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転生先は北の辺境でしたが精霊のおかげでけっこう快適です ~楽園目指して狩猟、開拓ときどきサウナ♨~  作者: ふーろう/風楼
第四章

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琥珀の話とか


 力と忍者の琥珀を手に入れたことにより、南部の開発というか整備は物凄い勢いで進んでいった。


 サープが忍者の琥珀で偵察と警戒を行い、ユーラが力の琥珀で力仕事を行い……俺は拠点で荷物の整理やら、食事やらの準備を行う。


 いやもうなんか、ユーラ達が凄すぎて俺がいる意味あるの? って感じではあるのだけど、ついでにグラディスを始めとした恵獣の散歩とか食事も行っていて……ユーラ達が仕事に集中出来るようにしているので、一応それなりの意味はある、うん。


 ユーラとサープの恵獣の世話もしっかりやって……ブラッシングなども丁寧に行い、ついでに角や蹄の手入れもして……その間、二人に頑張ってもらう。


 いつ沼地から商人達がやってくるか分からない現状、とにかく早く効率的に作業を進める必要があるのだから細かいことは言ってられない。


 そうやって南部の開発が進み、道が出来上がって魔獣の気配が減ると、村の皆がやってくることも増えていって……村の皆による琥珀探索も活発になっていった。


 最近の村のブームとなっている琥珀探索。


 特別な力を得られる上に、信仰対象である精霊様を助けられるとなったら、探索に力を入れるのは当然のことだろう。


 琥珀を持っている? 可能性のある魔獣もそこまで強くはなく、レベルアップした皆なら十分狩れる相手でもあり……誰でも少しでも暇があれば琥珀探索を行っている、というような状況だ。


 それに応えるかのように、南からの植物魔獣襲来も続いていて……結果、村には力と忍者以外に、五つの琥珀が存在していた。


 と、言ってもそれらは力や忍者のような強力なものではなく、そこそこの性能だったのだけど、それでも特別な力があるのは事実で……村の皆はそれをとてもありがたがり、そして手に入ったことを喜び、ちょっとしたお祭り騒ぎとなっていたのだった。


 まぁー……誰が損する訳でもなし、村の皆にとっても精霊にとっても、そして世界にとっても良いことなのだから、問題はないのだろう。


「この調子で琥珀が集まっていけば、一気に戦力アップが出来るし……さらなる浄化と開拓も可能になるかもしれないね」


 南部に作った拠点で、少し大きく成長し、大人びてきたグスタフにブラッシングをしながらそんな声を上げると、グスタフの背中で寝転んでいたシェフィが、声を返してくる。


『うんうん、とっても良いことだね。

 ……工房に行った時に、他の精霊と話をしたんだけどさ、他の地域でも琥珀が発見されてるみたいなんだよね。

 東の島国とか、南の砂漠とか、氷の大地とか、もちろん海でも見つかってるみたいだよ。

 ヴァークの皆はそれで波乗りとかして遊んでるみたいだね』


「な、波乗り? 琥珀の力で……??

 い、一体どんな力の琥珀なんだ……いや、っていうかそんな力があってまずすることが波乗りなのか……」


『まぁー、ボクもびっくりしたけど平和な使い方で良いんじゃないかな?

 ……別大陸では琥珀を使っての反攻作戦とか持ち上がっちゃって大変だったらしいし、遊びに使うくらいでちょうど良いんだよ』


「反攻作戦……というと、魔法を使う勢力に対し、精霊を信奉する勢力が逆襲に出たってこと?」


『出る前に精霊が止めたからギリギリセーフって感じかな。

 ……相手が何かしてきたのに対抗するのならともかく、精霊の力を使ってこちらから侵攻……っていうのは、ちょっとね。

 まぁ、それだけひどいことされてたまっていたものがあったんだろうけども……今はそれよりも瘴気をなんとかして欲しいからねぇ』


「なるほど……まぁ、相手が魔法による文明なら、放おっておくだけでも弱体化していくんだろうし……その方が復讐的にも近道になるんじゃないかな。

 ……それとも俺達が浄化を進めた分だけ魔法を使えるぞって、盛り返したりする……のかな?」


『そんなことにならないよう、ボク達が頑張っているから大丈夫だよ。

 実際、他の地域で歪み始めた世界をなんとかしようと更に魔法を使いまくってるおバカな人達がいるんだけども、それで生まれた瘴気はその地域だけに封じ込まれていてね、他の地域に変な影響は出ていないよ。

 そして更に魔法を使っての悪循環……そういう人達がいることを考えると、沼地の人達は理性的な方だよね』


「……まぁ、そうなるのかなぁ。

 彼らの場合、ただの権力闘争というか、派閥の事情でそういう主張をしているーって感じもあるけども……それでも前に進もうとしたり、話し合いでなんとかしようとしたりしているのは……そうだね、確かに理性的だね。

 だからと言って仲良くも出来ないのだろうけど……。

 あ、そう言えばなんだけど、沼地の人達が精霊の琥珀を手に入れてしまった場合はどうするの? 買い取ったりするの?」


『あー……そうだねぇ、琥珀の精霊達もわざわざ彼らには近付かないだろうけども、それでも偶然手に入れるってことはあるかもだから、その時は買い取りをお願いしようかな。

 ……仮に彼らが琥珀を手に入れても、力を使えることは……琥珀の精霊達が力を貸すことはないから、そういう心配は必要ないよ。

 買い取る際も特別な力を持った琥珀じゃなくて、普通の琥珀として……模様が良いから気に入ったとか、そんな理由で買い取ると良いよ』


「分かった、そうするよ……っと??」


 シェフィとそんな会話をしていると、グスタフの耳がピンと立ち……他の恵獣達も耳を立てて警戒感を顕にする。


 そして俺でも感じ取ることが出来る嫌な気配……どうやら魔獣がやってきたらしい。


 ……ユーラとサープの警戒網を抜けてきたのか、それとも大量にやってきて、あの二人だけでは対処しきれなかったとか?


 どちらにせよ恵獣を守るためにも俺が対処するしかないかと、シェフィから猟銃を受け取り、中折れ状態にして銃身の確認をした上で散弾を込め、更に弾帯も取り出し弾丸を装填した上で肩に巻く。


 植物魔獣なら散弾の連射が必要になってくるし、それ以外の魔獣なら一発弾が必要になってくるので、両方を装填しておいて……いざ銃に込める時には間違わないようにしないとなぁと気を引き締める。


 それから恵獣達には避難するように伝えた上で、迫ってきているらしい魔獣の位置を確認するために高所へと……崖を登る形で移動する。


 そうやって出来るだけ高さを取ったなら周囲を見回し……蠢きながら駆けてくる一団を発見し、そちらへと駆けていく。


 駆けて駆けて魔獣達の元へと到着したなら、早速装填してある散弾を二連射……かなりの数の植物魔獣達に叩き込むのだった。




お読みいただきありがとうございました。


次回は新たな琥珀についてになります。



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― 新着の感想 ―
植物魔獣ということは……また琥珀がいっぱい手に入りそうですね。 一体どんな琥珀が手に入るのか今から楽しみです。
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