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鳴動41

 北川の張り込みは、北川が帰宅した後も24時間態勢で行われていたため、捜査員の内、数組は必ず北見に張り付くことになり、捜査本部に全員が集まることもなくなっていた。そういうこともあり、相棒の北村始め、北見からの応援組については、いちいち遠軽に戻らず自宅から直行直帰という形を最終的に採用することにした。本来であれば、捜査本部のある所轄までの距離がある場合、応援組みは署の近辺に宿を取る。一方で距離が近ければ通いというパターンなのだが、北見と遠軽の距離はそのどちらとも取れない微妙な地理的関係にあったので、これまでは全員が通いで遠軽まで来ていた。それが主捜査が北見に移ったため、方針を変更したのだ。そういうこともあり、西田と北村が張り込む時には、西田が車で遠軽から北見に向かい、方面本部で北村と落ち合うという形になっていた。


「係長眠くないですか?」

今朝7時まで北見で張り込みをして、交代後そのまま署に戻ってきた西田に、黒須が声を掛けた。

「眠たくないと言えば嘘になるな」

そう言いながら、思わずあくびが出る。

「俺は今日は昼過ぎからですね」

小村が話に入ってきた。

「いつまで続くんだろうなあ、張り込み。今日で1週間越えですか……」

黒須の発言に改めてカレンダーを西田は見た。確かに本日は7月20日だった。張り込み開始から8日目だ。そろそろ曜日感覚がなくなって来る頃でもあった。

「世の中の餓鬼どもはそろそろ夏休みかあ。うらやましいこった。あっちは海でワイワイこっちは殺しのヤマ(事件)でガサ(捜査)ガサとは対照的過ぎますわ」

大場は新聞を読みながら、上手いことを吐き捨てるように言った。他のメンバーの内、吉村は本日非番。竹下の組と澤田の組はそれぞれ、西田の張り込み時間と入れ替わりで北見に居た。

「まあそう言うな。普段十分暇なんだから、その分今忙しいと思え」

「係長の言う通り。札幌なんかで勤務してたらこんなことで文句言ってる暇すらないぞ!」

この中では年長の小村が、西田の後を受けて大場を諌めた。

「小村がいいこと言った! おまえらも将来は札幌や旭川でやりたいんだろ? だったら今回はいい経験だ」

大場はそれを聞いて、

「すんません、睡眠不足でイライラしてました」

と半分ニヤニヤしながら立ち上がって大げさに頭を下げた。二人が本気で怒っていないことは良くわかっていた。

「課長は結婚してますから、夏休みはお子さんとどっか行くとか予定あるんでしょ? さっさと解決したいですね。まあでも今からじゃ手遅れですか……」

黒須が話を変えた。

「もうここまで来たら、わかってると思うが、すぐに解決しようが夏休み時期は全部潰れるから諦めの境地だよ。『落ちた』ところで裏取りから書類作成までどれだけ掛かるやら……」

西田は天を仰ぐようにして喋った。、

「もう1ヶ月近くも札幌に帰ってないんでしたっけ。奥さんも心配してるんじゃないですか? 北川に何かやらかす気配は今のところ微塵も感じないから、しばらく掛かるでしょ。ただ、幸い証拠を隠滅しているような動きも今のところは感じないですね。それが唯一の救いってところですか」

「でもなあ小村よ、こっちが北川をマークする前に色々廃棄してたら、引っ張れる事案があっても既に手遅れだよなあ」

西田の懸念はすなわち捜査本部の懸念でもあった。ここで裏が取れないと、これまでの捜査が無駄になる確率が高くなる。

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