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247話

 妹はディスレクシア、という障害であると聞いた。読み書きが苦手、というかほぼ不可能であること。まだ幼いのだから心配するほどでは、と楽観的に考えるが、両親としては悩みの種でもある。これからさらに学歴というものがより、重要視される時代がくるだろう、と予見していた。


 そうなると、妹は生きづらい世の中になってしまうかもしれない。いっそ、緩やかな国に移住したほうが、などと極端な意見に揺れ動いたりもしていた。大脳基底核と左前上側頭回という領域に異常があるらしい。飲食や音楽などに問題はないが、なぜか文字だけが歪んだり反対に見えたりするらしい。


 先天的な障害であり、完治というものが難しいそうで、トレーニングで地道に誤魔化しながらやっていくしかない。そういった経緯もあり、役に立つかもとルービックキューブをあげた。脳とか使うし、指を動かして悪い影響はないでしょう。


 あげたキューブではあるが、受け取ってヴァージニーはガチャガチャと回転させて揃えに入る。


「一応、揃えるコツはいくつかあるんだけど。ところでさ。配置って幾つくらいあるかわかる?」


 父親の受け売り。少し捻って、数字を問いかける形。もし数字を当てることができたらもう一個あげよう。いらんか。というか当てられる可能性どのくらいよ。


 すると妹は呆けた顔で言葉の意味を噛み砕いたあと、キューブを睨む。指でひとつひとつ、一面の数を数えてみる。


「……九個」


 だから九。そんなわけないことはわかっているので、コミカルに表情を変えながらもう少し考えてみる。かと思いきや、ハタッと止まって上を見上げたり。指を折って数えてみたり。


 そんな妹の姿が愛おしいヴァージニー。適当な数字でいいのに。自分だったらさっさとギブアップしてた。だってそうでしょ? どうせ当たりっこないんだから、答えを聞いちゃったほうがよくない? だからこそ、自分とは違って一生懸命な妹が——


「……一から順番に八までかけて、で、一二も同じようにかけて……で、三を七回、二を一一回……あ、それを半分……かな……」


 姉の顔色を窺うように、自信なさげに妹は答えを導き出した。頭の中で計算はできないけど。書いたりもできないから、結局わからないけど。


「……なんて?」


 時が止まる。今、この子はなにを言った? 掛け算……はもう習ってる年齢だっけ? いやいや、そうじゃなくて。目をキョロキョロとさせてヴァージニーはもう一度。


「なんて言った?」


 確認をとってみる。笑顔がぎこちないかもしれない。とりあえず肺から声を絞り出した。

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