降りやまぬ『ゆき』は、『うそ』を覆い隠すがごとく
条件:「ゆ」「ゅ」「き」「ぎ」「う」「そ」「ぞ」を使用してはならない
あとがき部分に、キャラクター紹介があります。
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すぐに戻ってくるよ。
少しだけ笑って出ていくあなたの横顔を、わたくしは毎夜夢幻に見る。朝になればあなたの声が遠くなるから、ずっと夜のままがいい。
御簾を上げた向かいに見えるは一面銀の世界。止むことのない真夏の風花がすべてをおおっていく。あなたの気配はあちらこちらに残っているにもかかわらず。
微かに響くは、風の音。いいえ、あれはあなたの雄叫び。鬼を屠るあなたの声。
こんな鄙におらずとも。都へ戻っておいで。
わたくしの元へ届くのは、身勝手な文ばかり。鬼への贄として、わたくしをここへ送り込んだのは誰だったかしら。かつて姫と呼ばれ、かしずかれていたとは思えない自身の身なりに笑いが出た。
わたくしが待っているのは、あなただけ。わたくしを守るために姿を変えたあなたは、何も恥じることなどないのに。なぜあなたはわたくしを置いていってしまったの。
ああ、六花が降りつもる。
物思いにふけるわたくしの隣で、乳母が御簾を下ろす。この白さは体に毒だから。この地に居続ければ、わたくしもいつかあなたと同じ鬼になれるのかしら。
わたくしの足がもっと速ければ。わたくしの体がもっと強ければ。あなたと一緒に、わたくしもこの青天の下を駆け抜けるのに。こぼれた涙は、凍りつくばかり。あなたには決して届かない。
まったく、姫は寂しがりやさんだな。
あなたはいつもみたいに頭を撫でてくれるのかしら。一番最初におかえりなさいと言いたいから。わたくしはこの部屋で、あなたの帰りを待っている。
こちらの作品は、あっきコタロウさんのイラストからイメージして執筆しました。作品内に書いていない裏設定もありますので、ご不要の方、作品のイメージの変化が苦手な方は、お手数ですがあとがきは読まずに、ブラウザバックしてください。
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姫
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鬼の生贄になるために、都から送り込まれた貴族の娘。
菫色の瞳は鬼が好むと言われている。
実は現代文明が核で滅んだ後の世界。白い雪に触れると普通は死ぬ。適応者(菫色の瞳)の場合にはミュータント化する。
(イラストはあっきコタロウ様)
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あなた
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文中では名前のない、姫の乳兄弟。
姫が鬼の生贄になるのを阻止するため、身代わりとなった。
姫の代わりに連れていかれた先で、この世界の真実を知る。目下、鬼の総大将とともにこの国から独立すべく暗躍中。
(イラストはあっきコタロウ様)




