後日談2 結婚祝賀会の下準備!
「それにしてもヨイはよく来れたわねー。海軍に入ったんでしょ」
貸し切りになっているカフェの中で、コリンがお茶を飲みながらヨイに聞く。
コリンはここ一年で背が伸びて、幼さが抜けてきた。十三才なので日本にいたら中学生ってところね。
向かい合うヨイはジャージを着ていてもわかるくらい筋肉モリモリだ。
ワタシもタコを狩れるようになります! と一念発起して以来、ヨイはひたすら鍛錬に励み、現在オーキナ国海軍所属だ。
出会ったばかりの頃は儚げで深窓の令嬢だったヨイが、剣を振るマッスル軍人になるなんて私は予想していなかったよ。
「最近仕事のし過ぎで、上官殿から少しは休暇を使えと言われていたところだったのです」
「国防のために鍛錬に励むのは立派だけど、働き過ぎはよろしくないわよ」
「そうですね。気をつけます。でも、ためておいた休暇を大切な友人の結婚祝いで使えるなら良かったです。ミラ様の好みを考えると、やはりお祝いは料理でしょうか」
ヨイの出した案にミゲルが食いついた。手を上げて跳ねる。
ガワが美青年で縁談が山ほど来ているらしいが、中の人は残念なヒモだから、なかなか縁談がまとまらない。前世が「養ってくれる人なら誰でもいい」と二股してたやつだしさもありなん。
「はい! はいはーい! おれ、いい案がある! 赤飯はどう? お祝いと言ったら赤飯だよ!」
「ミゲル。赤飯は一部の人間にしか伝わらないわよ。それに材料、ないんじゃない?」
「えーー」
元日本人の私とコリンは赤飯が何なのかわかったけれど、ヨイは首を傾げるばかりだ。
お茶を運んできてくれたメイドも、頭に?を浮かべている。
「赤飯、とはなんです? クリティア様はご存知ですか?」
「あー、コホン。えー、と、そうね。以前ミゲルには赤飯について話したことがあったわね。女神様からの天啓で聞いたお祝いの文化です。粘り気のある米を豆と一緒に炊いたものです」
ああ、日本の料理を女神様の天啓だと言ってしまったウン年前の私を叩きたい。
日本の料理を持ち込むために、毎回存在しない女神の天啓を受けたことにしないといけないんだもの。
ミゲルが声を出さずにゴメーンとジェスチャーしている。あとで殴るぞミゲル。
「この世界にある豆で赤飯を再現できるかはわからないですが、やってみる価値はありますね。あとは、塩釜焼きもできたら良いかもしれないわ」
私の中でお祝い料理と言うと、赤飯と並んで塩釜焼きがある。
「塩釜焼き?」
「ええ。塩と卵白を練り合わせて作った生地で、魚を包んで、オーブンで焼き上げるのです。塩に包んで蒸し上げられた魚はふっくら柔らかく仕上がるんです」
「まあまあ! そんな調理法があるのですね! 一度試しに作ってみてもよろしいでしょうか。いきなり本番で提供だと失敗する可能性もありますし、難しくないようなら海での軍事訓練時に役立ちそうです!」
ああ、休暇なのに訓練で役立つなーと思っちゃってるあたり、ヨイはかなりのワーカーホリック。いや、楽しんでいるのよね、軍属。
「ヨイがそう言うなら、あたしもチャレンジしてみたいわ。あとは市場で使えそうな豆を探しましょう」
「おれもおれも! 塩釜焼き好き! 分け前ちょーだい!」
そんなわけで、私たちジャージ隊は異世界で日本伝統のお祝い料理……赤飯と塩釜焼きを再現してみることになった。





