第36話
屋敷に戻ってから一週間が経過した。
連れて帰ってきたルーちゃんとの生活にも慣れてきた私だったんだけど――。
私はぎゅっとルーちゃんの体を抱きしめる。
抱きかかえられていたルーちゃんの体はいつの間にか、成犬ほどの大きさにまでなっていた。
今私がルーちゃんを抱きしめようとすると、その体に乗るような形で腕を回す必要があった。
ぐいーっと腕を伸ばして、何とか両手の先が当たるくらい。
……な、なんかめちゃくちゃ成長早いよね?
ルーちゃんはとても嬉しそうに舌を出しながら尻尾を振って私に体をこすり付けてくるんだけど、踏ん張らないと押し返されそうになってしまっている。
私は犬のような感覚で育てていたけど、もしかしたらウルフというか魔物というのはこのくらい成長が早いものなのかもしれない。
そう思った私は部屋の掃除を終えて外に出てきたニュナに訊ねてみることにした。
「ねぇニュナ。私、ウルフとか育てたことないんだけど……みんなこのくらい成長って早いものなんですか?」
「……いえ。私もウルフを飼ったことはありませんが、ここまで成長が早いものは聞いたことがありません」
「そうなんですね……まあ、別に元気ならいいんですけどね」
「元気だけで片付けられる問題ではないと思いますので、こちらでも調べておきますね」
「うん、ありがとうございます」
……もし、なにかこう成長が早くなるような特殊な病気とかがあるのだとしたら調べておいたほうが確かだよね。
私はルーちゃんとともに屋敷の庭へと向かう。
食堂近くに行くと、頼んでおいた食事が犬用の皿に入れられて外に置かれていた。
食欲旺盛なルーちゃんが一目散に向かおうとしたので、私はすぐに声をあげた。
「はい、待て!」
そういうと、ルーちゃんはぴたりと体を止める。
早く食べたい! とばかりの目を向けてくるルーちゃんに、もういいよと言いたいけど基本的な躾はきちんとしないといけない。
「おすわり!」
そういうと、ルーちゃんはすぐに綺麗に座る。
……人間で言ったら背筋がぴしっと伸びているとでも言うのだろうか?
ルーちゃんの座り様は凛々しくもあり、美しくもある。
銀色の毛並みもあって、とても映えていた。
「うん、よし!」
そういうとルーちゃんはすぐに食事へとかぶりついた。
ルーちゃんに用意されている食事は、屋敷で使われていない部位などの肉や野菜などが主になっている。
食堂の人にお願いしたら色々と作ってくれるようになったんだよね。
ルーちゃんはとても賢く、私の言葉のすべてを理解しているようで躾に関してはほとんど問題がなかった。
ただ、ちょっと食欲に負けてしまい暴走することはあるけど、それ以外は基本的に素直な良い子だった。
凄まじい食べっぷりのルーちゃんをニコニコと眺めていた私だったけど、私も仕事がある。
「ちょっと待っててね、ルーちゃん」
「ガウ!」
ルーちゃんは「待ってる!」とばかりに首を縦に振ってから、一心不乱に料理を食べていた。
その食事が終わったところで、別の皿に用意されていた骨へとかぶりつく。
がりがりと、凄まじい音を上げているあたりはさすがに魔物なんだなぁ、と思う。
私が食堂の裏手をノックしてから中へと入る。
食堂の裏手は通路があって控え室などがあった。
「おっ、ルーネ。おはよう」
料理長である女性……ビントさんがにやりと笑う。
どこか男勝りなところがある彼女に私はぺこりと頭を下げた。
「それじゃあ、今日もポーション作っておきますね」
「いやぁ、悪いね」
「いえいえ。私もルーちゃんの食事を作ってもらっていますからね」
「別にそのくらいはいいんだけどね……賄い料理作っているのと大して変わらないんだしさ」
「こちらの気分的な問題なんですよ!」
「はは、そうか。まあ、みんなルーネのポーションは体の疲れが取れるっていうから滅茶苦茶楽しみにしているんだよ」
……そういうわけで、私は食堂の一画に錬金釜を設置してそこでポーションの製作を行っている。
こちらはただ錬金釜に作り置きをしておくだけで良いから、別に労力はないに等しかった。
私はポーションの製作を始めた。
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