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228話

 納得のいかないらしい彼に対し、テーブルの上を見て色々と考えを巡らせていたサーシャ。思いついたようで、うん、と頷く。


「例えば。魚料理を頼んだのに赤ワインが出てきたらどうする?」


 その矛先はシシー。基本的に魚料理には白ワイン、というのが通説となっている。赤ワインでは渋みが相乗してしまい、味が壊れてしまうため、果汁のみの白の方が合う。


 「俺か?」と巻き込まれたことに不満を覚えつつも、シシーは一応は返す。


「とりあえず食べてから文句を言う」


 勿体無いし、もしかしたらそういうのもアリかもしれない。ないだろうけど。


 その答えにサーシャは満足。彼女なら「なし」と決めつけるのではなく、可能性をしっかりと吟味していると信じていた。


「だよね。基本は合わないもの同士。だけど、相手の奇手に乗るのもチェス」


「なにを言っているのかわからないし、そもそもキミ達はワインを飲んでいい歳ではないだろう」


 少しずつ、本来の冷静さが戻ってきたダヴィド。会話に全くついていけず、逆に落ち着きを取り戻した。そこでもう一度、負けを受け入れる。この二人はまともではない、と。


 最後のトマト。フォークで刺そうとすると、柔らかいその表面がほんの少しだけ抵抗し、そして刺さる。それが彼女の柔肌のようで。サーシャは興奮する。


「僕のチェスは全て、彼女のためにある。なら全てに応えられるようにする必要があるんだ」


 その目線の先には毒蜂。フラストレーションが溜まっていそうな。


「熱い告白だ」


 笑みを浮かべる余裕も出てきた。ダヴィドは帰ったら、もう一度ゼロからチェスを洗い直そうと決める。無論、医者としての職務を全うしながら。


 熱視線。貫かれそうなほどに。痛いほどに。それを感じながら、シシーは目を閉じため息をつく。しかし同時に戦闘態勢。


「うっとおしい。だが面白いならなんでもいい。お前が勝ったら。俺の全てをやる。だから——」


「だから?」


 聞かなくてもわかること。通じているサーシャだが、あえて本人に言わせる。我慢なんてこの毒蜂には似合わない。どこまでも自由で。奔放で。ワガママで。唐突に。


 開いた目に静かな炎を宿して。シシーは宣言する。


「全力でかかってこい」


 こいつの対局と。世界最強に会って。滾らない、と言う方が無理。食事なんかいらないから、さっさと。強いヤツと。

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