332話
淫靡な指でシシーは唇に触れる。
「……蛇?」
「たまたま観た映画でね。人は誰しも、心の中に『蛇』がいるんだってさ。それは悪意であったり、罪悪感であったり、様々な実体のないものが蛇に姿を変えている。ギフトビーネ、キミはなにが蛇の形をしているのかな?」
対局とは全く関係のない話をメリッサは展開する。目の前の少女を早くベッドに押し倒したい、という願望は抑え込みながら。
ふぅ、と息を吐き、シシーはやんわりと否定。
「俺は毒蜂だ。蛇ではない。それならあなたにも蛇はいるのかい?」
「いるね。聞きたい?」
「ぜひ」
即答で肯定するメリッサと、興味がさらに増してきたシシー。この空間は、彼女達を中心として外界とは切り離されているようで。駒だけが動くことを許可されている。
トントン、とテーブルを指で叩きながらメリッサは頭に浮かべる。好きなお菓子を買っていい、と言われた際にどれにしようか、何個買おうかとワクワクするように。
「……欲望、だろうね。食欲、睡眠欲、性欲、知識欲、その他もろもろ。キミも似たようなものだが、少し違うね。どちらかというと、なにか『思念』のような。貪欲で凶暴な『なにか』。私にはそれを捉えることはできなさそうだ」
だがそれがいい。研究者はこの世にまだ存在していないものを研究するからこそ生きがいを感じるのであって、未知だからこそ興味が惹かれるのであって。そういう意味では。この子は。極上。
メリッサにとって、シシー・リーフェンシュタールという少女は、性的な目で見る対象。誰でもいい、というわけでは当然ない。ミステリアスで。傲慢で。そんな女性の殻を割りたい。




