鳴動25
一方で、
「場所が留辺蘂と北見の境界ということですが、現場は留辺蘂を越えて生田原ですから、場所的には遠いので特定は困難ではないですかね?」
という当然の疑問が他の捜査員達からも出た。
「その通りだ。そこを通って現場に行ったという確証も全くない。ただ、北見市内や網走方面から現場に向かうとなると、通っている確率が高いのもまた事実だ。通っているだろう時間帯もある程度絞れる。今の状況のままでは、ローラー作戦だけで容疑者をリストアップすることは厳しい。最後の賭けになるかもしれないが、やってみる価値はあると思う」
倉野は先程の西田達との討論の結論を明快に答えた。横で聞いている副本部長の槇田遠軽署長も納得しているようだ。
「それでだ、君たちがローラー作戦の際に、関係車両と思われる中で、タイヤ痕が似ている、或いは一致しているだろうものを、ナンバーチェックと同時に採取してくれているはずだが、あれはどうなってる?」
「主任官、それなら随時北見方面本部の科捜研に送ってます。原本も今はあっちに預けてありますので」
と遠軽署鑑識係長の山下が返答した。
「そうか、あっちで調べて貰ってるのか。わかった。それならリストアップできた車両とこっちが持って行った情報でもし符合するものがあれば、すぐに北見方面本部内でタイヤ痕ごとチェックできるな」
と倉野は満足そうに言った。多少の希望が出て来たので、会議が始まる前よりは捜査員達の表情は明るくなっているように西田には感じたが、直接の部下の小村、吉村、澤田、黒須、大場の5名はなんだか浮かない様子に見え、疲れもあるのだろうと心配になった。まだ経験もそれほどない若手が大半だ。今は西田の配下ではなく、捜査本部の配下であり、組んでいるのも北見方面本部などの部外先輩刑事である。身体的な疲労だけではなく、気苦労もあるだろう。だが、この経験はこれ以降の刑事人生の糧になるはずだ。
「もうしばらくの我慢だ」
と心の中で呟く西田であった。
そうこうしているうちに槇田副本部長の訓辞で捜査会議は終わり、刑事達はざわざわと会議室を出た。西田は主任の竹下と他の5名及び組んでいる北村を呼び止め、夕食と飲みに誘うことにした。




