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迷走44

「ここが噂の鴻之舞か……」

向坂が道路の左右に次々現れる旧町名の立て看板を見ながら呟いた。丁度、製錬所跡にそびえ立つ煙突が視界に入ってきた頃、

「ちょっと廃墟でも散策してみましょうか?」

満島はそう聞いておきながら、二人が同意する前に自分で勝手にハンドルを切っていた。

 

 道路から脇道に入り車を駐めると3人は外に出た。職員の集合住宅だったと思われる、ちょっとしたアパートのような鉄筋コンクリートの建物のガラスは割れ、木の枝がその窓から建物内部の方に張り出していた。また、三友グループ(会社名は変えさせていただきます)の有名なマークが入った建物なども散見された。おそらく会社の建物なのだろう。


「この規模の町が廃鉱で一気に無人になったってのは、今となっては想像つかんなあ」

西田は足元に気をつけながら、左右を見回してた。

「昼間だからいいですけど、夜中に一人で来たら怖いですよこれ」

「満島、そりゃ誰だって怖いぞ。昼間ですら行き交う車も少ないところに夜なんて想像もつかない。怖いなんてのは当たり前の話だ」

西田は呆れたように言った。一方向坂は学校跡の碑の前に立つと、それを黙ってみていた。

「何か気になりましたか?」

西田はその姿を見て声を掛けた。

「大したことじゃないよ。俺は留辺蘂生まれで育ちもほぼそこなんだが、一時期オヤジの仕事の関係で、弟子屈の方に居たこともあった。しかしその時在籍してた中学校は廃校になってるんだ。ちょっと感慨にふけっちまったかも」

「そうなんですか……。確かにそういう経験があると、感じ方も違ってくるかもしれないですねえ」

しばし二人はしみじみと立ちすくんだまま、静かに短い時を過ごした。満島はそんな様子を察したか、一人で色々見回っていた。


 そのまま30分ほど廃墟に滞在し、来た道を戻って道道137号に再び合流すると、遠軽市街に1時間も掛からないで入った。なんとなく遠軽が都会に見えた気がしたが、鴻之舞の廃墟のイメージがそうさせたのかもしれない。遠軽署の前で向坂と満島に別れを告げ、西田は刑事課へと署内に入っていった。


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