35 悪役令嬢に転生した干物女は豚汁を食べたい。
前回までのあらすじ。
ジャージ舞踏会が開催されたよ!(語弊)
さて、本日は良き日だ。
じつはこっそり用意していた、和食で外せない調味料、アレがついに完成したのだ。
茹でたデカ豆をペースト状になるまですりつぶし、麹と塩を入れて壺に保管してはやひと月。
自家製味噌である。
このしょっぱい匂い、ほんと美味しい匂い。匂いだけで白米二杯いける。
もっともっと半年くらい熟成させれば旨味は増すけど、いったん味見をしたい。
転生組を呼び寄せて振る舞うっきゃないでしょ!
近々キッチンカーで新作を出そうと思っていたから、二人を呼んで味見を頼んだ。
「ミゲル、コリン。今日は味噌ができたから味噌汁を作るわ!」
「ほんと!? 味噌ができたのね!! あたし豚汁がいい! 大根多めでね!」
「あ、ずるい。おれも! 野菜切るの手伝うからたくさん食べたい!」
「それじゃご飯も炊いておきましょうね」
やはり前世日本人。二人とも浮足立っている。
私も今ウッキウキだ。だって味噌汁よ! 味噌汁! 一年以上ぶり!
「じゃあミゲルには野菜を洗うのを任せるわ。コリンはその野菜を切って。イチョウ切りわかる?」
「はーい。お母さんのお手伝いをしていたからわかるわ! ちょっとミゲル。洗い方が雑過ぎ! 芋に泥が残ってる!」
「ごめんてー」
元気のいい返事をするコリンとミゲル。
仲がいいんだか悪いんだか。
二人が準備してくれている間に、米をといで吸水させておく。
鍋で油を熱し、刻んだにんにくを入れて香り付けする。
肉の旨味を増すためだし、にんにく多めに入れてもいいよねー!
豚のコマ肉を炒める。もうこの時点で美味しそう。
肉に火が通ったら野菜の出番だ。
「クリティアー! にんじんとじゃがいもと大根切れたよー」
「ありがとうコリン。ここに入れてー」
炒めて油が馴染んだら、出汁を入れて煮込むべし煮込むべし。
「くー! いいにおいね! あたし、お腹空いてきた」
「ご飯の鍋もそろそろ火にかけるわよ」
「いえーい! 白米と豚汁ー!」
野菜に火が通ったら火を止めて味噌を溶かしこみ、刻んだネギをちらして完成!
ご飯もいい感じに炊けた。
ちゃぶ台に豚汁とご飯を並べて、ついでに白菜の浅漬けも添える。完璧に日本のご飯だわ!
みんな揃って手を合わせる。
「いただきまーす!!」
あー、久しぶりのお味噌汁。うますぎて泣ける。
肉と大根に、にんじんとじゃがいもに、味噌の味がしみていてうま! にんにくもきいてる! 明日は臭くて人に会えなそうだ。ははは。
一味唐辛子があったら更に美味いんだけどな。
「あー、白米と味噌汁うまー。おかわりおかわり! 味噌汁の匂いで食欲わくの日本人だからかな。豚汁ってこの肉の感じがいいんだよね。うすぎりでさー、たまにでかい塊あると嬉しい。そんで唐辛子振りたいよな。おれ今度市場に行ったら探してみようかな」
「あたしは大根多めのが好きー。大根うま!」
ミゲルは口のまわりにごはん粒をたくさんつけてモリモリ食べる。食べ盛りであることに加えて久しぶりの味噌汁でテンション高めだ。
「コリンの家って外国との取引が多いでしょう。交易している国でスパイスを育てているところはないの?」
「そうね、お父様に聞いてみるわ。あったら料理の幅が増えるもの」
夢は広がるばかりだね。
「寒い日が増えてきたから、次のキッチンカーは豚汁を出そうと思うの。どうかしら」
「いいねぇ! 早くあと7年経たないかなー。子どもに転生しちゃったせいで酒飲めないのつらーい。焼き鳥串カツときたらビールほしいよ」
「今はジュースで我慢よミゲル。あたしだってワイン飲みたいもん! クリティア。あたしが大人になったときはお酒に合うものたくさん作ってよね」
「もちろんよ。そのときには銀座のカフェに出てくるようなパフェも作れるようにがんばるわ」
「ほんと!? 約束よ!」
コリンは一番年若いから、成人まで10年は先になる。
その時は、日本で食べていた懐かしの味をたくさん用意してあげましょう。
10年後の私達はなにをしているかしらね、なんて話して笑って、懐かしの味を楽しんだ。
好きな味噌汁はなんですか。
私はさつまいもの味噌汁が好きです。





