6 悪役令嬢に転生した干物女は転生者にプロポーズされる。 ☆挿絵あり
前回までのあらすじ。
おにぎりは日本の心だと思い出したよ。
私とクロムはミーティア家の酒宴に呼ばれていた。
ミラが是非にと言ったというのもあるけれど、ロブソン男爵との婚約が解消になったから、新しい嫁ぎ先を探しなさい。という母上のお達しがあった。
貴族の娘は有益な家に嫁いで繋がりを作るのが役目……戦国時代の日本みたいだ。
メイドに案内されて会場に入る。
絵本シンデレラの挿絵みたいなドレスの令嬢が何人もいる。
その中に異物娘混入。
令嬢たちの視線が一斉にこちらに向く。
「クリティア様、そのお召し物はなんですの?」
「開発したジャージです」
ドヤァ!
宣伝のためにこういう場で着ておかねばという使命感で、私はジャージ姿だ。
試作を重ねた第三弾。初代よりしなやかさがアップしている。
クロムはジャージを嫌がってタキシード姿。
「あ、姉上、やはりドレスで来たほうがよかったのでは」
「いいえ、これまで試す人がいなかっただけ。ジャージの時代はすぐそこよ」
私は坂本龍馬の気分だ。これは時代の先駆け。あと二年もすればパーティー会場はジャージを着た人で溢れるはず。
「お言葉ですが姉上…………世のブームが何周してもジャージの出番はないと思うんです」
弟の言葉は聞こえなかったことにする。
ミラが小柄な少年を連れて声をかけてくれる。
「お姉様、クロム様。ようこそ。来ていただけて嬉しいですわ」
「こちらこそ、お招きありがとう」
「この子は弟のミゲルです。ミゲル、お姉様に挨拶を」
ミラの隣にいるのが弟くんか。
金髪碧眼の少年。あと5年もしたら女の子たちがコロっと落とされそうな美貌だ。
「はじめまして、クリティア様、クロム様。ミゲル・ミーティアと申します」
まだ12歳なのにしっかり挨拶できて偉いわ。
ミゲルは一礼したあと、私を見上げて小さく手招きする。
「クリティア様。二人だけでお話したいことがあるのですがよろしいでしょうか」
「何かしら?」
よくわからないけれど、言われるまま広間の隅っこについていく。
あたりに人がいないのを確認してミゲルは言った。
「単刀直入に聞くけど、あんた日本人だよね。それも成人済の。串かつだの焼き鳥だの、いかにも日本の飲み屋で出てくるメニューばかりだし」
わー、ミゲルも転生者か。しかも口のきき方がなってない。転生者に出会えた感動もへったくれもない。
嘘をついてもしかたないから素直に答える。
「そうよ。あなたも日本人?」
「まあね。あっちにいたときは三池天哉って名前だった。今カノの家で飯食ってたらさー、元カノが乱入してきて刺されて、気づいたらこの姿」
自業自得では、と言いかけて飲み込んだ。
元カノに刺されて転生て。
「天哉の中で“元カノ”なだけで、その子はまだ付き合っているつもりだったんじゃないかしら……」
「養ってくれるから一緒に暮らしてただけでさ。結婚したいって婚姻届渡されて重いから別れよって言ってサヨナラしたんだ」
次期伯爵の中身がヒモ男。
駄目だこのヒモ早くなんとかしないと……伯爵家の未来が暗いよ。
「転生者なのはわかったけど、なんでそれを私に暴露したの」
「和食が恋しかったからだよ。おれ、転生したのに気づいたのは1年前なんだけど、元カノが作るようなオーガニックサラダだかなんだかな料理苦手でさ。おれは牛丼とかトンカツとか食いたいわけよ。お行儀よくナイフとフォークで食べるのも疲れるしさ」
「つまり?」
あんまり考えたくないけれど、先を促してみる。
「おれと婚約しようよ、クリティア! 君なら働いておれを養ってくれそうだし、和食を作ってくれるし、転生者同士なら気兼ねせず楽に生きられるし。いいことずくめじゃん!」
「やだよ」
こんなに心惹かれないプロポーズが他にあるだろうか。
私にぶら下がる気満々のヒモなんか養いたくないわ!!!!





