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第69話 ミスリルソード

「え? もう完成したんですか?」

「おう。お前さんにはいつも世話になってるからな。しかもセナちゃんの新しい剣となれば、当然、最優先だ」

「だ、大丈夫なんですか?」

「なーに、他の仕事なんて後回しで構わねぇさ。がっはっは!」


 ……本当に大丈夫なのだろうか。


 ちょっと不安だけれど、ともかくビリーさんに頼んでいた剣ができあがったらしい。

 ザリの町から戻ってきた翌朝、わざわざ僕の家まで持ってきてくれたのだ。


 シーファさんも一緒だ。

 ビリーさんの発言に、可愛らしく少しだけ眉根を寄せている。


「ほら、これだ」

「これが……」


 鞘から抜いてみると、美しい白銀色の刀身が露になった。


 じっと見ていると、刀身に吸い込まれてしまいそうな不思議な感覚に陥る。

 僕には剣の良し悪しを見分ける力なんてないけれど、きっとこれはとんでもなく凄い剣に違いない。


「こいつは俺が今まで打った中で、間違いなく最高の出来だ」

「そんなに……本当にありがとうございます」

「いや、ほとんど素材のお陰だけどな。あんなミスリル、マジで初めて見たぜ。今でも信じられねぇ、純度百パーセントのミスリルなんて……」


 渡したとき、すごい大きな声で叫んだので、僕の方がびっくりさせられたっけ。


「あんなのが自然界に存在するものなのか? だからと言って、人工的に精錬して作れるとは思えねぇし……」


 ちなみに余計な追及を避けるため、リルカリリアさんから買ったことにしておいた。

 以前、リルカリリアさんからミスリルを大量入荷したこともあるしね。


 まぁそれはそれで、どこにそんな大金があったのかと疑われたけれど……。


「お兄ちゃん、どーしたの?」

「セナ。これ、お前の新しい剣だぞ」

「え? あたしの?」

「ああ。古いやつ、切れ味が悪くなってきたって聞いたから」

「うえー、剣より休みが欲しかったよー」

「おいこら」


 会心の出来の剣への最初の感想がそれで、ビリーさんが苦笑いしている。

 すいません、ほんと、うちの妹が……。


 と、そこへアニィとサラッサさんがやってきた。


「あ、セナの剣ができたのね。ちょうどいいタイミングじゃない」

「……き、筋肉……ハァハァ……」


 アニィはセナの手にした剣を見て言う。

 サラッサさんはなぜか頬を赤くして、ビリーさんの二の腕あたりを見ながら何かを呟いている。よく聞き取れないけど。


「とてもいい剣。さらにこれから魔法を付与する予定」

「サラッサならできるかしら? ……サラッサ?」

「ハァハァ……」

「ちょっと、サラッサ」

「……デュフフ……」

「サラッサ! とっとと戻ってこい」

「っ!?」


 アニィが頭を叩いて、ようやくサラッサさんは自分が注目されていることに気づいたようだ。


「ななな、何でしょうか……?」

「この剣に魔法を付与したいのよ。あんたならできる?」


 なんかちょっと変わった感じの人だけれど、魔法の腕は確かだという。

 だけど剣を確認したサラッサさんは、いきなり慌てたように首を振った。


「むむむ、無理ですっ! こここ、こんなとんでもない剣に、私が魔法を付与するなんて……っ!」

「あんたには付与できないってこと?」

「……できるかできないかで言うと、一応できます……けど……」

「けど?」

「こんないい剣なら、専門の付与師にしてもらうべきです……。魔法の付与は、失敗するとやり直しができないので……」

「なるほどね」

「わ、私はどちらかというと、魔法付与のような細かい魔力操作が必要なものは苦手ですし……緊張しますし……こんなすごい剣となったら、なおさらです……」


 というわけで、専門家に依頼することになった。

 とはいえ、魔法付与師自体が珍しく、この都市にいるかどうかも分からない。


「じゃあ、魔法付与は後回しだな」


 素の状態でも十分な性能なので、ひとまずこのまま使うことになったのだった。







 その後、ザリの町から冒険を再開した僕たちは、ついに目的のモリアへと辿り着いた。


 小さな村だ。

 簡易な堀と土塁に囲まれた狭い土地の中に、木造の家屋が並んでいる。


 僕たちは依頼主である村長さんの家で、詳しい話を聞いた。

 五十がらみの男性だ。


「わざわざこんな辺境の村までお越しいただき、ありがとうございます。道中なかなか大変だったでしょう?」


 旅は快適で、毎日自宅に帰ってました――なんて言えるはずもなく、僕たちはただ神妙に頷いた。


「近くの山に棲みついたワイバーンに、村の家畜が毎日のように連れ去られているのです」


 被害に遭ったのは牛や豚、それから山羊といった、村にとって大事な家畜たちだという。

 ワイバーンは恐らく巣へと連れ帰り、食料にしているのだと推測される。


 幸い村人には被害が出ていないそうだけど、このまま家畜が全滅してしまえば、次は人を狙ってもおかしくない。

 早くどうにかしてあげないと。


「……毎日のように?」


 何か引っかかることがあったのか、アニィが聞き返した。


「は、はい」

「ワイバーンはドラゴンと比べると細身だし、大きくてもせいぜい四、五メートルくらいよ。家畜を毎日のように捕まえても、そんなに食べるかしら……? そもそも豚や山羊はともかく、牛なんて連れ去れる?」

「言われてみれば……」


 村長さんが言うには、体重六百キロ以上もある大人の牛も攫われたという。

 一方、村人が目撃したワイバーンは、遠目から見た感覚ではあるが、せいぜい体長四メートルくらいだったという。

 さすがに大人の牛を運んで空を飛ぶのは難しいように思えた。


「もしかしたら上位種かもしれない」

「そうね。まず確認してみましょう」


 ともかく僕たちはワイバーンのいるという山へと出発するのだった。


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