表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/827

明暗27

 生活安全課の室内に入ると、西田は下山課長のデスクに真っ直ぐ突き進んだ。勢いよく向かってきた西田に面食らったような下山だったが、

「刑事課の西田がウチに何の用だ?」

と一呼吸置いてからゆっくりと言った。

「忙しいところ申し訳ないです。古物担当、ちょっと貸してもらえませんかね?」

「古物担当? 窃盗関連だと強行犯じゃなくて盗犯係だと思うが? 強盗か?」

「言え、窃盗でも強盗でもないんですが、骨董店に聞き込みしたいんで、顔馴染みが居た方が円滑に進むと考えまして」

西田の説明を受けて、下山はあっさりとそれを受け入れたか、

「おい、栄村、宮部、ちょっと来い!」

と担当者を呼んだ。


「課長、何か?」

西田も面識がある栄村主任が、西田に視線をやりながら聞いた。

「強行犯の西田が、古物商担当に協力して欲しいと言ってきてる」

下山も西田を見ながら告げた。

「西田係長、協力というのは?」

「栄村、署の近くにある葬儀場の横の骨董店……」

そう西田が言いかけたところで、

「ああ、冴島骨董店ですか? ええ、勿論ウチが担当してますよ。特にこの宮部があそこの店主とは懇意です。何か調べたいことでも?」

と遮って言うと、宮部の背中を押して西田の前に出した。

「そういうことなら、宮部君? ちょっと俺の聞き込みの際に口利きしてもらえないかな? 警察手帳出して聞くのもいいが、やはり知り合いが居たほうが相手の心証も良いだろうし」

と西田が切り出した。

「はい。勿論喜んで! 刑事課に協力できるなんて光栄です!」

やや緊張気味に姿勢を正した宮部は、20代前半のかなり若手に見えた。

「じゃあ下村課長、ちょっとこの宮部君を1時間も掛からないと思いますが、今から貸してもらえませんかね?」

「栄村と下山が問題ないなら、俺も異存はない」

下山はそう言うと、栄村と宮部を確認した。二人共黙って頷いたのを見て、

「問題ないみたいだから、すぐ連れてってくれ。宮部! 足手まといになるんじゃないぞ!」

「そんなに大したことじゃないですから」

課長の心配を笑って否定すると、西田は宮部を伴って駐車場へと向かった。


「あれ、車で行くんですか? てっきり自転車かと」

宮部は少々驚いた様子だったが、

「ああ、確かに大した距離じゃないが、俺は聞き込みの後、遠軽スキー場に行かなきゃならんのでな。勿論君を署に送り届けてからだが」

と説明した。

「運転は西田係長に任せていいんですか?」

と恐る恐る聞いてきた宮部に、

「ああ、気にするな。どうせこの後も一人だから自分で運転するんだ」

と言って運転席に乗り込んだ。そして会話する間もなく、あっという間に反対車線の冴島骨董店の駐車場に滑り込み、宮部を先頭にして西田も暖簾をくぐった。


「どうもー」

宮部が愛想よく声を掛けると、奥から店主らしき中年のメガネを掛けた男が出迎えた。

「何だ、宮部さんかい。客かと思ったよ。がっかりさせないでくれ。古物の買い取りのチェックなら1ヶ月前にしたばかりだべ?」

「いや、今日はそういうことじゃなく、ちょっと他の担当の刑事さんが、冴島さんに聞きたいことがあるって言うんで、俺が仲介というか紹介というか……。こちらウチの刑事の西田係長」

店主の毒舌の入った挨拶にも構わず、宮部が西田を紹介した。西田は一応警察手帳を呈示して挨拶した。

「刑事さんがウチに用があるって? 昔盗品買い取った時以来だなあ。あれはかれこれ20年前ぐらいだったべか……」

店主はメガネを右手で上下させながら、しげしげと西田を見た。

「いや、自分は盗品関係の担当じゃないんですよ。今日はそういう話ではなく、無関係なことでお話を聴きたくて」

と冴島に言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ