Ep. "F-15Jはイーグル・オブ・イーグルの夢を見たか?"
「後に第三次世界大戦と呼ばれることになった、ウクライナと日本国とロシアの大戦に於いて、日本国航空自衛隊は「最も多くのF-15被撃墜機を出した空軍組織」と言うワーストレコードを打ち立てた。
また同時に、日本国航空自衛隊のF-15Jは、「最も多くの敵機を撃墜したF-15」と言われている。
殊に、「シーグルズ・ツー」のコールサインで呼ばれたパイロットが運用したF-15Jは、同大戦の最多撃墜記録を保持している。
公称戦果は、
・戦闘機:三十七機
・爆撃機:十九機
・戦闘車輌:嫌になる程(計上不能)
であり、これはF-15の開発元、アメリカ合衆国空軍でさえ持たない、現代戦史上、空前絶後・前代未聞の戦績である。
ちなみに撃墜数のみに絞って話をすると、この数字はロシア航空宇宙軍の全武装機(約一一〇〇機)の実に五パーセントに達する。
端的に言って異常な戦果であり、この事を以て、「イーグル・オブ・イーグルは日本国航空自衛隊のシーグルズ・ツーが運用したF-15J」と評する人間も少なくない。
では、翻って「シーグルズ・ツー」と言う人物の為人はどうだったのか、と言うと、実は判明している情報は少ない。
・TACネームは「シスター」
・若い女性(当時)
・第三次世界大戦を以て退官
以上三点だけであり、個人の特定に繋がる様な写真の類は一切残されていない。
一説には「写真写りが悪いメスゴリラだったのではないか」と言う悪口も散見されるが、筆者は単に、「トップエースを暗殺によって喪失う恐れから、軍事機密として指定されただけに過ぎない」とする説を推したい……」
「恥ずかしいから、朗読するのやめてくれない?」
「嫌です♡」
「……年甲斐もなくハートマーク飛ばして、恥ずかしくない?」
「……恥ずかしいです」
「やめてくれない?」
「嫌です」
その頑固さは一体誰に似たのやら。と、溜息を吐く。
「折角お姉様の事が本になったんですから、じっくりくっきりはっきりとお姉様を誉め殺……愛でたいのです」
「今、誉め殺したいって言おうとしてなかった?」
「言ってません」
「……それにもう、「お姉様」じゃないでしょ、私は」
「お兄様は亡くなられました。お姉様はお兄様ではない方と御結婚されました。
続柄としては、お姉様はお義姉様になられませんでした。
でも、私にとって「姉」とは、お姉様以外には考えられないのです」
「……そう」
危うく窒息死しかけた際、「もう少しばかり、彼と生きなさい」と言われて現世に送り返されたのを思い出す。
「あの人」が居なくなって欠けた空は、いつの間にか相棒が埋めてくれていた。
今や、相棒が居ない人生など考えられない。
「ところでお姉様」
「はい?」
「お姉様はイーグル・オブ・イーグルの呼び声も名高いF-15Eにも乗った事があるとお聞きしました。
お姉様にとって、イーグル・オブ・イーグルはF-15EとF-15J、どちらだったのですか?」
「そりゃあもちろん――」
「相棒と乗る、「特別な」F-15Jよ」
《「玲和」四年、日本国はウクライナにジョブチェンジしました! 外伝
F-15Jはイーグル・オブ・イーグルの夢を見るか? 完》




