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鳴動8

 一方その頃、強行犯係主任の竹下は、帳場(捜査本部)が立ちあがって以来のコンビを組んでいた北見署刑事課強行犯係主任の向坂と、北見屯田タイムス購読者リストを基にしたローラー作戦を実行していた。今回の応援組の中で、北見方面本部の刑事部の刑事以外で他の所轄から応援に来たのは向坂1人だった。


 向坂は40代前半のベテラン刑事で役職は係長だった。竹下が聞いたところによれば、北見署の前は旭川方面本部の捜査一課にいたらしい。このレベルの刑事が通常の所轄署に戻ることがある場合、やはり係長レベル以上の待遇になることが多い。親の介護のために実家の留辺蘂に戻る必要があったため、北見方面本部もしくは北見署への異動希望による転勤だったことが、北見の勤務になった理由だった。本人の推測では、北見方面本部は以前勤務経験があったので、所轄の北見署配属になったのではないかとのことだった。


 今回の応援組が近隣所轄からは向坂だけであり、しかも係長クラスの刑事だったのは、捜査本部が小規模だったことに加え、彼の経験、練度、そして出身が地元の留辺蘂だということもあったに違いないと竹下は考えていた。おそらく向坂もそう思っているだろう。


 竹下と向坂は、今回、主に北見にある企業の購読組を調べていたが、午前中回った1社には取っ掛かりは何も得られなかった。個人購読者ならともかく、一般企業となるとそこから更に容疑者を絞り込むのは難しいのは当然である。やくざ関係の企業、飲食店で何も挙がらなかった時点で、「こういう方面」の聞き込みにはかなり限界がある。


 午後にも3社ほど回る必要があったので、それに備えて市内のファミレスで急いで胃袋を満たしている最中、リストを見ていた向坂がボソッと、

「ああ、ここか」

と呟いた。

「向坂さん、何か?」

竹下がそれに気付いて反応すると、

「まあちょっとな・・・・・・」

と若干不機嫌そうに答えた。そして溜息をついた後、

「俺が北見方面に居た8年ぐらい前だったか、午後から回る予定の、この伊坂組の社長にちょっとした嫌疑がかかってな」

と続けた。

「嫌疑?」

「ある事件の重要参考人だったんだ、ここの社長、正確に言うなら先代の社長がな、竹下」

リストを見ながら喋っていた向坂は、一瞬顔を上げて竹下を見やると、再び視線を紙片に落とした。

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