薔薇の嘲笑
久しぶりです皆さん感想どうも、テストが間近で死の宣告を受けているようにしか思えない今日この頃です。
棘。
棘が螺旋を描く事で作られた苦痛の塔。
その最上階の中央で薔薇の華のような美しさを持った女性が棘に腰掛けていた。
その女性は所々に刃があしらわれた深緑色のドレスに新血のような深紅の淡い輝きを放つ髪をしていた。
「ふーん……魔水晶のとこの魔王が動き出したのねぇ……」
女性は目の前に生えているこの塔に不釣り合いな名前もない質素で小さな花に問い掛けた。
当然、花は何も答えない。
「1000年も沈黙を護ってきたあの森の魔王が動き出すなんて不思議ねぇ…あなたはどう思うかしらぁ?」
だが女性は花に言葉を投げかけ続けた。
「そう、あなたも解らないのねぇ………それならぁ…」
そう言うと彼女はゆっくりと立ち上がった。
「ちょっと行ってこようかしらぁ?」
次の瞬間、その場には女性も小さな花も消え、ただ棘だけが残された。
「ハクション!」
「どうしました師匠?風邪ですか?」
「いや、それはないだろ」
魔王が街で病原菌にヤられたら今頃街中、即死者続出だ。
誰かが俺の噂でもしたか?いや、あんなの迷信だろ。
ちなみに現在、リリウムちゃんを膝に乗せ授業を受けている真っ最中だ。
今日は魔法の勉強らしい。
「えへへ、チィちゃんくすぐったいですよ」
「チィ!」
………リリウムちゃんは服のなかに入ってこようとする小鳥(エセ淑女魔王)と戯れている。
このアマ…俺が授業中手出しできないことを逆手に取りやがって…。
「もう、チィちゃんは甘えん坊さんですね」
甘えん坊って……なぜそのアホの丸出しの性欲に気づかないリリウムちゃん………。
「さて…」
俺はリリウムちゃんとチィちゃんを家に残し、街の外の人目につかない森の一角に来ていた。
目の前にはバカでかいカマキリのクロロがいる。
「お前、修行に行ってこい、というか魔王になるまで帰ってくるな」
無理難題を突きつけてみた。
「キ、キシャァ…?」
眼に見えてクロロが狼狽えた。
"ムリです"と、言っているように見えなくもない。
「つべこべ言わずさっさと逝け!」
「ギ!?シャァ!!!」
クロロの胴体をドロップキックで蹴り飛ばすと50m程の巨体はまだ日の高い空の星になった。
え?クロロに対してバイオレンス過ぎる?良いんだよそもそも俺、虫嫌いだし。
まあ、あれぐらいでアイツは死なない、スキル《超再生能力》持ちだしな。
俺は巾着からダンダリアンの書を取り出し、ペラペラとページを捲ってあるページで手を止めた。
《超再生能力》
自然回復スキルの最上級スキル。
身体と魔力を急速に回復し、例え小さな肉片しか残っていなくとも瞬時に再生する。
最強レベルのスキルだが基本的に低ランクのモンスターしか持っていない、上にこのスキルは再生能力を急激に上げるため毒の回りが数千倍速く、毒が効きすぎるという弱点もある。
が、抗体ができるまでも異常に速く、それまで生命が持てば即座にその毒の耐性がつくのでこのスキル持ちは猛毒でさっさと殺すか跡形もなく消し飛ばすことをオススメする。
尚、このスキル持ちの魔王は未だ確認されていない。
スキル持ちモンスター例:
Sランク:グリム・リーパー
Fランク:リバイバルフラワー
Fランク:ブラッディースライム
など
これのせいで最初に剣で微塵切りにした時も直ぐに再生してとてもキモかった。
そして何をしても死なないのでクロロに対する雑な扱いが始まったのだ。
「ふーん…便利ねぇ、その魔道具ぅ」
「だろう?結構役に立つんだよ………ん?誰だお前?」
いつの間にか後ろから緑のドレスを着た赤い髪の女性が覗きこんでいた。
「それはそれとしてあなた綺麗ねぇ…」
彼女はうっとりした顔をした。
ゾクゾクゾクッ!?
この感覚はいつぞやの風呂場の時と同じ感覚!?
「あなたぁ、私のモノになる気はないぃ?」
ひいぃぃ!!?変態だぁ!!!!
「ごめん被る!」
俺は変態から即座に(リリウムちゃんの)自宅逃亡した。
彼女が逃走するのを少し残念そうに彼女は見ていた。
「あらぁ?つれないわねぇ、残念ねぇ、良いわ今度は自分から来てくれるものねぇ」
そう言うと木陰に移動して指を振るうと草が退き、覆われていたものが現れた。
そしてそれをうっとりしながら抱えあげた。
「うふふふふぅ、可愛いわねぇ」
「すー…すー…」
それは小さく寝息を立てるリリウムだった。
「待ってるわよぉ…私のモノになるのをねぇ…私好みの綺麗な魔王さん♪」
そう言うと彼女、南部の魔宮、棘の山の頂の塔に住まうSSSランク魔王、"混沌妖薔薇"はリリウムを片手で抱き抱えながらゆっくりと自分の住みかへ、鼻歌混じりに歩き出した。
皆さん…これが正しい魔王です(がくがくぶるぶる)




