『ほね』までとろける熱帯夜
この作品は、なななん様主催の「夏の涼」企画に参加しております。
条件:「ほ」、「ね」、「ぼ」を用いてはならない。
寒い。
寒いってばよ。
いつもはちょっと汗ばむくらいなのに、ふと目を覚ませば鳥肌を立てて震えている。時計の時刻は、ようやく午前2時を過ぎた辺り。一体これはどうした?
まさかと思い、エアコンの設定温度を見てみる。リモコンに表示されていたのは、驚きの18度。そりゃあいくらタオルケットにくるまったところで寒いはずだ。普段はエコモードとやらで28度なのだから、その差は10度。風邪でもひかせるつもりか。
大体こういう電力の無駄遣いが、シロクマの住処を奪ったり、風光明媚な南の島を海の底に沈めることに繋がるんだよ。何より、愛しの彼女の前で腹痛でトイレに駆け込むとか格好悪過ぎだろ。
元の設定に戻そうとして気がついた。いつもは暑苦しいだの、鬱陶しいだの言って、ツンツン逃げてばかりの君が、俺の身体に脚を絡めている。いい夢を見ているのだろう、君があどけなく、にへらと笑った。
「……くん、だいしゅき」
おいおいちょっと待ってくれ、だいしゅきって、ちょっと!
いつもみたいに、バーカとか言わないの? こんな風に甘えられたのって、どれくらいぶりだっけ? それなのに、あんまり無邪気に笑ってるから、襲うに襲えないじゃないか! 鬼畜か!
幸せそうに微睡む君の隣で、涙目の俺は、ただひとり真夏の我慢大会を始める。




