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大切な幼馴染と聖女を寝取られた少年、地獄の底で最強の《侍》と出会う  作者: 剣竜
第二章 勇者キルヴァへの復讐

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第三十一話 聖女の報告

 

 キルヴァとの決闘を終えたコロナ。

 ノリンとキルヴァ、二人は倒れた。

 しかし最後のミーフィア、彼女を逃がしてしまったのだ。

 追放の魔法、それを自らに使う、という禁じ手で…


「クソッ…!俺がついていながら…!あの女ぁッ!」


 コロナたちは拠点としていたリブフートの酒場へと戻った。

 革命軍に協力している医師を呼び、コロナの治療をしてもらう。

 その傍ら、酒場にてカケスギが酒を飲んでいた。

 まだ開業時間前だが、宿として使っている彼らは特別。

 そのため実質的な貸切状態になっていた。

 先ほどの戦いでミーフィアを逃がしたカケスギ。

 そのことに強い失態の責任を感じているようだった。


「仕方ないわよ、あんなの誰も予想できないって」


「ロープで縛ってあったんだ。その時点で使える技はある程度限られていた。予測はできたはずだったんだ…」


 ルーメの言葉を聞きつつも、やはり強い責任を感じている。

 確かに両手が封じられていた時点である程度の攻撃魔法は使用できない。

 その時点である程度の魔法の種類は判別できたのだ。


「くぅぅ…」


「か、カケスギ…」


 やけ酒をのむカケスギ。

 その前に身体中に包帯を巻いたコロナが現れた。

 あれほどの傷を受けているにも関わらず、特別な処置はいらなかったらしい。

 カケスギが決闘後に傷の治療をしたおかげ、だろう。


「コロナ、もういいのか?」


「よくは無い。けど少し動くくらいはできるさ」


 コロナとしては、カケスギに自分を責めてほしくない。

 そう考えているのだろう。

 奥で寝ているソミィがその姿を見たら、彼女が悲しむ。

 そう言う意味も込めている。


「そうか…」


「…あまり気に病まないでくれ」


「この俺のプライドが許さん」


「そうか…」


「ぐッ…」


 そう言って再び酒を飲むカケスギ。

 いつにも無く機嫌が悪い。

 とはいえ、全て自分の不甲斐なさに怒ってのモノ。

 他人に当たるわけでは無い。

 と、そこに…


「失礼するよ」


 そう言ってとある人物が店内に入ってきた。

 小奇麗な黒いスーツにマント。

 仮面舞踏会にでも出るかのような派手なバラの花びらの仮面。

 男にも関わらず、腰まで届くような灰色の長い髪。

 そして薄い薔薇の香りの香水。

 いかにも怪しさ全開満点な男。

 そしてその付き人のボロのローブを纏った女。


「お前は…!」


「久しぶり、コロナくん」


「西方の生花商売業者のローザ!」


「ふふ…」


 以前、コロナとルーメは彼に出会ったことがある。

 見るからに怪しい男ではあるが、金はあるらしくその方面では信頼できる。

 革命軍の重要なパトロンの一人だ。

 だが…


「ふざけた姿をしやがって…」


「ん?」


 酔ったカケスギがローザにそう言った。

 しかしそれは文句をつけているわけでは無い。


「あの時、激流に落ちたあの落ちたあの騎士か。仮面など付けて偉そうに」


「え!?」


 その言葉に驚いたのはコロナだった。

 激流に落ちた騎士。

 それはミッドシティに訪れる前に戦ったあの男。

 レイスのことだ。


「ふふふ。さすがはお侍様。慧眼の持ち主だ」


 そう言ってローザがその顔に付けていた仮面を外す。

 仮面とウィッグの下から現れたその素顔。

 それは確かに、あのレイスという騎士と同じものだった。

 カケスギの言った通りだった。


「あ、お前は!?」


「改めまして久しぶり。コロナ」


「あの時の騎士!なぜお前が…?」


 あの時、激流に呑まれたはずの騎士レイス。

 それが何故、西方の生花商売業者のローザと名乗っているのか。

 コロナにはそれがわからなかった。


「できる限り簡潔に説明しよう…」


 自分が革命軍側の人間であること。

 オリオンとも知り合いであること。

 先ほどの『西方の生花商売業者のローザ』とは、正体を隠すための偽りの顔であること。

 その他を全て話した。


「そしてこっちが…」


「同じく、革命軍のパンコ・シヨークっす。よろしく」


 ボロを纏った少女、パンコがそう言った。

 なるほど、『ローザとその付き人』、という設定で表では行動しているのだろう。

 そのパンコの手には大きな金属製の入れ物を持っている。

 それと…


「あ!それはキルヴァの…」


「そう、聖剣だ。僕たちが回収しておいた」


 そう言って酒場の席に座るレイスとパンコ。

 そのレイスの手に握られていたのは、キルヴァが持っていた聖剣だった。

 戦いに夢中で回収を忘れていたが、確かにこれは重要な物だ。

 そのまま無くすわけにはいかない。


「その金属の入れ物はなんだ?」


「これか。これは…」


「キルヴァの首っすよ。レイスとウチが回収したっす」


「ん?」


「生首っすよ」


「え!?」


 そのパンコの言葉に驚きを隠せぬコロナ。

 確かにあの時、キルヴァは致命傷を負った。

 その首を狩るのは容易いだろう。

 しかし、改めてその首が入れ物の中にある。

 そう言われると、どうも妙な感情になってしまう。


「ど~れ、見せてみろ、首」


 そう言いながらカケスギが蓋をあける。

 暫しそのまま覗き、中の物を手で触る。

 そしてコロナに言った。


「首だ。本物」


「えぇ…」


「痛まない様に薬品を使ってある。しばらくは晒し首だ」


 淡々と言うレイス。

 聖剣は権力の証。

 しかし聖剣を奪っただけでは、革命の狼煙としては不十分。

 罪人であるキルヴァを晒し首とし、それを見せしめとすることで現体制への反逆の証となる。

 そのためには、コロナの攻撃を受けて陥没し、ボロボロになった『顔』では不十分。

 首が『勇者キルヴァ』であるとはっきりわかる状態で晒し首にすること。

 レイスはそう説明した。


「それを革命の狼煙とし、一気にその輪を広げていくつもりだ」


「私の新聞を仕入れるっていうのも…」


「そう。それとほぼ同時に国中に新聞をばら撒く。『ローザ』としてのルートやその他のルートを使ってな」


 このレイスという男。

 物静かな物腰からは想像できぬ、大胆な行動をする男だ。

 そしてその傍らのパンコ。

 彼女が単なる付き人などでは無い、というのは初対面のコロナたちでもすぐにわかった。


「…それで、お前たちはなぜ俺たちの元に来た?」


 カケスギが単刀直入に言った。

 単にキルヴァの首と聖剣を自慢しに来た、という訳ではないだろう。

 この二人には何らかの目的があるはずだ。


「とりあえずはこの首と聖剣の報告。それと…」


 彼が懐から取り出したもの。

 それは一通の手紙だった。

 コロナにそれを渡す。


「我が友、オリオンからの手紙だ」


 オリオンのサインの書かれた封筒。

 それを受け取るコロナ。

 出来ればすぐにでも開けたいが、とりあえずここは抑えた。


「これから国は徐々に変わり出す。少し世の中は荒れるかもしれないな」


「いろいろと起こるかもしれないっす」


「じゃあな。時間をとらせて申し訳ない。失礼するよ…」


 そうとだけ言い残し、レイスとパンコは去っていった。

 不思議な二人だった。

 しかしその言葉にはどこか、非常に強い説得力もあった。

 あの二人とは、また会うことになるだろう…







 --------------------



 一方その頃。

 首都クロスのキルヴァの屋敷にて。

 追放の魔法でここまで戻ってきたミーフィア。

 着地の際に失敗し身体を大きく打ち付けたが、大きなダメージでは無い。

 使用人にカケスギのロープを切らせ、ある命令をしていた。


「すぐに馬車を用意してください」


「わかりました」


「それと…」


 ミーフィアはカケスギに折られた左腕を見せ、医者を呼ぶよう指示。

 それと、屋敷内の財産を可能な限り別の場所へ移すように指示をした。

 できれば王城の宝物庫が好ましいが、それは難しい。

 どこかの蔵を借り、そこに入れておくように言う。


「他の者にばれない様にね」


「は、はぁ。しかし何故…?」


「いいから!」


 高価な彫刻や大きな像などはあえてそのままにしておいた。

 貴金属や宝石、金などのかさばらぬ物のみを移す。

 指示を出す間、自分の魔法で骨折を簡易的に治療しつつ包帯で固定する。

 医者が来るまでの間ならば、この程度の応急処置で十分だ。

 と、そこにちょうど馬車の準備ができたとの知らせが入った。

 急いで馬車に飛び乗るミーフィア。


「すぐに王城へ向かってちょうだい!」


「王城へ?しかし何故…?」


「報告したいことがあるの…」




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