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鳴動19

「えっと、ああ、あったあった。1人は町議会議員じゃなくて、町長だったみたいだ。町長の名前は堂岡達吉って書いてあるな。もう1人は三好松蔵、こいつも町議会議長って書いてある。はっきりは憶えてないが、どっちかが元国鉄の生田原駅長だったとか言う縁もあって来てくれたとか言う話があったような気がするんだが、あくまで俺のつたない記憶だけど。住職ってのは、この弘安寺の住職さんのことかな? とにかくこれでいいべか? 刑事さん」

奥田の話を受け、氏名の漢字を一字一句聞き、メモを取り終えた西田の目の前にやっと田中が現れた。

「見当たらねえ。申し訳ない」

と困ったような表情を浮かべて言った。

「いや、幸いなことに、今奥田さんが教えてくれましたよ」

「そうかい! そいつは助かった。ちょっと電話替わってくれるかい、刑事さん」

と西田に言うと、田中は笑顔で奥田に礼を言った。西田は電話を田中から受け取り、奥田との会話に戻った。

「奥田さん、頼んだついでと言ってはなんですが、その書いてある奴、それしばらく我々に預からせて貰えないでしょうかね?」

「こっちとしては構わんが、いつ来るの?」

「奥田さんの家は北見市内ですか?」

「いや、訓子府町にあるんだが」

「ああ、訓子府ならここからすぐですね。それなら本日中に伺いたいのですが、大丈夫ですか?」

「じゃあ、30分もあれば来れるべ。こっちは暇で時間もたっぷりあるし待ってるわ」

奥田からすんなり許可を貰ったので、詳しい住所を聞いて、これから直接訪ねることにした。どうせ「実物」を貸して貰えるのなら、メモなんて取る必要はなかったと自省しながら会話を終えると、北村に目配せして、席を立つように指示した。

「いやそれにしても、本日は色々ご迷惑をお掛けしました。必要なことはお聞きしましたので、これでおいとまさせていただきます」

と西田は頭を下げた。田中はそれを見ると、一瞬安堵したような顔つきになったが、

「それにしても、何を調べてるかわからないが、こんな目には二度と会いたくないもんだな」

と、やや不機嫌な口調で言った。勿論、刑事達がいきなり押しかけて、疑ったように色々聞いてきたのだから、そういう気分になるのは当然でもある。西田もそれについては、とやかく言える立場にはなかった。ただ、

「本当にすみません」

と繰り返すしか言いようがなかったのである。

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