253話
予想通り。そうなるとルークが攻めやすくなる。ニヤリと笑ってヴァージニーは攻撃の手を強める。
「いや、まだわかんないし、チェスがそこまで人生を賭けるものなのかも。面白かったら目指してみようかなってのはあるけど、安定してないでしょ、たぶん」
今はこうやって楽しいけど。楽しいだけじゃご飯は食べていけない。妹がすごい有名になって、で一緒に頑張っていけたら、なんてことを夢見てみる。姉妹でこういったものが強かったりすると、ちょっとは話題になるのかな。
この子は頭のいい子だから、きっと色々な可能性の将来を見据えているのだろう。安心しつつも、父親としてはもっと頼ってほしいところもある。
「やりたいようにやったらいいし、なにかに役立つだろう。生きていく上で勉強よりも大事なものもあるだろうし」
それよりも。やばい、チェックメイトされる。なんかいい手。ないものか。
「……昔とは言ってることが違う気がする」
元々はやれ学歴だ就職だグランゼコールだ、なんて緩やかに言っていた気もするが、数年でこうなるのか、とヴァージニーはつまらないような面白いような。不満なような愉快なような。それでも、妹がのびのびと生きていけるならなんでもいいか。
もし自分に子供ができたら。両親を参考にするべきなんだと思う。元々はサイディズの親を目指してたってんだから驚き。もし本当にやってたらどうなっていたんだろう。
「むっ」
「勝ち。明日帰ってくる時、なにかスイーツ買ってきて」
険しい表情で負けを認めたくない父親と、勝手にルールを追加する娘。勝負はあっさりと決まった。一応、少し勉強しているヴァージニーに今回は軍配が上がることに。
「そんな約束してたか?」
きっと、最初からなにかを賭けていたら勝負はわからなかった。うん、そうに違いない、とあくまで父親としてはまだ壁でいたい。
そこへドアを開けてリビングに入ってくる人物。
「……眩しい……」
ほとんど閉じた目をこすりながらケティが欠伸をした。なんだか寝れなくて。いや、寝てたけど。起きたということは寝れていないということ、きっと。寝つきはいいほうなのに。
勝ちを確信しているので余裕のヴァージニーは、どんなスイーツを頼もうかに集中力を割いている。もちろん妹のぶんも。
「あぁ、起きたの。寝ときなって」
自分は結構起きちゃうほうだったけど。今はもう、夜遊びとかもしちゃうから、あまり説得力がないことは自分でもわかっている。




