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鳴動33

「そうなるとやはり幽霊単独でずっと遺体を探していたということですから、無職の可能性が高い。夜の仕事だとすれば時間的にバッティングしますから、それはそもそも無理がある」

向坂が言った。

「それについてはもう既に何度か話してきたし、余りこだわっても仕方ないだろ」

倉野が少々苛ついたような口ぶりで返した。確かにそのことは「幽霊」の特定に役に立たないとは言わないが、対象を絞る条件としては大雑把過ぎて、無意味なものとして扱われていた。

「とにかく、Nシステムから何か掴めたら、まずは裏付けして、引っ張れると思えば任意で引っ張る! 当たり前だがこれでいい。細かいことは明日に回そう。取り敢えずこれで決まりだ! よし解散だ解散!」

倉野は自分に言い聞かせる部分もあったかのようにそうキッパリ言うと、勢いよく立ちあがった。今度こそ本当に会議が終了したとの確信を得た他の捜査員達も、ガヤガヤと帰宅の準備を始めた。そのざわめきの中、西田は竹下の下へ駆け寄って、

「おまえなんであそこまで『その後』にこだわった?」

と西田が聞いた。

「いやね、係長。現実問題としてNシステムと採ってきたタイヤ痕の一致だけじゃ現実引っ張るには結構厳しいところありますよね? 勿論こっちで調べたタイムスの購読者層に該当するということを含めても。任意で引っぱってこれるなら、そこから靴やら車の中の土なんかの分析で、『現場にいた』という裏付けもいけるかもしれませんが、本当に幽霊野郎と一致しているなら、その任意に応じるとは思えない。もうワンパンチ欲しい」

「そこは俺達の腕の見せ所だろ?やりようはある」

西田は竹下の問いにそう言った。

「まあそれはそうなんですが。あんまりやりすぎてもあれですし・・・・・・。捜査本部として期待している割に、結局は打開できないような気がしたんで・・・・・・」

竹下は歯切れが悪そうに言った。

様子をうかがっていた向坂が、二人のやや悪い空気を察して割って入ってきた。

「まあまあお二人さんよ。まだNシステムで何かわかったってわけじゃないし、何にもわからないかもしれない。倉野さんじゃないが、余り難しく考えても仕方ない」

そう言うと、竹下の肩を軽く叩いた。西田も遠軽署に勤務し始めてから数ヶ月だが、竹下が警察にありがちな強引な捜査手法については、批判的な立場であることをしばしば彼の口から直接耳にしていたため、それ以上何か言うと言い争いになるような気がしたので、ひとまず引き下がることにした。


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