後日談5 余った卵黄でカラメルプリンをつくる
その夜。チョコザイナー家の別邸に泊めてもらうことになった。
ちなみに泊まり組は私とヨイ。ミゲルはミラに怪しまれると悪いから、いったん領地に帰っていった。
「おれの赤飯ーーーっ」と情けない声をあげていたので、かわいそうだから次来たときに作ってやろう。
私は夕飯時を過ぎた頃に再び厨房に立つ。
使用人の皆様は私が料理する人と知っているから、すぐに場所を貸してくれた。
コリンがひょっこり顔を覗かせる。
「あれ、どうしたのクリティア。なんか作るの?」
「ええ。ほら、塩釜焼きを作るときに卵白だけ使って、卵黄が余っているでしょう? プリンを作ろうと思って。今作って冷やしておけば、お風呂のあと食べられるでしょ」
「プリン!? やったぁーーー! あたしも手伝う!」
小さい子みたいにぴょこぴょこ跳ねる。出会ったときに甘いの大好きだって言ってたもんね。
「ありがとう。じゃあカップの内側に油を引いておいてもらえる?」
「はーい!」
元気よく言って、コリンは食器棚からココットカップを出してきた。
コリンが準備している間に、私もプリン液を作る。ボウルに砂糖と卵黄を入れて泡立て器でよく混ぜる。
滑らかになってきたら牛乳を注ぐ。
チョコザイナー領の農民たちが育てている牛は、地球で言えばジャージー種に近いらしく、日本のスーパーに多く流通しているホルスタイン牛乳よりも濃厚、まろやか。
香りつけにバニラに近い香りがする香草をほんのり散らす。
「この時点でもう飲めそう! 飲んじゃだめ?」
「やめときなさい。プリン食べるんでしょ?」
「はぁい」
プリン液を作ったらカラメルの用意をする。
水と砂糖を同量で混ぜたら、フライパンでごく弱火にして、砂糖水を温める。色が変わった瞬間に火からおろして、ヘラで混ぜながらカップに均等に注ぐ。
カラメルの上に卵液をゆっくりと注ぐ。
「わあ! カラメルも乗ってるやつにするの? 素敵素敵!」
「シュークリームのときも思ったけど、あなたは卵を使った料理全般好きねぇ」
「うん。マヨネーズたっぷりのたまごサンドも大好きよ!」
コリンは無邪気に笑う。
中身は日本人の庶民だから、公爵家のご令嬢なのにプリン一つでスキップしている。
使用人の皆さんもコリンの嬉しそうな姿を見て微笑んでいる。
「お嬢様はクリティア様がいらっしゃるようになってから笑顔が増えました。喜ばしいことです。我々も大変嬉しく思っております」
「私もコリンと話すのは楽しいから、お互い様よ」
聞けば、前世の記憶を取り戻す前のコリン・チョコザイナー……ゲーム準拠のコリンはとてもわがままで、令嬢としての教育を受けるのを嫌がり、親にも使用人にも反抗してばかりだったらしい。
コリンの性格が大きく変わったのは、私と会って以降。
【クリティア・フローレンスが年上の令嬢として、コリンに令嬢としての何たるかを説いたから】と思われているらしい。
私は関係ないし、単に日本人の天真爛漫な女の子が転生したからなのだが、まあこの世界の人に異世界転生云々がわかるはずもない。
とりあえず、コリンが使用人のみんなから愛されているのなら問題なし。
深めのフライパンにプリンカップの半分くらいの高さまでのお湯を沸かして、そこにカップを並べる。
《《す》》が入らないように、ごく弱火で蒸らしていく。甘い香りが厨房に漂う。
「うふふふ、いい香りいい香りー! 夕飯のあとなのにデザートを用意するなんて、なんだか悪いことしてる気分」
「一食くらいならそう太らないわよ、コリン」
「それもそうね! 気にせず食べちゃう!」
表面が固まってきたら串をさして仲間に火が通っているか確認。
「よし。あとは粗熱が取れたら冷蔵庫よ」
「はーい!」
冷蔵庫に並べたら、それぞれお風呂タイム突入だ。
お風呂あがりは三人でコリンの部屋に集まって、程よく冷えたプリンをいただく。
パジャマパーティーなんて、なんだかユージーン家の屋敷でやった夏合宿を思い出すね。
「まぁまぁ。プディングなんてひさしぶりです。上に甘くて茶色いものが乗っている……このスタイルは初めて見ました」
「上に乗っているのはカラメルです。水と砂糖を煮詰めればできますよ」
オーキナ国はシンプルな料理が多くて、プリン……プディングもカラメルを乗せないタイプだ。
ヨイはそっとスプーンをさして一口。
「甘くてほろ苦くて、美味しいです……!」
「あたしも、いただきまーーす! ひゃー、プルプルー! これあたしの店でも出したーい! 毎日食べたい!」
「流石に毎日は飽きるんじゃない?」
「そんなことないわ!」
プリンに舌鼓を打ってワイワイガヤガヤ。
空いた皿はメイドたちが下げてくれる。
「このカラメルプディングも、お祝いパーティーに出しませんか? ミラ様は甘いものがお好きですし、デザートも喜んでくださると思います」
「いいわねーヨイ様。ごちそうはいくらあっても困らないもの」
「いいねいいね! 明日は赤飯も作るし、あと野菜でサラダも作れば完璧ね! あたし、マヨネーズ作るからサラダにかけるの!」
着々と結婚お祝いのメニューが決まっていく。
会場のセッティングなんかもアイデアを出し、話し合いは夜遅くまで続いた。





