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リポグラム短編集〜『あい』を失った女〜  作者: 石河 翠@11/12「縁談広告。お飾りの妻を募集いたします」


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夜の『おちゃ』をあなたと

条件:「お」「ぉ」「ち」「ぢ」「や」「ゃ」を使用してはならない。

 職場(しょくば)にある戸棚(とだな)が、(へん)だと(うわさ)になった。(よる)になるとかりかりかたかた、(みょう)(さわ)がしいらしい。ねずみが(はい)()んだ可能性(かのうせい)もあるそうで、確認(かくにん)してくれないかと上司(じょうし)(たの)まれてしまった。ただでさえサービス(さあびす)残業(ざんぎょう)だというのに、この(うえ)さらに余計(よけい)用事(ようじ)()いつけられるとは、本当(ほんとう)についていない。


 駆除(くじょ)依頼(いらい)するとなると結構(けっこう)金額(きんがく)がかかるらしい。なんとか自力(じりき)(たの)むと()われ、ねずみ()シート(しいと)片手(かたて)恐々(こわごわ)のぞいてみたものの、戸棚(とだな)(なか)には年代物(ねんだいもの)ティーカップ(てぃいかっぷ)がひと(くみ)あるだけだ。動物(どうぶつ)(はい)()めそうな(あな)もないし、(へん)(よご)れもない。


 そういえば職場(しょくば)(ぼう)メーカー(めえかあ)サブスク(さぶすく)導入(どうにゅう)してから、()(もの)各自(かくじ)(つく)ることになっている。会議(かいぎ)などがあっても、用意(ようい)する()(もの)は、ペットボトル(ぺっとぼとる)使(つか)()ての紙コップ(かみこっぷ)がすっかり定番(ていばん)になってしてしまった。便利(べんり)というだけではなく、衛生的(えいせいてき)という意味(いみ)でも(この)まれているのだとか。


 もしかして(かれ)らは戸棚(とだな)(なか)(さび)しさに()えかねていたのだろうか。カップ(かっぷ)()()してみれば、年季(ねんき)(はい)っているがとても上等(じょうとう)代物(しろもの)だった。さっと消毒(しょうどく)使(つか)ってみることにした。とは()っても、同期(どうき)にもらった有名メーカー(ゆうめいめえかあ)ティーバッグ(てぃいばっぐ)利用(りよう)するだけなのだけれど。


 せっかくなのでものをくれた同期本人(どうきほんにん)にも(こえ)をかけてみた。(わたし)(はなし)()いたあと、付喪神(つくもがみ)かなと真面目(まじめ)表情(ひょうじょう)()うものだから、つい()()してしまいそうになる。さすがにこのカップ(かっぷ)は、九十九(きゅうじゅうきゅう)(ねん)居座(いすわ)ってはいないのではなかろうか。


 (ひさ)しぶりに使(つか)われて満足(まんぞく)したのか、戸棚(とだな)(かい)はなくなった。と()いたいところだが、定期的(ていきてき)使(つか)ってあげないとねずみ騒動(そうどう)()(かえ)すようになったため、(わたし)同期(どうき)による(よる)ティーパーティー(てぃいぱあてぃい)(いま)だに(つづ)いている。


 目下(もっか)課題(かだい)は、同期(どうき)転勤(てんきん)()結婚(けっこん)することになったため、今後(こんご)このカップ(かっぷ)(だれ)(たく)すべきかということだったりする。我々(われわれ)同様(どうよう)職場内結婚(しょくばないけっこん)だった上司(じょうし)()るに、このティーカップ(てぃいかっぷ)はなかなか進展(しんてん)しないじれったい男女(だんじょ)(むす)びつける、縁結(えんむす)びの(かみ)さまみたいなものなのだろう。


 その()誰彼(だれかれ)(かま)わず見合(みあ)いを()ってくる田舎(いなか)のばあさんみたいなものかと(かれ)()った途端(とたん)に、ねずみどころか(ぞう)のようにカップ(かっぷ)(あば)れだしたので、(かみ)さまは大層気難(たいそうきむずか)しい貴婦人(きふじん)らしいと判明(はんめい)した。

挿絵(By みてみん)


この作品は、夕立さま(https://mypage.syosetu.com/571414/)のフリーイラストを元にしています。

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