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309話

 そう言われると、悩みながらもシシーはひとつ。いや、唯一の勝ち筋を見出す。


「そうだね。今夜の勝負、ルールを変更する、っていうのはどうかな。もちろん、俺だけ駒を多く、とかそういったものじゃない。観戦している側を盛り下げるようなことはしない。まぁ、その判断は任せるが」


「……ルール、ですか?」


 思ったより重大。絶対に自分だけでは判断できないこと、ということはグウェンドリンにもわかった。こんな提案を出されたのは初めて。みんな自分の欲望に忠実なのに。勝ちに貪欲。


 その通りで、勝つための策。そのためにはどんな手でも使うシシー。勝負など。勝てばいいのだから。卑怯だろうとなんだろうと。可能なのであれば使う。その上でギリギリの勝負を。「あぁしておけばよかった」など。そんなもの悔やみきれないのだから。


「例えば『フィッシャーランダム』。別名960。これならば、観ている側もいつもと違って退屈しないんじゃないかな。配置が変わるだけだ。どう置かれるか、というのを聞いてしまうと明らかに俺が有利になってしまうから、そこはなくていい」


 とはいえ一番は自分が楽しむこと。雑な条件はつけない。あくまでルール上は平等に。


 そうきたか、と裁く側のグウェンドリンも感心しきり。たしかにゲーム自体に偏りはなく。逸脱するほどに反則でもない。たぶん。


「ふむふむ。面白そうですね。聞いてみます」


 個人的には彼女を応援したい。やはり新人は大事にしなきゃ。そうやって市場は拡大していくものでしょう? いや、拡大しちゃまずいのかな。まいっか。


 とりあえずやることはやった。あとは神にサイコロを振らせるところまでいけば。今夜のことを想像して、欲が溢れ出すシシー。


「ふふっ、よろしく」


 ララが来てくれてよかった。対局の前に一度、いや、何度でも彼女を——。


 そして今に至る。


「というわけだ。すまないね。下手な芝居を打ってしまった。混乱させたなら申し訳ない。世界最強女性様なら、これくらいは許してくれると思って」


 全く悪びれる様子もなく、シシーは経緯を説明した。もう隠す必要もない。むしろ全て明かした上で向かい合いたい。


 ……これだ。だからコイツはムカつくんだ。なにがどうなっているのかわからない状態のドゥ・ファンには、感情の中で怒りが最も発現している。


「……いつからだ。どこからどこまでが。お前の計画だというんだ?」


 計画、とはなんだ? この状況、仕組んだ、ということ? なぜ? 意味がわからない。自分の勝ちが少しずつ、揺らぎ始める気がした。

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