『プリンセス』にはなれなくて
条件:「ぷ」「ふ」「ぶ」「り」「ん」「せ」「ぜ」「す」「ず」を使用してはならない。
「大きくなったら、なにになる?」
聞かれたから、答えただけよ。
「お姫さま」って。
小さい頃って、そういうものでしょう。
ケーキをいっぱい食べたいから、ケーキ屋。
お花がきれいだから、花屋。
なれるかどうか、食っていけるかどうか。知ったことじゃないわ。
そうしたら、彼が言ったの。
「僕が叶えてあげる」って。
神様に会いたいと願ったところで、叶うわけがない。まさか捕まえてくるわけにもいかないしね。
それと同じよ。私に「お姫さま」という称号を与えるために、彼が王子さまになるとは思わないわ。
あらいやだ。彼ったら王子さまを飛び越えて王さまになったのよね。結局、私はお姫さまになれてないじゃない。
もう、またため息。しみったれた空気になるからやめてよ。
うるさいわね。はいはい、わかってるって。私は悪くないとは言わないわ。
ええ、誰もが私の首が落ちるのを楽しみにしている。能無しの王妃でもそれくらいわかるのよ。
……寂しがらないで、待っててね。馬鹿みたいに真面目で、嘘をつかないあなたを愛しているから、一緒に地獄に落ちてあげる。




