鳴動34
翌日は朝から捜査会議の続きが行われた。昨日倉野が言っていたように、これから先の捜査方針についてだった。これまでに、何故遺体が掘り起こされる必要があったかという点を考慮し、常紋トンネル調査会の再調査を発端とした可能性を調べてきた。それがひとまず終わったことで、最終的に結果が出なかった場合に、これからどうするかがカギだった。他にも遺体の回収を図る理由があったかについて、捜査員達に意見を求めた倉野であったが、明快な理由となるべき意見はなかなか出なかった。確かに現場付近の遺骨採集という以上の動機はそうそう思い浮かばなかった。なにしろ3年間ものの見事に隠蔽しきっていた事件を、今更、文字通り「ほじくり返す」理由はそうそうないからだ。捜査本部の室内が澱んだ空気になったのは、タバコの煙が充満したというだけではなかっただろう。
そんな雰囲気の中、突如FAXがジジジと機械音を響かせた。その紙を槇田署長から受け取った倉野捜査主任官は、しばらく険しい表情でそれを見ていたが、
「よしっ!」
と一言呟くと、
「北見(方面本部)からの速報だが、Nシステムとローラー作戦で採取したタイヤ痕の中に、時間帯含め一致するナンバーがあったようだ」
と刑事達に告げた。捜査員達は一様に
「おおっ」
と軽くどよめいた。その反応を確かめるように一呼吸置くと、
「向坂、竹下! 君らが採ってきたタイヤ痕らしいぞ」
と倉野は続けて言い、紙をもう一度確認した。そして、
「7月1日に伊坂組の駐車場で採ってきたものだと言ってきてるが?」
と聞いた。
「はい、記憶にあります。確かに伊坂組で何台か分採取しました」
と向坂が答えた。
「そうか・・・・・・。ひとまずよくやった。で、対象名はえっと・・・・・・。北見在住で52歳の北川友之という人物らしい」
と言った。それを聞いた向坂と竹下は顔を見合わせるや否や、
「ええっ?」
と声を挙げた。
「うん?どうした? もしかして対象と面識があるのか?」
と倉野は言った。
「ええ、伊坂組に聞き込みに入った際、私たちと対面したのがその北川本人ですよ!」
と竹下が答えた。
「本当か? まさかいきなり本人と会っていたとはな。で、どうだった?」
「いや、特に何かおかしいという印象は受けませんでしたが・・・・・・」
と竹下は言いかけたが、
「向坂さんは、ちょっとおかしなイメージを持ったらしい、ですよね?」
と横の向坂に問いかけた。それを受けて向坂は、
「まあ大したことじゃないんですが、あの段階でわざわざ専務の北川が応対したんで、ちょっと違和感がありましてね」
と言った。




