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鳴動32

 それを基本線とすると、Nシステム試験運用の6月4日から10日の計7日間において、その「網」に複数日引っかかった車両が現時点で7台あるらしい。最終的にタイヤ痕と一致するナンバーがどの程度出てくるかはともかく、少なくとも7台以下であることは確実で、ある程度絞られたと言える。

 説明後、時間的な余裕があったので、大友本部長は倉野事件主任官に命

じ、捜査員と質疑応答することにした。それを受け、北見方面本部から応援に来ている何人かの刑事が数人挙手質問し、それに淡々と倉野は答えた。

「ピックアップするのに時間を区切りましたが、これって漏れてる可能性はないんですかね?」

「全くないとは言えないが、余り広げすぎると、結局収拾がつかないのだから、ある程度で区切るのは仕方ないと考えている」

「Nシステムに掛からず、一致したタイヤ痕の車の所有者への捜査はどうします?」

「取り敢えず、ローラー作戦も終わったので、これ以降同時進行で随時行っていく予定だ、次!」

「Nシステム、タイヤ痕の調査が終了した場合、その後の捜査方針は?」

「現時点では白紙だが、それについては明日にでも考えよう。とにかく今は北見方面本部からの調査報告がないと動けないからな。それまでの時間を有効活用する意味でも、それが一番いいと思う。それじゃあ他に質問は?」


 倉野は挙手する人物が居なくなったのを確認して、資料の紙を机の上でトントンと揃えると、ファイルに収納しながら、

「ええっと、じゃあ取り敢えず今日はこれで終了にするか」

と言った。そして席を立ちあがり歩きだそうとした時、

「事件主任官、すいません」

と捜査会議終了の発言をうけてざわつき始めた室内に、一人の声が響いた。竹下だった。

「どうした?何か問題あるか?」

倉野は身体を出口の方へ向けたまま、顔だけ竹下の方へ横に向けて言った。

「仮にですが・・・・・・。Nシステムでピックアップした車とローラー作戦で収集したタイヤ痕を持つ車が一致した場合にですね、その後具体的にどういう方向で捜査しますか? いきなり任意で引っぱるか、裏から慎重取っていくか。Nシステムに掛からないものの場合には、タイヤ痕だけで任意は相当無理があるから裏付けは必須ですが、Nシステムに掛かった場合にはそこは微妙ですよね?」

「うーん、それは確定してから決めてもいいんじゃないのか?いや、まあでもある程度決めておく方がいいのか・・・・・・。実際なかなか難しいところだからな・・・・・・」

倉野はそうブツブツ言うと、再び席に座った。他の捜査員達もそれを見て、帰宅しようとしていた足を止め着席するハメになった。

「不自然な時間帯の車での通行と現場にあったタイヤ痕との一致・・・・・・。一方でNシステムは現場から数十㎞は離れているのも事実。他にも裏が必要かもしれんな。取り敢えずは持ち主の身辺調査はまずしないとダメだろうが、これは当然の話だから・・・・・・」

思案顔の倉野を見つつ、大友本部長が、

「というか、幽霊の動きを見ると、普通の勤務時間の仕事についていたら、ちょっと体力的に厳しいよな、穴掘ってる時間帯考えると」

と付け加えた。実際問題、捜査本部でも「幽霊」が一般的な社会人かどうかについて、初期捜査段階で疑問が呈されたことがあった。それがローラー作戦実行当初、屯田タイムス購読リストの中にあった、暴力団関係の企業や飲食店を中心に洗った隠された要因の一つでもあった。勿論基本的には、大学生の米田青年が殺された理由が、何らかの犯罪にたまたま現場付近で巻き込まれた可能性が高いということからだったが。ただその時には成果は出なかったという現実もあった。


「複数人で日ごとにそれぞれ分担していたってのは否定されてましたよね?」

竹下の相棒の向坂も入ってきた。

「それは基本的には否定されてる。現場周辺の下足痕は1つしか見つかってないから。勿論、作業をしていた別人の下足痕が既に消えていたというならありえるが、割と頻繁に出没していたようだから、時間的にその分が完全に現場から消えているとは思えない」

第一次的に捜査に当たった遠軽署の沢井刑事課長が答えた。


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