第四十八話 裏路地の光
―――とまぁ僕らはマッチョの悪魔の後も、顔面白塗りの女性ピエロ集団や、いかにもなオタクの格好で話しかけてきた女性中学生ぐらいの集団を搔い潜りつつも、なんとか人込みの少ない裏路地へと入り込んだ。
「いや、まさかこんなにハロウィンが凄まじいとは思わなかったな……大丈夫?」
「え、えぇ……ありがとう……っ、じゃ、じゃなくて感謝するわっ!」
怖さや疲労からなのか、もはやキャラを取り繕うのにも必死な状況の笹草さんを見て、ふと、僕は今まで思っていた疑問を口にした。
「……休憩ついてにそういえばなんだけど……あの、言いたくなかったら言わなくてもいいけど、その、心愛ってお嬢様みたいな口調なのには何か理由があったりするの?」
当然、面と向かって中二病だと言える精神は奇しくも僕は持ち合わせていないのでお嬢様と濁したワケだが、そのせいかしばらく伝わってないような表情を浮かべた笹草さんは、しかしやがて察したかのように口を開いた。
が。
「あっ、え、えっと、変、よね? あ、あの、その、深い理由とかはなくて、その……あの……」
「―――っいやいやいやいや! 全然! そんな気にしてないしむしろ可愛くていいんじゃないって思ってたし! いきなりこんなことごめんね!?」
思ったよりも深刻そうに切り出した笹草さんに僕は思わず急いで取り繕った。
危なかった~~~~!
まさかこんなにダメージが入る言葉だったとは……迂闊だったな……。
でも、そりゃそうか。普通に面と向かっていきなりこう聞かれたら嫌な気になっちゃうよな。
まぁでもちょっとオタク気質な僕からすれば本当に可愛いと思……。
ん? あれ? 待って?
今、僕は可愛いって言ったか?????
―――ふと目の前を見ると、そこには既に大きい目をさらに大きくしている彼女がいる。
綺麗に結われた髪は、裏路地に差し込む僅かなハロウィンの光を反射して煌びやかに輝き、小走りでここに来たからか、少しばかり紅潮した彼女の頬は暗がりでもわかるほどに眩しく。
「うわぁあああっと、あの! えっと、その……あ~~~、そ、それはよくて! あの、心愛はどうして今日ここに来ようと思ったの!?」
っっっぶね~~~~~!!!
このままだと相手が高校生だってことを忘れてしまうよ……!
くっそ~~~~~~!!!! 僕が同級生だったならここで死んでるぞ!?
がんばれ僕の理性!!!!!
「……え? あ、あぁ! そ、そうね……じ、実はその……」




