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大切な幼馴染と聖女を寝取られた少年、地獄の底で最強の《侍》と出会う  作者: 剣竜
第一章 再起への道のり

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第十一話 魔物狩りにいこう

コロナ 14→17


キルヴァ 14→17

ノリン 14→17

ミーフィア 15→18


カケスギ 23

ソミィ 9


オリオン 24

ルーメ 19


レイス 18

パンコ 16


黒魔術師の少女 13


キャラクターの年齢はだいたいこんな感じです。

 

 物資の調達を終えたコロナたち。

 このミッドタウンという町は寂れてはいるものの、居心地はいい。

 急ぐ旅でもないのでしばらくはここに滞在することにした。

 その間の宿はオリオンが提供してくれた。


「安宿で申し訳ない」


「雨風さえしのげればそれでいい」


 家具も何もない、必要最低限の設備のみがある安宿。

 毛布と小さなテーブルがあるだけの部屋。

 とはいえ普段の野宿のことを考えればこれでも十分すぎるほどだ。

 食事も少しはもらえる。

 無料でこれらのサービスを受けることができるのだからありがたい。


「まあ、ゆっくりしていってくれよ」


 そう言い残し、オリオンは去っていった。

 革命軍のリーダーとしての活動もあるが、彼にも普段の生活がある。

 仕事をしなければ生きていけぬのだ。


「さて、俺たちも行くか」


「あの討伐の依頼か、カケスギ?」


「ああ」


 カケスギが依頼を受けた仕事。

 それはこの町の寂れたギルドで見かけたとある魔物の討伐だ。

 山を一つ越えた先にある旧採石場跡。

 そこを根城にする二体の大型肉食獣型魔物を倒しに行こうというのだ。

 他の仕事は採取系の物だったり、熊や草食獣の狩猟がほとんどだった。

 それだけに、二体の大型肉食獣型魔物の討伐の依頼のみがとても浮いていた。


「季節の移り目に山を下り、下の町を襲うらしい。気を付けろよコロナ」


「ああ。ソミィはここに残っていてくれ。危ないからな」


「…一緒にいっちゃだめ?」


 置いて行かれる。

 そう考えたソミィが泣きそうな声でそう言った。

 その彼女の頭をカケスギが軽く撫で落ち着かせる。


「何かあったらあのオリオンという男に言え。少なくとも悪人ではなさそうだ」


「うん」


「金も少しなら使ってもいい。メシくらい自分で食えるよな」


「うん!」


「刀、持っていくぞ」


 荷物の中から一本の刀を取り出すカケスギ。

 彼が刀を手にするのを見るのは珍しい。

 普段は刀など使うこと無く敵対者を倒してしまうからだ。


「数日かかるかもしれん。その間、大人しくしていてくれ」


「じゃ、行ってくるぜ」


「いってらっしゃーい!」


 そう言ってオリオンの手配した宿を出るコロナたち。

 町を出て、山を一つ越えた先にある旧採石場跡へとむかう。

 道中、以前の仮面や騎士レイスのような者が現れぬとも限らない。

 …と考えていたが、特に襲撃をかけてくる者はいなかった。


「この前みたいな敵襲はなさそうだな」


「退屈だな」


 半日の時間をかけ、山を登る二人。

 獣道や古びた道を進み、なるべく早めの到着を目指す。

 もし道を一度見失ってしまえば確実に迷ってしまうだろう。

 持ってきた水もそろそろ限界が近づいている。


「コロナ、そこの川で水汲んでくるぞ」


「ああ、頼むよ」


 持ってきた水筒に水を入れ直しさらに先へと進む。

 常人ならばすぐに果ててしまうような環境だが、それを我慢しつつさらに先へと進んでいく二人。

 そして歩いているうちに、二人は妙な場所へと出た。

 他の場所とは違い、古びた石畳のある開けた場所だ。

 建物らしき場所もあるにはある。

 だが人のいる気配は全く無い。


「恐らくここだな」


「ああ、そうだなカケスギ」


 カケスギの予想は的中した。

 次の瞬間、雄叫びと共に、大型肉食獣型魔物が二人に飛び掛かってきた。

 二体と聞いてはいたが、現れたのは一匹だけ。

 もう一体はどこかに隠れているのだろうか?


「早速来たか…」


『ガゥゥゥゥ…!グゥゥゥ…!』


「さて、どうするか?」


 そう言いながら大型肉食獣型魔物に狙いを定めるカケスギ。

 動く速度は並みの動物などとは比べ物にならないほどに速い。

 その見た目は狼や山犬にも似ている。

 だが大きさはそれとは比べ物にならぬほど大きい。

 魔物であるということを忘れさせるような、美しくしなやかな動き。


『ガアァァァ!』


「てあっ!」


 コロナが叫ぶと同時に跳び上がり、大型肉食獣型魔物の攻撃を避ける。

 カケスギも避けて近くの岩の上に飛び移る。

 と、その時…


「なッ…」


『ガグゥゥゥ…!』


「速…!」


 その後ろから現れたのは二体目の大型肉食獣型魔物だった。

 二人がそれぞれ真逆の方向へと移動することで、なんとか攻撃を回避できた。

 だが、それで攻撃の手を止める大型肉食獣型魔物では無かった。

 それぞれ逆の方向へと避けた二人を追う二体。


「カケスギ、そっちは任せた!」


 そのコロナの言葉を聞き、黙って頷くカケスギ。

 混戦を避けるため、二人で距離をとる。

 大型肉食獣型魔物は身体中から暗黒の魔力を放っている。

 その紅く鋭い眼光。

 それはまるで吸い込まれそうなほどに深い色をしていた。


「そらッ!どうだ」


 小手調べと言わんばかりに、コロナはそのままの体勢から衝撃波を放つ。

 大型肉食獣型魔物に攻撃を仕掛け、どれほどの手ごたえがあるのかを調べてみる。

 結論からいくと、あまり通用しなかったといえる。

 この魔物が普通の魔物と違う点、それは『鎧のような外殻』にある。

 甲殻類、あるいは甲虫か…

 それに似た外殻により軽いダメージはうけなくなっているのだ。


『グゥゥ…!』


「やっぱりな」


 ある程度は想定済みだった。

 あの外殻相手に衝撃波程度のダメージが通るとは最初から考えてなどいない。

 とはいえ、同じ個所に再び攻撃を当てることができればダメージを通すことはできるかもしれない。

 もちろん、そんな戦法は現実的な手段ではないが、

 第一、そう何度もうまくはいかないだろう。

 衝撃波を受けた大型肉食獣型魔物が荒い息を上げて低く唸り声を上げる。

 涎を垂らしながら、鋭い牙を覗かせ吠え猛る。

 そしてコロナへと襲い掛かった。


「来るか!」


 鞘から剣を引き抜きすぐさま構えをとる。

 そして飛び掛かってきた大型肉食獣型魔物の頭部に思い切り叩きつけた。

 本来ならばその切れ味は並みの剣を遥かに超えるといわれる剣。

 しかし今ではその切れ味は何故か消滅してしまった。

 そして単なる棍棒としてしか役立たなくなってしまった。


『ガゥゥゥゥ…!グゥゥゥ…!』


「ぬっ」


『グアァァッ!?』


 そのまま棍棒と化した剣で頭部を殴打。

 飛び掛かってきた大型肉食獣型魔物はそのまま地面に叩きつけられた。

 大きなダメージとなったわけではないが、この一撃は大きい。

 軽い脳震盪を起こしているのだろうか。

 ゆっくりと態勢を立て直す大型肉食獣型魔物。

 だがこれで勝負の流れはコロナの方に傾きだした。


『ガゥゥゥ…!』


「おっと、そのまま。そのまま。動くなよ」


 体力やスタミナでは大型肉食獣型魔物に軍配が上がる。

 もし仮に、コロナに対して消耗戦に持ち込まれると圧倒的に彼が不利だ。

 策も無いまま戦い続けるのは良い状況とは言えない。

 コロナには当然、この大型肉食獣型魔物勝つための策があった。


「こういうのは外殻以外は案外脆いもんよ…!」


 距離を置くコロナに対して、大型肉食獣型魔物は牙を向けながら吠えて威嚇をしている。

 コロナが注目したのは外殻の存在しない『腹』の部分だった。

 もちろん、他にも外殻の存在しない部分はいくつかある。

 例えば大型肉食獣型魔物の尻尾や関節などだ。

 だが…


『ガウゥッ!』


「あそこを狙えば…」


 コロナはあくまでその攻撃目標を大型肉食獣型魔物の腹にした。

 そこが最大の弱点。

 それ以外では大型肉食獣型魔物へのまともなダメージにはなりえない。

 そう考えたからだ。


『グウゥゥ!』


 再び飛び掛かってきた大型肉食獣型魔物の攻撃を受け流すコロナ。

 そして改めて腹の部分を確認する。

 腹と言うのは生物にとって頭部と並び重要な部分。

 重要な器官が多く存在しているため、本能的にそこを守ろうとする。

 それは魔物である大型肉食獣型魔物も、通常の生物も変わりがないと言えるだろう。


「やるしかない…」


『ガグゥ…!』


 そこを攻撃できれば大型肉食獣型魔物を倒せる確率が高まる。

 だが今は戦闘の最中。

 間違いなく弱点に対する警戒心が高まっている。

 そんな中大型肉食獣型魔物の腹を攻撃するのは至難の業といえる。

 攻撃可能な距離まで近づけば間違いなく反撃を受ける。


『ガルルッ!』


「はっ!」


 一気に距離を詰めるため、大型肉食獣型魔物へと突進するコロナ。

 やられる前にやるだけだ。

 それがこの大型肉食獣型魔物との戦いに対する最善の選択。

 そう考えたのだ。

 攻撃を受けるその瞬間、身体を大きくひねりそれを躱す。

 成功した。

 次は反撃だ。

 そして…


「ずあっ!」


『ガアッ!?』


 腹に向け鋭い手刀を繰り出す。

 攻撃の最中に大型肉食獣型魔物へ放たれたコロナの不意の一撃。

 これは流石に避けきれない。

 肉が裂かれ、大型肉食獣型魔物の内臓器官にまで激しい損傷を与えた。

 あふれ出る鮮血、赤く染まる肉。

 手刀で貫かれた大型肉食獣型魔物は絶命。

 そのまま息絶えた。


『ゥゥゥゥ…ッ!ゥゥゥ…ッ!』


「おわった…」


「遅かったな、コロナ」


 そう言いながら現れたのはカケスギ。

 どうやら彼の戦いはとっくに終わっていたらしい。

 ずたずたに引き裂かれ、切り傷だらけとなったもう一体の大型肉食獣型魔物。

 それを引きずりながら。

 よく見るといろいろな部位が削られていた。


「時間があったから少しバラしてたぞ」


 そう言って何かを差し出すカケスギ。

 大きな葉にくるんだ肉だった。

 それが、この大型肉食獣型魔物の肉だとコロナが理解するのにそう時間はかからなかった。

 真っ赤な赤い色をしており、脂肪のほとんど無い上等な肉のように見える。

 …味の方は分からないが。


「コロナ、コイツの肉ってうまいのかな?」


「う~ん…」


「肉食だからそうでもないか?もしかしたらまずいのかもしれんが…」


「喰ってみないとわからないぜ…」


 魔物の肉というのは、実は市場にはあまり流通していないのだ。

 味の良いものが少なく、保存も難しい。

 そしてわざわざ狩猟する程の価値も無いためだ。

 そのため、魔物の肉に関してはあまり味の知識は知れ渡っていない。

 魔物狩りのハンターの間で、少し食べられている程度だと言う。

 特にこの大型肉食獣型魔物に関しては。


「喰うか?」


「じゃあ、少しもらうよ」


 以前のゴブリンの手の肉よりはマシだ。

 アレは大量の香草とともに煮てようやく口に入れることができたレベルだった。

 そちらよりは幾分か料理らしくなるだろう。

 そう思いながら、コロナはそう返事をした。

 とりあえず討伐は成功した。

 後は街へともどり、報酬をうけとるだけだ。


「どうだ、勘は取り戻したか?」


「ああ、かなりな」


「そうか」


「へへへ…」



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