『カメレオン』でも許して
にける♥️にけら様に捧ぐ
条件:「か」「が」「め」「れ」「お」「ん」を使用してはならない
いくら騒々しい教室にいても、真っ先に聞こえてくるのは君の優しい声。ふわりと甘いその声にとろけそうになり、昨日よりもまた君を好きになったことを知る。
「ねえ宿題やった?」
何気ない話題なのに、君の紡ぐ言葉だというだけでどきりとする。一秒でも良い。少しでも君の側にいたい。そう祈る弱さゆえに、この気持ちを伝えることなどできなくて。君の隣はあまりに居心地良過ぎて、時たま酷く苦しくなる。
君にだけは悟らせないように、周囲の様子にあわせて、必死に擬態する。笑うのも、泣くのも、すべては君次第。ここにいるのは、君の望む理想の友達。
どうせ好きだよと伝えたところで、君は盛大に笑うだけ。わたしもだよ、そう言って無邪気に抱きついてくることだってありうる。その罪の酷たらしさも知らないで。
君の言う好きとは、まるで異なる恋心には、絶対に気付いてもらえない。ねえ、知ってる? 毎年クラスで友チョコを配っているのは、君の手作りチョコを堂々ともらいたいゆえの苦肉の策だってこと。
決定的な言葉さえ言わないなら、永久に友達でいることもできるはず。真っ白な衣装で幸せそうに微笑む君の前で、友達の代表として祝辞を述べる未来も、きっとそう先のことではない。
「次の日曜日にはね、デートなの! 制服じゃあいけないし、一緒に洋服選ぶの手伝って」
君の恋バナに相槌をうちつつ、そっと窓をみる。大丈夫、大丈夫。いつものように楽しそうに笑えているはずだ、きっと。
「やだ、次は体育だっけ? 早く用意しないと遅刻するよ」
そう言いつつするりと手を繋いでくる君。どこをどう見ても、一緒に更衣室へ行くのは当たり前のごく普通の友達同士。
服を脱ぐ君の隣、あまりに無防備な膨らみに頭をくらくらさせた。欲望を振り払いたくてそっと瞼を閉じ、ゆっくりと息を吸い込む。
こちらの心などいざ知らず、空は腹立たしいほどに美しく澄み渡っているのだろう。




