第42話
「すみませんでした……」
私はぺこりと頭を下げる。
「いえ、特に怪我はしていませんし問題ありませんよ」
ぱっぱっとニュナはメイド服についた汚れを払っていた。
そんなニュナに対して、私は先ほどの光景を思い出していた。
「……私の肩が問題というのは脇に置いておくとしまして」
「それは脇に置かないほうがよろしいのでは?」
「と、とにかくですよ。どちらにせよ、魔撃ポーション側にも問題があったと思うんですよね」
「たぶん間違いなくルーネ様の肩が問題だったと思いますが……それはどうしてでしょうか?」
にゅ、ニュナのはっきりとした言葉に頬が引きつりながらも、私はあの時の状況について伝える。
「その、魔撃ポーションは……瓶に入っていて投擲が中々大変だったんです。ですから、その部分がもう少し改善されれば……普段使っているボールと同じくらいの感覚で投げられれば、たぶん的にも当てられると思うんですよ」
私は言い訳がましく言葉を並べた。
でも、実際ボールと瓶では投げる感覚がまったくといっていいほど違っていた。
あれでは、今後も投擲の練習をしたとしてもあまり改善するとは思えない。
これには、ニュナも考えるように腕を組んだ。
「確かに、それも一理ありますね。ですが、どうしますか?」
「だから、こう……魔撃ポーションの要素を上手くボール状に押し込められればきっとうまくいくと思うんですけど……」
私が両手で丸を作っていると、
「ボールに近い瓶を用意する、とかでしょうか?」
「それは……確かに解決策の一つですね」
「少し、歯切れが悪いですね。他にも何か問題点がある感じでしょうか?」
こくり、と頷く。
例えば、今後外で戦闘中に携帯錬金釜で魔撃ポーションを作るときとか。
その際に、瓶に移し替えて投擲するのでは少し時間がかかる。
「製作した魔撃ポーションを何か別の方法で扱えないかなぁ……って思ったんですよね」
ニュナがしばらく考え、そして小さく口を開いた。
「……それでは水魔法で操って投擲するというのはどうでしょうか? 先ほどのを見た限り、携帯錬金釜に入っている魔力水の操作が出来れば狙ったところに攻撃出来ると思いますが。瓶への移し替えなどは、確かその魔力操作で行っていますよね?」
ニュナの言う通り、私は錬金釜で製作したポーションをすべて魔力によって操作してそのまま瓶へと移し替えていた。
……確かにそれと同じように出来れば――!
「……なるほど。早速やってみますね!」
返事をしてすぐに携帯錬金釜で魔撃ポーションの製作を行う。
青色の魔石……水魔石を使ったからか、魔撃ポーション(水)が出来上がる。
質はDランクだけど、むしろ練習の間は質を下げたほうが良いと思う。
それから携帯錬金釜内にある魔撃ポーションの液体を操るように魔力を込め、液体をそのまま外へと出す。
携帯錬金釜から魔力を取り出した瞬間だった。
……あっ、そろそろ魔撃ポーションが起動しちゃいそう!
私は大慌ててで遠くへと放り投げる。すると、魔撃ポーションは空中で炸裂し、そして一定範囲内で水の矢が飛び交い、消滅した。
「……魔力に反応して起動してしまう、感じでしょうか?」
ニュナが先ほどの原因を突き止めるようにそう言った。
……ニュナの言う通りなんだよね。
「魔力を込めちゃうと、さっきみたいに発動しちゃうみたいですね」
……うーん、難しい。
「……つまり、先ほどのように大急ぎで目標にぶつけるか、うまく起動しない範囲の魔力で操作するか……あるいは、起動しないよう何かしら別の手段をとるかってことですね?」
「そうなりますね」
でも、私の肩を考えるならこっちのほうが現実味はありそうだね。
「ちょっと、こっちの魔法操作の練習をしていこうと思います」
「分かりました、頑張ってください。必要な物があればなんなりとご命令ください」
「うん、ありがとうございます」
……大変そうだけど、ちょっと楽しい。
いずれはルーちゃんと一緒に冒険者として戦ってみるためにも、この操作をマスターしないとね。
ただ、今後も投擲に関しては練習していこう。
ルーちゃんとボール遊びもしたいからね。
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