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転生先は北の辺境でしたが精霊のおかげでけっこう快適です ~楽園目指して狩猟、開拓ときどきサウナ♨~  作者: ふーろう/風楼
第四章

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琥珀


 ロレンス達と入れ違いになる形でやってきた植物魔獣は、最終的には12体となり……その全てを討伐し終える頃には誰もがクタクタとなってしまっていた。


 近距離戦を挑むことになるユーラとサープは、結構な切り傷を作ることにもなり……クタクタのボロボロ、良いことなんて何もない最悪の魔獣……と、思っていたのだけど、予想外というか予定外のこともあって、そうとも言えなくなった。


 植物型魔獣……元々がどんな植物だったかはよく分からないが、葉っぱや枝の感じがよく似ていることから、どれも同じ植物から変異したものらしい。


 同じ植物ではあるものの個体差は当然あって、大きさが違うとか枝の数が違うとか、動きが全く違うとか色々あるのだけど……その中に数体、明らかな違いというか、他にはない特徴を持った個体がいた。


 その特徴とは……枝や幹に琥珀が張り付いている、というものだった。


 いやまぁ確かに琥珀は植物由来だけども、そんな植物に張り付いているようなものでもないだろと思わず突っ込んでしまった訳だけども、この琥珀がまた普通の琥珀ではないようで、そのことに気付いたシェフィは大騒ぎ。


 至急その琥珀のことを調べる必要があるとかで、琥珀を採取し、取り残しがないかの確認をしっかりした上で、残骸を焼却して浄化……それから村に戻ってのサウナタイムとなった。


 サウナに入ったのは俺とユーラとサープ、シェフィは工房にこもっての調査中で……ユーラとサープはサウナに入りながらの傷の治療も行っていた。


 まぁ、治療と言っても獣から取った油を傷口に塗り込んでいるだけのことなんだけども、たったのそれだけでも結構な効果があるらしい。


 まず痛みがごまかせて、汗やゴミが傷口に入ることを防げる、怪我の治りも早くなるとかで……たっぷり汗をかくサウナに入るのならほぼ必須なんだとか。


 体を洗って清潔にした上で塗り込めば……確かに悪くはないのだろうなぁ。


 なんてことを考えながらサウナストーブの熱気を浴びていると、調査が終わったのかシェフィが突然現れたモヤの中から姿を現し、元気な声を上げる。


『やっぱりこの琥珀、精霊の力が詰まってるよ、こんなことがあるなんてね!』


 琥珀に? 精霊の力が? 


 またなんとも不思議なことを言い出したなぁと俺達が驚いていると、そんな俺達の表情から考えを読み取ったのか、シェフィが説明をし始めてくれる。


『えっとねー、だからあれだよ、あれ、瘴気を生み出した原因、あいつと戦った精霊達の力がさー、詰まってるんだよ。

 詰まってるからこの琥珀はねー、凄いんだよ! 凄くて嬉しくて、もっともっと集めないとね!』


 うん、説明されても良く分かんねぇ。


 結局どういうことなのかと俺達が首を傾げていると、風の精霊ウィニアが現れて……詳しい話をし始めてくれる。


 その昔、瘴気や魔法の原因となった存在との戦いがあり、精霊もそれに参加していた。


 主となって戦ったのは人間達だったけども、精霊も相応に奮戦したとかで……命を失うというか、消滅してしまった精霊も結構な数いたらしい。


 痛ましいことではあるが、その存在の凶悪さを思えば仕方ないことで、むしろ少ない被害でなんとか出来たと言えるような状況だった……らしい。


 そうやって消滅してしまった精霊は、自然の力の中に戻るのが通常なのだけど、瘴気に取り込まれたがゆえに戻れなかった者もいて……どうやらこの琥珀の中には、その力が込められているらしい。


 そんな琥珀がどうやって出来たのか、どうして植物魔獣がそんな琥珀を持っていたのかは分からないが……兎にも角にも、精霊達にとって精霊の力がそうやって戻ってきてくれたことは、とても喜ばしいこと……らしい。


「……なるほど?

 そうなるとその琥珀を溶かすなりして、力を自然の中に戻してやれば良いのかな?」


 ウィニアの話を聞き終えて、俺がそう声を上げると……シェフィもウィニアも首を左右に振る。


『変に溶かすより、力を使ってあげた方が良い……んじゃないかな、多分。

 ボク達にとっても初めてのことだから、分かんないことも多いんだけど、この琥珀になった時点で……なれた時点で自然に戻れているようなものだから、何もせずに溶かしちゃうのはちょっと可哀想かも』


 と、シェフィ。


『うん、そうして上げて欲しい……』


 と、ウィニア。


「……そうなの? 

 そういうことならまぁ使うようにするけども……そもそもとして琥珀を使うってどういうことなの?

 アクセサリーにして身につけていれば良い……とか?」


『それでも良いんだけど、そうじゃなくて、手に持って力を貸してって念じてくれたらそれで良いんだよ。

 そうすると精霊の力が使える感じかな……どんな力が使えるかは琥珀の中の精霊次第。

 たとえばウィニアの琥珀だったら風が起こせるとか、そんな感じかな。

 とりあえず調査が終わった琥珀二つを渡すから、ヴィトー達で上手く使ってあげてよ。

 ……あ、渡すのはサウナ後の瞑想が終わってからにするね、変に汚されたら可哀想だからさ。

 それまでに工房でそれらしく加工しておくよ』


 と、そう言ってシェフィは工房へと……モヤの中へと戻っていく。


 それらしく……か。

 手に持って使うとのことだったから、持ちやすくしてくれる感じだろうか?


 琥珀そのものっていうのも扱いづらいというか、中に精霊の力が込められていることを思うと、粗雑に扱う訳にもいかないから、持ちやすく管理しやすい形にしてもらえると良いかもしれないなぁ。


 ……そして二つの琥珀を使うのはユーラとサープに任せたい所だ。


 俺には猟銃がある訳だし、今回生傷をたくさん作った2人が、少しでも楽に戦えるようになるのならその方が良いはず。


 まぁ、琥珀にどんな力が込められているか次第ではあるのだけども……2人に合う力だったのなら、そうするのが最善なはずだ。


 そうこう考えているうちに砂時計の砂が落ちきって、湖ダイブからの瞑想の時間となる。


 今回かなりの魔獣を倒しはしたが、レベルアップには遠いようで特に変化らしい変化はなく……ただただ気持ちよく瞑想を終了し、サウナを後にする。


 ……と、そこでシェフィがまたモヤから出てきて、金属のケースと言ったら良いのか、枠と言ったら良いのか、とにかく琥珀を金属のフレームで保護するように覆ったものをこちらに手渡してくる。


 そのフレームには紐を通す穴のようなものもあって……これなら腰に下げたりすることで持ち運びをすることが出来そうだ。


「……それで、この琥珀にはどんな力が宿っているの?」


『さぁ? 使えば分かるんじゃない?』


 受け取りながらの俺の問いかけにシェフィはそんな無責任な言葉を返してきて……がっくりと肩を落とした俺はとりあえず使ってみるかと、琥珀を軽く持ち上げ力を込めてみるのだった。


 


お読みいただきありがとうございました。


次回はこの続き、琥珀のあれこれです



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