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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
猫の国の内戦(中編)
121/136

ミャウシア北岸上陸作戦3


ニェボロスカ基地周辺の丘


既に夜が明けて地球のそれとは違う太陽が大地を照らし始めていた。

チェイナリンは草の上で仰向けになって目を瞑っていた。


すると乗ってきたバイクのサイドカーの座席の上にドサッと置おかれた設置型の地球製の無線機が無線信号を拾って音声を流す。


『こちらウー。隊長、応答願います』


距離があるのでノイズ多めの音声だがウーの声だった。


チェイナリンは目を開けて直ぐに上半身を起こす。

少しだけぬぼっとした後、バイクまで歩いて無線機のマイクを手に取る。


「こちら、フニャン。どうぞ」


『こちら、ウーです。報告があります。先ほどNATOが大規模な軍事行動を始めたようです。その他別件も隊長不在中に入りましたので至急戻ってください』


「了解。通信終る」


チェイナリンはマイクを無線機に戻すとバイクにまだがりエンジンを掛ける。

そしてエンジンを吹かしてその場を走り去った。



海岸から沖合2km程度の洋上


ドオオオン!と轟音を立ててミャウシア政府軍艦隊から艦砲射撃が断続的に行われていた。

ポケット戦艦のようなウーラ級重巡洋艦1隻を筆頭に数十隻の巡洋艦や駆逐艦が錨を下ろして停泊しながら展開している。


「修正指示。左に10ミル、仰角プラス1ミル」  


駆逐艦に搭載された121mm単装砲の砲口を指示された方位に修正する。

そして甲板傾斜角が0度になった時、電気回路のスイッチが動作して砲弾の撃発が行われる。

旧日本海軍ではこの点は傾斜計と睨めっこしながらの手動だった。

ちなみにミャウシア海軍ではフリゲートを除いて駆逐艦に搭載されている121mm砲は55口径砲の長砲身が主流であったため、射程が20km半ばと長距離砲撃は得意だ。


海岸では揚陸艦隊からLCAC-1 エア・クッション揚陸艇 いわゆるホバークラフトが出ては戻ってを繰り返しながら車両を地雷除去作業が完了した区画の浜辺に陸揚げする。

M1A1エイブラムス戦車が履帯音とガスタービン音を轟かせながら斜面を登る。

海兵隊のM1A1エイブラムス戦車 4両やLAV-25歩兵戦闘車15両が揃うと海兵遠征部隊の主力部隊は内陸側に防衛線を構築している先発部隊に合流するために移動を開始する。


内陸方面ではNATOを海岸から叩き出すために反政府軍が部隊を繰り出して攻勢に出てはいるものの、政府軍艦隊がNATO軍の指揮のもとで非常に正確な艦砲射撃を実施していて中々前進が思うようにいかなかった。

中には敵の本部中隊がウーラ級重巡洋艦の275mm砲6門による斉射をもろに受けて壊滅するなど散々だ。


上陸したアメリカ海兵隊もM777 155mm砲の砲撃陣地を構築して接近してくる反政府軍を阻止するために断続的に砲撃を加える。

敵はRQ-21無人偵察機によって常に観測されているので砲兵隊や艦砲による砲爆撃に苦しまざるを得ない。


現時点の状況として橋頭保である海岸の保持が遂行されている。

内陸へ攻め込むには兵力も軍事物資も不足しているからだ。

MTVRトラックやカーゴをけん引するハンヴィーが上陸しては弾薬や物資、燃料を集積所に下ろした。

アメリカ海海兵隊を主力とする上陸部隊は戦力が整い次第、陸軍の橋頭保を確保するために次の作戦に移ることになる。



海岸に設置された指揮所


テントが張られ多数の機材が置かれたアメリカ海兵隊を主力とする野戦司令部が設置されていた。


『こちらアルファ21。敵部隊を視認』


『こちらブラボー中隊。防衛線に敵部隊が到達し、交戦中。砲撃支援を要請する』


『こちら、ブラボー46。迫撃砲の弾薬が不足している。120mm迫撃砲弾の補充を至急要請する』


『工兵隊がポイントB2からC1までの地雷原に導爆線で突破口をあけた』


無線交信が忙しい様子だった。


そこへ橋頭保を確保したばかりだというのに憲兵隊も現れた。


「MPです。捕虜の管理を引き継ぎたい」


「了解しました。こちらです」


これはミャウシア兵捕虜の扱いが厳格に管理されることになっていたからだった。

というのも先の欧州軍による地上戦によって生じたミャウシア兵捕虜に対する性的暴行が尋常ではない件数に上っていた。

逮捕者も多数出たことから軍紀の乱れを懸念して部隊と捕虜を早めに隔離する必要に迫られたのが措置の理由だ。


憲兵隊は捕虜を集めている場所に入るが早々に容姿端麗なミャウシア人女性捕虜数人を取り囲んで絡んでいる米軍兵士たちと出くわした。

兵士たちは遠方にいるMPを視認するなり「やべっ」と言わんばかりにそそくさと持ち場に逃げるように解散した。

MPは呆れるように兵士を見逃した。

憲兵は戦死したミャウシア兵の仏の入った遺体袋の山もイタズラされり持ち出されないように管理することになる。

本来なら不要な労力によって後方の負担が増していた。


場面は指揮所に戻る。


「准将。現在、我が軍の部隊の上陸は80%完了してます。しかし、物資は50%。橋頭保に配置するミャウシア連邦軍の上陸は始まったばかりですので、敵の防衛線の突破とミゥボロスク飛行場の占領は早くて明日の早朝から可能になる見込みです」


「予定より少し遅れているが想定の範囲だろう。これから我々は地上部隊としてミゥボロスク飛行場に進軍する。兵站連隊を至急ここに配置。防衛線に張り付いている戦車隊を1800までにこの地点に集結させろ。残りの部隊も後続のミャウシア兵と2000までに交代させて、この地点に2200までに集結。作戦開始一時間前まで補給整備と休息を取らせ、作戦開始は明日の0800とする。先行する空挺旅団と遠征隊が飛行場を占領し、我々装甲部隊が敵の防衛線を突破して飛行場の友軍と2日目、遅くとも3日目に合流する。成功すればティニャノナスク市を包囲する形になる」


「了解」


アルーム平原の中央を流れる大河の河口の港湾都市ティニャノナスクを攻略し、主力部隊である陸軍を上陸させるつもりのようだ。


一方、橋頭保周辺の前線では橋頭保の保持やこれから行われる機甲戦によって伸びた後方線の防衛を担当するミャウシア政府軍の歩兵部隊が続々と到着し始めていた。

後方からやって来たMTVRの荷台にぎっしりと猫耳の兵士が乗せられていて、停車後に続々とボルトアクション小銃を雑に握りながら降りる。


「第312師団所属、第2旅団の第1大隊であります」


後続としてやって来たミャウシア兵の指揮官がアメリカ軍の現場指揮官に敬礼して挨拶する。


後続部隊の兵士たちは従来のミャウシア兵の兵装や軍服とはいくつか違うところがあった。

ヘルメットと戦闘服、軍靴は従来通りなのだが、ベルトやサスペンダーに取り付けられるマガジンポーチが廃され、タクティカルベストが新たに支給されて着用していたのだ。


さらに分隊支援火器のようにM4カービンやM249が、対戦車携行火器としてM72 LAWなどがかなり少数ではあるが一部の兵士に支給されていた。

また、通常のミャウシア軍の編成よりDP28似の銃軽機関銃やつい最近開発量産されたばかりのRP-46に似た軽機関銃が多めに装備され、PPSh-41似の短機関銃は数を減らしていた。

これはアルーム平原では100m以上の中距離戦が多くなるだろうことと今後は連射火器が主流になることを念頭に置いていたからだった。


無線に関しても、軍用の携行式無線機も大隊単位で1台程度、通信兵に支給されていたし、中隊や一部小隊にも安価な民間用の長距離トランシーバーが支給されていた。

第二次世界大戦の兵士らしかった見た目が途上国の兵隊レベルにクラスアップしていた。


これに関してだが、ミャウシア兵達の姿は時間が経つごとにどんどん近代化してくのが見られることになる。

ヘルメットや戦闘服、軍靴、ベスト、ボルトアクションライフルが独自開発の自動小銃へと切り替わるなど順次更新されるのだ。


政府軍兵士たちはアメリカ軍と交代して橋頭保の防衛にあたり始めた。

指揮系統上は政府軍から切り離されていて、NATO軍の司令部や前線指揮官の指示で動く。

過去の軍事衝突で捕虜となったミャウシア兵十数万の内、わずかながら英語をある程度解することが可能になった復員兵なども活用するなどしている。


戦いは内陸へと移っていく。


















おまけ


前話の翌日には話が書けてましたけど変な絵を貼りたかったので遅れました

スイマセン


R-17だからいけるいける(根拠はない)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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