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迷走75

 係長も今朝の記事、当然見ましたよね?

いよいよかと西田は、険しい顔付きをして、

「当然だ」

と一言返した。

「まあそうですよね……。実はですね、先日、確か係長が名寄に出張していた日でしたか、自分の大学時代の先輩、あ、当時マスコミ研究会というところに自分は所属していたんですが、そこの先輩が、今は道報のサツ回りと事件担当の遊軍記者やってるんです。その人が『今、取材で北見に居るんだが、どうしても直接会って確認したいことがある』という連絡をくれたんですよ」

 

 そう言うと、竹下は名刺を更に西田の方に突き出した。そこには「北海道新報 社会部記者 五十嵐 充」と記されていた。北村が北見で竹下と共に目撃した、例の記者で間違いないだろう。それにしても竹下がマスコミ研究会に参加していたとは初耳だった。剣道部に居たことは知っていたが。


「それで午後を休みにしてもらって、北見で会っていたんです。まあ電話でも済ませられると思ったんですが、記者ですから、相手の表情なんかの反応を見ることも1つの手段ですからね。そういう意味ではむしろ会わない方がいいかとも思ったんですが、マスコミがどういうことを追っているのか、逆に知る機会でもあると、敢えて『虎穴』に入ってみました。で、会ってみると、やはり『とある筋から、おまえの居る遠軽署も関係してる殺人事件の捜査で不手際があったという話が舞い込んでるが、どうなんだ?』と聞かれたわけです。こちらも北川の件はすんなり認めることは出来ませんから、『よくわからない』とお茶を濁していたんですが、先輩の様子がちょっとおかしかった」

「おかしかった?」


 西田は案の定な展開に、正直余り結論を聞きたくなかったが、取り敢えず最後まで聞いてから意見を言うつもりだったので、話の腰を折らないようにした。


「ええ。先輩はブン屋にありがちな、『権力は常に監視すべし』というタイプの人ですから、当然警察批判の方向で、色々追及してくるんじゃないかと、こっちも身構えていたんですよ。ところがむしろ心配してくれたというか……」

「心配してくれたと言うのはどういうことだ?」

「そこなんですよ。こっちの情報は基本的には松田弁護士から新聞社にタレ込まれた、ああ勿論先輩はそこの部分はソース元の秘匿として言えないし、言いませんからこっちの推測ですが、そのタレ込まれたことを記事にすることに「圧力」が掛かっているというニュアンスの話をしたんです」

「圧力ってことはこっち(警察側)からの圧力か?」

「いや、そうじゃないです。どうも記事にすることを強要されたみたいな話でしたね。先輩もその時ははっきりは言いませんでしたけど」


 西田は少々面食らった。圧力と来れば、記事にしないようにする圧力が一般的だが、記事にするように要請する圧力ということもあり得るのだと。


「先輩としては徹底した反骨精神の人ですから、警察の不祥事も腹立たしいが、その記事について『書くように強制してくる』こともそれ以上に腹立たしいらしく、どうしてそういうことが起きているのか、その要因を何か自分が知っているのではないかということで、直接聞きたかったようなんですよ。正直、北川の件の『裏取り』はどうでも良くて、警察内部に何か権力闘争があって、その影響がそれではないかと探ってきた感じですね。おそらくですが、北見に取材というのは今回の北川の意識不明の件で来ていて、その取材、まあ松田弁護士への取材なんでしょうが、それについては、自分に会う前にほぼ済んでいたが、警察叩きの方向への圧力が掛かった理由についてはとんとわからず、自分にお鉢が回ってきた、そういうことじゃないかと、今になっては思います。タレコミが有名な担当弁護士によるものだとすれば、既に「ソースの信頼性」はそれなりに高いでしょうし、直接事件を捜査していない『周辺』の警察関係者でも、ある程度は騒ぎになったから知ってるわけで、そちらから情報は得られますし」

「それでどうなったんだ?」

 話の展開が思わぬ方向に行ったこともあり、今度は純粋に興味本位で続きを促した。

「その時はこちらもよくわからないし、先輩も探り探りに聞いてくる感じでしたので、まあそのままただの世間話に移行してお開きという形です。で、今日の一面ですよ。それで、中身については、実際に当たっている部分もあるが、かなり恣意的に警察批判に持って行こうとしている部分もかなりありましたから、これは休みを利用して、直接先輩に会って抗議してやろうと思いまして、朝一で札幌に向かったわけです。同時に、一体記事を書かせた圧力が何か、ここまで来たら聞き出してやろうとね」


 西田は警察の方針に真っ向勝負しろと文句を言った竹下が、警察の側に付いていることに、多少驚いていたが、竹下は構わず話を続けた。

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