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迷走80

 8月14日月曜、いよいよ現場再捜索の日となった。天気も良く、予報通りの気温もそう高くない絶好の天候だった。捜索は寺島側の都合で午後からの予定だったが、午前10時頃、沢井課長は電話で寺島と最後の打ち合わせをした。寺島は今日伐採を手伝ってくれる、幼なじみの横山一平の家に13日より逗留していた。実家は寺川の父母が亡くなった後、誰も居住しなくなったため取り壊していたからだ。


「……じゃあこちらから迎えに行きますので。13時前にはそちらに着くと思います。よろしくお願いします」

沢井はそう言うと電話を切った。


「西田、昨日の時点で生田原の丸山の方には連絡しておいたんだよな?」

「勿論ですよ。駐在所まで自分と課長が行って、そこから横山さんの家まで先導してくれる手はずです。ただ、最終的な確認のために、こっちを出る前には電話してくれと言われてますんで」

「わかった……。後、なんか坊さんも寺川さんに同行するらしいぞ」

「坊さん?」

「寺川さんところの菩提寺の住職の、ほらうちの署の協議会員の弘安寺の松野住職。例の慰霊碑の慰霊式典で供養のために読経上げたのが、弘安寺の当時の住職だったって話だ。その縁で毎年慰霊式典のあった9月23日に供養してるんだが、明日の墓参りの件で話しているうちに、寺川さんが今日現場に行くというのを聞いて、付き合うことにしたらしい。米田の供養もしてくれるんだと」

 

 西田はそれを聞いた瞬間、先日の捜査資料を読んだ時のことを思い出した。あんな場所にあり、且つ慰霊碑でもある「辺境の墓標」の供養についても、きちんと「岡田一族」から引き継いでいたのだなと、ある種感心した。


「今の松野住職は、当時慰霊式に出た弘安寺の住職とは直接の関係はないようです。慰霊式の出席者の名簿にある、弘安寺の住職名は岡田になってますから」

西田は課長に、さっと引き出しから取り出した冊子を掲げながら言った。

「ああ、それに載ってたか。でも血縁があるかどうかは、ちゃんと聞いてみないとわからんだろ? 母方の親戚が継いでたりするかもしれない」

「それもそうですか……。でも折角ですから、これ持っていきますよ。寺川さんの多分オヤジさんでしょうけど、その人も地主として出席してたらしいですし。ああ、そうだ、先日の奥田の爺さんから聞いた事件。あれで聴取した相手の地主も同じ寺川姓でしたから、寺川さんについでに聞くのも手ですね」

「慰霊式典に出た寺川とそっちの寺川は同一人物じゃないのか?」

「ええ、出席していたのは、このリスト上では洋介、聴取したのは松之介? だったはずです」

「今回来たのが大介だから、名前の感じから行くと、オヤジが洋介、爺さんが松之介っぽいな」

「まあ親子関係じゃなくて、それこそさっきの話じゃないですが、親戚かもしれないですし、そこら辺はなんとも言えないですねえ」

西田は首を傾げた。

「まあ、ここでガタガタ言うより、今日実際に聞いた方が早いな、よく考えたら。ただ、そっちの事件はもう既に時効だし、俺達が追ってる事件とは関係ないんだろ? 余り深入りするなよ。今日も捜索が昼過ぎからだから、あんまり時間がないし」

課長は西田に一旦話の幕引きを促した。西田もドツボに嵌る前にそれをありがたく受け入れることにした。

「とにかくこの冊子と例の事件の捜査資料、今日持っていくことにしますよ。そんなことを聞いている暇があればの話ですが」

西田はそう言うと、カバンにそれらを仕舞った。

「その塩梅はおまえに任せるが、さっき言ったことはくれぐれも忘れてくれるなよ」

課長は半ば呆れたような口ぶりだった。そして立ち上がると、


「さて、じゃあ今日の予定を最終確認しておくぞ!」

と全員に聞こえるように声を張り上げた。

「今日のこっちを出るのは正午。竹下以下強行犯係と鑑識の松沢、三浦の両名は現場直行。俺と西田は生田原駐在から横山の家に行き、寺川と横山、住職拾って現場に行く。わかったな?」

課長は強行犯のメンバーにそう告げた。



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