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第四十七話 ホラーナイト マッチョ




秋の空は暗くなるのが早く、まだ夕方だというのにすでに辺りは暗くなり始め、街灯や街の看板が道を照らしている中で僕は思う、


しっかし、こうして見ると本当に何も変わんないよなぁ……と、笹草さんと連絡を取り合って待ち合わせの目印の場所に走っていると、どうしてもここが異世界であることを忘れてしまいそうになる。


行き交う人々はみんなちゃんと生きてるし、内面を除けば僕のいた世界の人らとなんら変わらない。


何度も何度も卑屈になりながらも、けれど、僕がいた世界は元々こっちで、逆に今までのが夢だったのではないかと思ってしまうことも正直ある。


まっ、考えたところで結論がどっちかなんてわかんないんだけどね。


そうして、小走りで向かうこと数分。

ようやく辿り着いた待ち合わせ場所の有名な猫の像があるナナ公広場には、ハロウィンの代名詞であるカボチャを模した提灯の灯りがいくつも揺れていた。


ハロウィンは元は収穫祭や鎮霊祭とかなんだっけ?

こうして見てみると仮装の文化が強く根付いたのは日本ならではって感じがするよな……。

もともとコスプレもモチーフは西洋だったのに今やロボットやらアニメキャラやら……いやしかし驚いたのはやっぱりあの有名な海賊のキャラクターが、海賊王に私はなるわよ!と言っていたことか……。


……数か月過ごしたけど、どこまで逆転した世界なのか未だに掴めないんだよね……。

一応僕がいた世界基準のものは残ってるらしいんだけど、どうも入れ替わってないものもあるらしいんだけど、そこはやはり貞操観念というのに繋がってくるんだろうな……。

海賊をやるのは女性だぞ!みたいな認識だろうか―――などとまぁどうでもいいこことを考えていた時、人混みの喧騒から聞きなじみのある声が聞こえてきた。


「……っ、陽太! よかった、無事で……」


焦った様子ながらも可愛い声を掛けてきた笹草さんは、少しだけ息を切らしながら僕の手を握――うわ柔らかっ! なにこれ、すごい!


「あ~、なんとかね……まさかあんなことに巻き込まれるなんてびっくりしたよ……待たせてごめんね?」

「いっ、いえっ、私は全然……それに、盟友だというのに咄嗟に守ることが出来なかったから……私のほうこそ謝罪をするわね」


そう言って笹草さんは深く頭を下げる。

……まぁあんまり謝罪の理由はよくわかんないけど、ともかくこれで一件落着!

せっかくの美少女とハロウィンパーティ! 楽しまないと損だよな!!


―――ところで。


「ねぇ笹草さん、ハロウィンパーティーって、何するの……?」







オレンジと紫の光が踊る街並は、夏祭りと同等の盛り上がりを見せ、同じように浮き立つ賑わいに包まれていた。


大人だけでなく、子どもも思い思いの仮装を楽しんでいるその空間で、僕もまた笹草さんに引っ張られるようにして、気づけば彼女とペアのマントを身につけていた。

曰くこれは―――。


「ふふ、この宵闇の外套があれば私たちの行動は闇の者に悟られることはないわ!」


とまぁ、街の様相も相まってまるで夏祭りの再来かのような空気感に僕は少し口角が上がってしまう。

口調は相変わらず中二病めいているのに、その笑顔はただ純粋に嬉しそうで、最初は少し恥ずかしかったことも、まぁこのハロウィンという名のイベントはそれを寛大に受け入れてくれるから。

だから―――。


「時に、天使グラス……かつての闇の饗宴では、そなたは児戯だと言ったのを覚えているか?」

(訳:そういえば、笹草さんって文化祭の時、お化け屋敷のこと馬鹿にしてたの覚えてる?)


いつもよりもエンジン全開で放つ、僕らの言葉に笹草さんは目を輝かせながら答えた。


「えぇ! 当然よ! 私の記憶の書庫からはどんな情報も消えることはないのだから!」

「ふふ、そうかそうか。それならば―――ほら、あそこに見える、亡者の楽園に向かい、闇の者の痕跡がないかを確認しにいかないか?」

(訳:よかった! それなら、あそこにあるお化け屋敷にちょっと行ってみない?)


「……っ、えぇ! いいわよ! 当然! もちろん!」









―――え~、まず結論から言おう。




「ガチで……っ、死ぬかと思った……っ!!!」

「はぁはぁ、えぇ……ま、まさかあんなところから……わっ!? あ、なんだ虫か……もうっ、あんなに怖いの作るなんてどうかしてるわ絶対!!!!」


あの笹草さんが中二病を捨て去るほどの言葉遣いをしているけれど、もはやそれを突っ込む気力も僕にはなかった……。


……何が怖かったって?

そりゃあ当然―――呪われた井戸から低い姿勢で高速で襲い掛かってくるムキムキの男に決まってんだろ…っ!!!!

なんだあれ!? 貞子ならぬ貞夫か!? 別の意味で襲われるかと思ったわ!!!!


まさかこんなところにまで逆転世界の弊害があったとはッ!!!!!


確かにこの世界基準で考えれば、虐げられるのは男性のほうが多かったという過去になるから男性の幽霊が多いのはわかるんだけど、ムキムキにまでする必要あったかなぁ!?

あっちの世界では髪の長い女性が怖いっていう認識と同義なのかなぁ????絶対違うよね????


「はぁ……やっぱりホラーといえばマッチョだものね……トラウマになりそうだわ?」


ホラーといえばマッチョなのっていうのも絶対おかしいけど、トラウマになるのは同意するねほんと……この世界怖すぎるぜ……。


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― 新着の感想 ―
この世界は、クイーンエメラルダスがメインで、ハーロックはスピンオフなんだな、きっと。 這い寄る混沌ならぬ、這い寄るマッチョ。 まあ確かに夢に出てきそうですね。
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