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リポグラム短編集〜『あい』を失った女〜  作者: 石河 翠@11/12「縁談広告。お飾りの妻を募集いたします」


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夜の『さんぽ』に出かけてみれば

条件「さ」「ざ」「ん」「ほ」「ぼ」「ぽ」を使ってはならない。

 (だれ)かに()ばれたような()がして、ふと(そと)()かけた。(こよみ)(うえ)では(はる)とはいえ、まだまだ(よる)()える。日付(ひづけ)()わったばかりの時刻(じこく)ということであれば余計(よけい)にだ。


 ()えかねて、スーパー(すうぱあ)各種(かくしゅ)ミニカップ(みにかっぷ)唐揚(からあ)げを()いこみ、路地裏(ろじうら)(はい)()む。


 ここは(むかし)から()()になっていて、(ふゆ)から(はる)にかけて綺麗(きれい)椿(つばき)(たの)しめるのだ。


 しばらく(いそが)しくて()にくることもなくなっていたが、ちょうどいい機会(きかい)だ。ひとつ花見(はなみ)といこうじゃないか。


 すると、(めず)しくそこにはお(きゃく)がいた。真夜中(まよなか)だというのに、きりりとしたまなじりの和服美女(わふくびじょ)がひとり()ちつくしている。


 たまたまとはいえここは私有地(しゆうち)ストーカー(すとおかあ)間違(まちが)えられてはかなわない。(あわ)てて(まわ)(みぎ)をしようとしたところで、彼女(かのじょ)(つか)まった。


(だれ)にも(かえりみ)られぬまま()れるのは(あわ)れではないか。お(まえ)もゆっくり()ていっておくれ」


 もしかしてこの美女(びじょ)は、()()()(ぬし)()()いなのだろうか。スーパー(すうぱあ)()った()(もの)唐揚(からあ)げをわけあい、椿(つばき)()でることしばし。(かえ)(ぎわ)、せっかくだからと彼女(かのじょ)から椿(つばき)(えだ)ごとわけてもらった。


 翌日(よくじつ)美女(びじょ)との衝撃的(しょうげきてき)出会(であ)いを悪友(あくゆう)(はな)したら、()(どく)そうな(かお)(かる)(かた)(たた)かれた。()まれてこのかた恋人(こいびと)がいないせいで、とうとう妄想(もうそう)まで()()こしたのかと。


 昨日(きのう)()()った()()は、数ヶ月前(すうかげつまえ)()駐車場(ちゅうしゃじょう)になってしまったのだという。それに(ともな)いあの見事(みごと)椿(つばき)も、すべて()られてしまったのだそうだ。


毎年(まいとし)立派(りっぱ)なものだったのに。もったいないな」

「まあ()っぱらいの戯言(たわごと)だとしても、お(まえ)()てくれたのだから、椿(つばき)()()りただろうよ」


 (ゆめ)ではない証拠(しょうこ)に、部屋(へや)(なか)には(たし)かに椿(つばき)(はな)()けられている。無精(ぶしょう)(おとこ)一人暮(ひとりぐ)らしゆえ、使(つか)っているものは華瓶(けびょう)ではなくお銚子(ちょうし)なのだが。


 なぜか、昨日(きのう)出会(であ)った美女(びじょ)(あで)やかな()みが(あたま)から(はな)れなかった。せっかくなのでしばらくぶりに実家(じっか)(もど)って、(にわ)椿(つばき)(えだ)()えてやろうと(おも)う。

あっきコタロウさま(https://mypage.syosetu.com/704944/)のフリーイラストをお借りしております。


この話はこちらのイラストをもとに書いております。


挿絵(By みてみん)

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