第151話 虚偽の報告は許されませんよ
「な、なんて威力だ……っ! 青い髪のねーちゃん、あんたやるじゃねぇか! リヨンもいつにもまして強烈な魔法だったし!」
「リヨン様、さすがでス」
「い、いや、今のは本当にぼくが……?」
「なんで当人が目を丸くしてるのさ! 爆裂魔法は君の十八番でしょ!」
……たぶん、シーファさんの【女帝の威光】のお陰だと思う。
だから普段よりも魔法の威力が強化され、本人も驚いているのだろう。
ともかく、これでサイクロプスが全滅した。
残っているアトラスも大ダメージを負ったようで、焼け爛れた全身から煙を立ち昇らせながら「オオオ……」と呻いている。
「いくよー」
「私も行きまス!」
その隙を突くように、セナとララさんがアトラスへと躍りかかった。
二人の剣がアトラスの足を斬り裂く。
「オアアアッ!?」
アトラスがガクリと膝を折り、地響きとともに地面に尻餅を突いた。
「っ……私の方が浅いでス」
ララさんが驚く中、セナはアトラスの身体を駆け上がっていた。
アトラスは腕を振って払い落とそうとしたけれど、セナは軽くそれを回避。
「えい!」
アトラスの眼球へ突きを見舞う。
寸前で咄嗟に瞼を閉じるも、強烈な刺突がそれを貫いて眼球に突き刺さった。
「ウアアアアアアアアア~~~~ッ!」
悶え苦しみながらも、がむしゃらにセナを叩き落とそうとするアトラス。
その巨大な手が、不運にもセナに直撃する。
「セナ!?」
「ほい!」
アトラスの指が二本、斬り飛んだ。
そうしてできた隙間を縫って、セナが攻撃を躱していた。
「あの一瞬で指を斬り落とすとハ! それに判断の早さ! 驚きでス!」
ララさんは目を丸くしつつも、アトラスの背中を駆け登り、そのうなじへ斬撃を叩き込んだ。
「~~~~~~~~ッ!?」
アトラスが悲鳴にならない悲鳴を上げ、力尽きたように地面に頭から倒れ込んだ。
「わ! すごい! 一撃で仕留めちゃった!」
「単にここが巨人の急所なのでス。あなたが引きつけてくれていたお陰でス」
「へえー」
「それより、あなた本当にCランクですカ? その実力なら、Bランクどころか、Aランクも余裕でしょウ」
ララさんが手放しでセナを称賛する。
「でも試験が無理!」
「試験?」
「実技はともかく、筆記試験がダメダメなんです、こいつ」
「……なるほど」
今までの言動からセナがアホの子だと理解したのか、僕の言葉に頷くララさん。
「ともかく、君たちのお陰で助かったよ。ロインも助けてもらったし……なんてお礼をしたらいいか」
「気にしないで。困ったときはお互い様だよ」
「いや、さすがにそれではぼくたちの気が済まない。この借りはいずれ必ず返そう」
……律義だなぁ。
それから彼らはロインさんが無くした槍を探しに行くということで、そこで別れた。
ちゃんと見つかればいいんだけど……かなりレアで効果な武器だったみたいで、ロインさん半べそをかいていたし。
「僕たちはどうしますか?」
「地上に戻りたい。ギルドにも報告しないと」
どうやらダンジョン攻略はいったん中断するようだ。
随分と深くまで潜ってきたけれど、さらに深部を目指すのか、それとも依頼をこなすのか、今後の方針についても改めて考えたいという。
「あと、観光も?」
「わーい!」
というわけで、僕たちは地上へ帰還することにした。
アーセルの方ではなく、王都の近くに隠してある菜園へと転移する。
「観光だ観光だーっ!」
……観光しか頭にないセナは、すっかり先日のことを忘れているみたいだった。
うん、思った通りだ。
「……はい? も、もう一度、おっしゃっていただけますか……?」
ギルドの受付嬢が聞き返してくる。
僕が冒険者登録をしたときと同じお姉さんだ。
「ダンジョン『無限階層』の第九階層まで行った」
「い、いやいやいや、あなたたち、BランクとCランクばかりのパーティですよねっ?」
地上へ戻った僕たちは、ギルドに報告に来ていた。
特に依頼を受けていたわけではないけれど、ダンジョンの攻略状況を伝えることで、それが冒険者としての評価に繋がるからだ。
ちなみにセナはいない。
……我慢できなくなって一人で遊びに行ってしまった。
「虚偽の報告は許されませんよ?」
疑いの目を向けてくるお姉さん。
もちろん攻略状況について認めてもらうためには、それを証明できる何かを冒険者側が提示する必要があった。
なので、途中で手に入れた素材を見せることに。
「こ、これは……っ! 第九階層に棲息する巨人、サイクロプスの角っ!? こっちは第七階層のアイアンタラバの鋏……っ!」
第八階層はスキップしちゃったから、生憎と見せられる素材がない。
「っ!? 第六階層のボス、タラスクロードの甲羅の欠片!? まさか、ボスまで倒したのですか!?」
「倒した」
「一体どうやって……タラスクロードはAランク冒険者の攻撃すらほぼ効かず、討伐記録はほとんどないというのに……」
ところでダンジョンで入手した素材は通常、かなり選別して持ち帰らざるを得ない。
なぜなら重い素材を運びながらダンジョンを引き返すのは大変だからだ。
素材回収を専門とした冒険者たちもいるけれど、『無限階層』のような高難度ダンジョンの深層ともなると、なかなか対応してくれないという。
だけど僕たちには家庭菜園があるからね。
素材どころか魔物ごと第二家庭菜園に運んである。
ただあまりに量が多いと怪しまれるので、ギルドに売るのは一部にしておいて、大半はリルカさんにお願いするつもりだ。
「どの素材も間違なく本物との確認が取れました! さ、先ほどは失礼いたしました!」
素材鑑定が終わって、謝ってくる受付のお姉さん。
申し訳なさそうな顔で汗を掻く彼女に、シーファさんが訊いた。
「Aランクの昇格試験……受けれる?」





