことをしてくるなんてと驚いたようだが……どうやらそれだけのことを考え、実行出来る存在に心当たりがあるようだ。


 そしてドラー。


『そいつの名前は……あえて付けるんなら大魔王だな。

 かつてオイラ達が挑んだ最悪の存在、魔法っていう呪いをこの世界に残した馬鹿野郎。

 死んでおいて未練タラタラの、しつこい汚れみたいな大魔王なら、そういった小狡いことを考えるだろうし、実行するための実力もある。

 何しろ魔法なんてものを作り出せるくらいだからな……こんくらいは簡単だろう』


 次にウィニア。


『そもそも自分が負ける……死ぬかもとなった間際にそんなことを思いつくんだから、本当に悪どいですよね。

 自分が復活するまでの間、繁栄するに違いない人間達に自分の復活と世界の汚染を手伝わせようとした訳ですから……。

 そうやって汚染を進めて力を蓄えて、復活したか復活の時が近いか……とにかくそれだけのことが出来る程度には回復したようです……』


 つまりはその存在が本格的に動き出したと、そういうことらしい。


 まぁ、世界各地で浄化が進んで魔獣がどんどん倒されて、魔王みたいな強いのも倒されて……沼地でも流れが変わってきたとなれば、動かない訳にもいかないのだろう。


 このまま放置はしておけない、放置してしまったら負けが決まってしまうとなって動きを見せた訳か。


 ……で、恐らくは雑魚だけでなく魔王級の魔獣も送り込もうとしたのだろう。


 それがあのでかい角を持ったサイ魔獣だったのだろう……シェフィ達が作った通路を利用したせいか、かなり悲惨なことになってしまったけども……。


 無理矢理ひび割れを閉じられ角を失って、あの後あの魔獣はどうなったのやら……。


『異空間に放り出すことも出来たんだけど、ちゃんと生きてるよ。

 そんな良くない方法で倒しても意味がないからね……倒す時は正々堂々戦って倒してから浄化だね。

 戦いたくなったらいつでも言ってよ、その時にはちゃんと戦わせてあげるから。

 サイのお肉が美味しいかは……よく分かんないけど、それでも頑張って狩ればきっと美味しいはずだよ!』


 今度はシェフィがこちらの心を読んでいたかのような説明を始める。


 しっかり紙芝居の絵も用意している……説明を受けて俺がどんな思考になるのか読んでいたのかな。


 そして今度はサイのお肉らしい骨付き肉の絵が出てきて……そうやって俺達のやる気を煽ろうとしているようだ。


 サイは……美味しいって話はあんまり聞かないけど、魔獣となれば違ったりする……のかなぁ。


 何にせよそんな存在が復活しつつあるなら尚の事、魔獣狩りを頑張る必要がある訳で、今後はその辺りが課題になっていくのだろう。

 

 俺は新たな戦い方の模索をするかライフルで戦うかを選び、ユーラ達は新しい武器の使い方を上達させていって……サイ魔王を討伐する。


 あのサイ魔獣達はユーラとサープの活躍でなんとか倒せたけども、魔王級となるとそう簡単にはいかないだろう、やっぱりジュド爺の修行が必要になりそうだ。


『ちなみにだけど検疫所にも浄化機能はあるけども、それは汚染を広げるのを防ぐ目的のものだから、魔獣の弱体化には使わないよ。

 魔獣討伐はあくまで人間の手で行うべきだからね……ただポイントをたっくさん支払うなら少しの浄化はしてあげるかな。

 それくらいはお手伝いの範囲だからね』


 そう言いながらシェフィは紙芝居をめくって……浄化弱体、1回1万ポイントの文字を見せつけてくる。


 法外が過ぎる……まぁ、それだけの禁じ手ということなんだろう。


 あくまで魔獣討伐も浄化も俺達の手でやる必要があるということのようで……ユーラとサープは文字の意味を理解しないまま、ただただやる気をみなぎらせて拳を握っている。


 そんな中、シェフィ、ドラー、ウィニアの三精霊がそれぞれ紙芝居をめくり……めくったボード? を手にとって掲げてこちらに見せてくる。


 どうやら俺への強化案の提案らしい。


 シェフィは……手書きの絵だから少し分かりづらいけども、多分ライフルのショートバレル化、近距離で使えるようにするつもりらしい。


 ドラーはまさかの火炎放射器……火炎放射器って燃料をばら撒くものだから、近距離で使うには向いていないと思うのだけども……。


 そしてウィニアは……恐らくじゃがいもの絵。


 ……じゃがいも? うん? 芋? ああ、芋スナイパーになれということなのかな?


 芋スナ、ゲーム用語で遠距離から動かず撃ち続けるスナイパーのことだったかな……確かあれの語源はじゃがいもではなく、イモムシだったはずだからじゃがいもの絵は適切ではないと思うけども、ウィニアはゲームには詳しくなさそうだし、仕方ないのかな。


 ……それにしては芋スナイパーになれという提案をしてきた訳だけども……まぁ、シェフィ辺りが言葉だけを教えたんだろうなぁ。


 とにかくそういった提案を受けて俺は……、


「……うん、ジュド爺に相談してみるよ」


 と、そう返し、三精霊をがっかり肩落ちさせるのだった。


お読みいただきありがとうございました。


次回はジュド爺との修行編です

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コンロにいつまでもしがみつくガンコな油汚れのような大魔王
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