34 悪役令嬢に転生した干物女はジャージブームに歓喜する。
前回までのあらすじ。
ハンテンを着て食べるおでんは最高ですわ!
昨年、異世界にジャージブームを起こすと言ったのを覚えているだろうか。
私はクロムに「ブームが何周してもジャージの出番はないです」とツッコミを受けたことも含めて覚えている。
本日は王宮で舞踏会が開かれている。
私がロブソンに婚約破棄(?)されたあの舞踏会。
今年もカインの嫁探しを兼ねているから、未婚の妙齢女性は全員招待されている。
私は今回もジャージ(ドレスの素材だから実質ドレス)で参加した。
クロムはやはり見た目の問題でタキシードの方がいいと言い張ってタキシードを着ている。
ここで会場入りして、昨年との大きな違いがひとつ。
昨年のパーティーでトレビアンなドレスだったカインにフォーリンラブな令嬢たちが、ジャージ姿だった。
ただ、着ているものはジャージなのに、首元にはネックレス、耳にイヤリング、足元はハイヒールというアンバランス。
コメディ映画かな。
「カイン様がおめしのものと同じ色のジャージを、うちのお針子に作らせましたわ! はぁ。カイン様とお揃い、カイン様とお揃い」
「わたくしの家の仕立て屋ほうがよく作れてますわよ! この袖周りはカイン様のジャージと同じデザインになるよう依頼しましたの」
「いいえ、ワタクシのジャージのほうがより王子のものに似ています」
令嬢の皆さまが、アイドルのコンサートで推しとオソロの服を着るファンみたいなことになっている。
カイン王子効果半端ねぇ。
そのカインは去年と同じく、令嬢に取り囲まれて動けなくなっている。
あそこにいる全員と一回ずつ踊ったら日付が変わるんじゃないかな。
男性陣の中にもチラホラとジャージの人がいる。うち一人はいわずもがな、ミゲル。普段着にしてるってさ。
タピオカドリンクブームが起きると便乗してそこかしこにタピオカドリンク店が出店する現象が起きている。
他の仕立て屋も、ジャージは売れると判断して作るようになったんだな。
ついに、ついにこの日が来たわ! ジャージブーム!!
ちなみにタピオカタピオカいうけど、私はタピオカドリンクを飲んだことがない。
一杯700円てさ、駅ナカの立ち食いそば屋だと、うどんに天ぷらトッピングしてもおつりがくるじゃん。
隣の席の若い子に言ったら「栗田さん、タピオカと立ち食いそばを比較しちゃだめですよー」と笑われたもんだ。
「くふふふふ。クロム。見なさい。ジャージの時代が来たわ!」
「……気味の悪い笑い方をしないでください姉上。まさかここまでジャージが増えるとは。俺は悪夢を見ているんじゃないですよね」
「ジャージをGみたいに言わないでよ」
ここにいる四割がジャージだから私がジャージでも目立たない。むしろ溶け込んでいるわ。
やはり貴族にも動きやすい服装は受けるんだ。
テラス側にいたミラとミゲルが私達に手を振る。
「クリティアお姉様、クロム様、ごきげんよう。お姉様は今日のジャージもよくお似合いですわ! 教会にある聖女様像の姿そのものです!」
「あ、はは……。ありがとう? ミラもすごく似合っているわ。天使みたい」
「お姉様にそう言ってもらえるなんて、嬉しいです」
ミラの中のクリティアが神格化されすぎて、もはや誰の話なのかわからない。
私は聖女じゃなくてただの酒好き干物よ。
美少女ミラはドレスジャージも華麗に着こなす。ミラが来た途端まわりの男性陣がそわそわしだす。
ダンスに誘いたい、可愛いと呟いているのが聞こえてくる。
さすが乙女ゲームの主人公。いろんな男がミラの虜。
ミゲルはさっきからずっと笑っている。
「クリティアー。キラッキラの舞踏会でジャージがひしめく光景、意味わかんなくてずっと腹筋が痛いんだけど。なにここ修学旅行の旅館?」
「何かに似ていると思ったらそれだ」
旅館でお風呂後はみんな体操着に着替えている。あの感じだ。
「クリティアー、ってミゲルもいたのね」
コリンが駆け寄ってきた。
あずき色のジャージがよく似合っている。
「あっちでヨイを見かけたわよ。腕試しって言って騎士に腕相撲挑んでる」
「舞踏会にきて腕相撲してるの?」
「そうなの! ちなみにヨイの勝利。思わず拍手しちゃった」
「おれは騎士に勝てる自信ないやー。ヨイすごいね」
「楽しそうだわ。見に行ってみましょう」
ひたすら鍛えて強くなり、ヨイはどこを目指しているんだろう。
女騎士? 武闘家?
武闘家としてのし上がる令嬢。それはそれで見てみたい気もする。
「クリティア様! クリティア様も参加しませんか、腕相撲!」
「そうねー、挑戦しようかしら」
「なら、おれと対戦しようよクリティア。さすがに13歳でも男だし、クリティアよりは強いと思うんだよね」
ケンカを売る相手を間違えたなミゲル。
「ヨイ様ー、ミゲルがヨイ様に勝てるって豪語してるわー!」
「まあまあ! ではミゲル様、お手合わせ願いますわ!」
「おれそんなこと言ってな、ぎゃーーーー!!」
舞踏会の一角で盛り上がる腕相撲大会。
舞踏会に何しに来たんだ私たち。





